‘新しい風’― 移民制度の硬直化と移民法の改正案

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新しい名前、新しい自分

私が20歳の頃、オークランド中心部のレストランで働いていました。当時は オークランド大学で英語教師として非常勤で働くかたわら、生活費をまかなうために副業としてその仕事をしていたのです。とても良い経験で、今でも各シフトの終わりに出るまかないがいい思い出となっています。

ある晩、私はニュージーランドに3回目の滞在をしているという人と話をしました。彼は最初、ワーキングホリデービザで入国し、その後ワークビザに切り替えましたが、その後、飲酒運転で摘発されたそうです。どうやら、その裁判が開かれる前に出国してしまったようでした。

1年後、彼は再び戻ってきました。釣りとゴルフが好きで、ニュージーランドが気に入っているのだと言っていました。しばらく働いた後、友人たちから居住権(Residence Visa)を申請できると聞かされ、実際に申請してみたそうです。当時は費用もそれほど高くなく、要件を満たすのも比較的容易だったようです。彼の申請は認められ、以後はニュージーランドに腰を据えることを決めました。

しかし、その後まもなく、彼は再び飲酒運転で摘発され、ニュージーランドを離れなければならなくなりました。

彼が私に話してくれたところでは、彼はその後、別人として再び戻ってきたとのことでした。方法は、日本のパスポートに記載された氏名の英語表記を変えただけ、というものでした。日本人名のローマ字表記にはヘボン式と 訓令式があり、その違いによって、同じ名前でもパスポート上の英語表記が異なることがあります。

その後、私は彼と連絡を取らなくなりましたが、3度目には今回の件を教訓として、問題を起こさずに過ごしていてくれればと思っています。

時代は変わり、現在の移民制度では、彼が行ったような形での再入国はもはや認められません。単純な氏名変更だけでは通用しなくなっています。移民管理は厳格化されており、ニュージーランドの税関・国境管理当局においては、AIを用いた顔認証ソフトウェア、生体認証(顔認証)、および指紋照合システムが導入され、個人データの照合が厳密に行われています。名前だけを変えて「新しい身元」でニュージーランドに再入国しようとしても、まず出来ないことでしょう。

有罪判決を伴わない免責(Discharge without conviction)

司法の分野でも、近年は制度運用が全体として厳しくなってきています。たとえ初めての違反であっても、飲酒運転により有罪と認定された場合には、最長で三か月の禁錮刑が科される可能性があります。そして、その有罪判決がニュージーランドでの居住権付与から最初の二年以内に下されたものであれば、移民法(Immigration Act)第161条の規定により、レジデントビザ保有者は退去強制対象責任(deportation liability)を自動的に負うことになります。

これまでの制度では、有罪と認定された場合であっても、裁判における量刑判断の段階で、量刑法(Sentencing Act)第106条に基づき、有罪判決を伴わない免責(discharge without conviction)を求める余地がありました。この免責が認められた場合には、有罪判決が正式には成立しないため、移民法第161条は適用されず、結果として退去強制対象責任を回避することが可能でした。

量刑法第106条が適用されるかどうかを判断する際の基準は、有罪判決によって生じる不利益が、その犯罪行為の性質や重大性と比べて、著しく釣り合いを欠くかどうかという点にありました。退去強制は、比較的軽微な犯罪行為であっても生じ得る、非常に重い法的結果です。そのため、これを理由に免責が認められる例も、過去には一定数存在してきました。

もっとも、警察当局は一貫して公共の安全の観点から、こうした申立てに慎重な姿勢を示しており、近年では、移民上の不利益を主な理由とする案件について、第106条に基づく免責が認められる件数は減ってきています。さらに現在では、この分野に関する法律そのものも改正されました。

2026年5月27日以降は、有罪判決を伴わない免責が与えられた場合であっても、退去強制対象責任を免れることはできなくなります。たとえば、法定の許容範囲を超える飲酒をした状態で運転した場合など、一定の要件を満たす対象犯罪(qualifying offence)について有罪が認定されると、改正後の移民法第161条の下では、その有罪が免責されたとしても、退去強制の対象となり得ます。

もっとも、退去強制対象責任が生じたからといって、直ちに退去が命じられるわけではありません。移民局(Immigration New Zealand)には、退去強制対象責任の発生から二年間、その効力を停止し、その期間中に新たな犯罪行為がなければ、期間満了時にその責任を取り消すことができる裁量が与えられています。比較的軽微な犯罪行為については、これまで、この退去強制対象責任の停止が実務上行われてきました。ただし、その判断は移民大臣または権限を委任された意思決定者に委ねられており、最終的には事案ごとの判断、いわゆるケース・バイ・ケースとなります。

厳格化する意思決定

以前は、退去強制対象責任が停止される可能性は、必ずしも決して低いものではありませんでした。申請者本人が深く反省していることを示し、当該犯罪行為が「その人らしくない一時的なものであった」ことを裏付ける説得力のある支援書簡を提出し、なぜそのような行為に至ったのか当時の事情を丁寧に説明したうえで、再犯のおそれが低いことを立証することが求められていました。

しかし近年では、退去強制対象責任の停止を求めるこうした申請について、移民大臣(Minister of Immigration)およびその権限を委任された意思決定者(delegated decision-makers)の判断は、全体として厳しくなっているように見受けられます。移民大臣およびその代理者が、いわゆる「セカンドチャンス」を認めることに、以前ほど積極的ではなくなっていることを示す兆候もあります。

さらに、現在の制度では対面での交付が必要とされている退去強制対象責任通知(deportation liability notice)について、将来的な法改正により、本人への直接交付に代えて、電子メールによる送達でも足りるとする案が検討されています。これは、仮に本人がそのメールに気付かなかった場合、上訴権(appeal rights)を行使できる非常に短い期間、通常は28日から42日程度を逃してしまうおそれがあることを意味します。長年ニュージーランドで生活し、ニュージーランド生まれの子どもがいて、これまで犯罪歴のなかった人にとって、単発の出来事によって上訴の機会そのものを失うことは、極めて厳しい結果となり得ます。この追加的な法改正は現在も議論の途上にありますが、要点は明確です。ビザを保持する人は、たとえ居住権が認められた後であっても、法令を遵守することが、これまで以上に重要になっているということです。

不申告 ― 虚偽情報および誤解を招く情報

移民局もまた、改正後の移民法2009年(Immigration Act 2009)第58条第6項を、ビザ申請に対してより積極的に適用する傾向を強めています。同法第58条の下では、申請における虚偽の申告や重要情報の不開示は、その申請者が身元要件(good character)を満たさないと判断される根拠となり得ます。そしてその結果は、単なるビザ却下にとどまらず、不法滞在を理由とする退去強制に発展する可能性もあります。現在の第58条の評価においては、申請者に欺罔や誤導の意図(mens rea)があったかどうかは、もはや考慮されません。

つまり、申請者本人がビザ申請においてうっかり誤った記載をしてしまった場合や、本人の知らないところで移民アドバイザーや弁護士が誤った情報を提出した場合であっても、それが虚偽又は誤解を招く情報、あるいは重要情報の不開示と評価されれば、身元要件を満たしていないとしてビザが却下される可能性があります。場合によっては、すでに付与されたレジデントビザが取消し又は撤回される事態に至ることもあります。

このような状況から、申請内容が正確であり、すべての申告が完全かつ誠実で、事実に即した内容であることを確認する重要性は、これまでになく高まっています。移民アドバイザーや弁護士のサポートを受ける場合であっても、申請者自身が提出前に申請書を読み、内容の正確性を確認することが不可欠です。留学エージェントのサポートを受ける場合であっても同様です。

制度運用が一層厳格化する中で、問題が生じた場合には、早い段階で専門家の助言を求めることが必要となる場面も増えていくでしょう。

変化の風

総じて見れば、これらの一連の変更は、慎重に受け止めるべき重要な動きと言えます。犯罪行為が誤りであることは言うまでもありませんが、なお成長の過程にある若い人々に対して、やり直しの機会、いわゆるセカンドチャンスを与えることも、社会にとって重要なことです。制度が過度に厳格化することで、個々の事情や背景が十分に考慮されなくなることについては、注意深い議論が求められます。

こうした変化の背景には、世界各地で移民に対する逆風が強まっている現状が反映されているとも考えられます。米国における強硬な移民政策、日本や英国、さらにはカナダにおける近年の動きに見られるような移民への反発は、必ずしもニュージーランドにとって有益とは言えません。人の移動に否定的な世論が高まる中にあっても、ニュージーランドは、より理性的、かつ、オープンアプローチを取ることで、多くの利益を得ることができるはずです。

ニュージーランドは歴史的に見ても、高い水準の移民を比較的寛容に受け入れてきました。現在においても、新たに訪れる人々を概して温かく迎え入れる社会であると言えるでしょう。訪問者を迎えるマオリ文化における「whanaungatangaファナウンガタンガ(つながり)」や「manaakitanga マナアキタンガ(おもてなし)」価値観、そして「新しい社会」としての成り立ちが、多様性を受け入れる姿勢を支えてきました。ニュージーランド社会は非常に多文化的であり、さまざまな背景を持つ人々が共に暮らしています。各種調査においても、多くのニュージーランド人が移民や移民政策を概ね肯定的に捉え、移民はこの国にとってプラスであると考えていることが示されています。

今年は選挙の年であり、移民政策が主要な争点の一つとなる可能性もあります。景気が後退局面にある時期には、こうした傾向は珍しくありません。自分たちよりも「他の人たち」がうまくいっているように感じたり、自分は仕事に就けていないのに移民は働いていると感じたりすることから、不満が高まることがあるためです。選挙に向けて政治家からさまざまな発言が聞かれるでしょうが、選挙後に本質的な変化が大きく生じるとは限りません。なぜなら、多くのニュージーランド人は、移民が社会と経済の将来にとって不可欠であることを理解しているからです。ただし、ルールを守らない人がこの国に留まり続けられるかどうかについては、今後さらに厳格な対応が進む可能性があります。

UVISA
ニュージーランドを拠点とする複数名のニュージーランド政府公認移民アドバイザーから成る会社です。
最初の相談からビザの最終結果が出るまで一貫して国家資格保有者であるアドバイザーが担当します。永住権に繋がる学校選びから、卒業後の就職、起業、投資、移住まで、お客様のニーズに合わせた様々なビザカテゴリーに精通しています。

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Tobias Tohill
Director and Licensed Immigration Adviser #201601002

大島芽生
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