“故人の人生を祝う”という意味合いが強いニュージーランドの葬儀。
法律で定められている手続きさえ行えば、葬儀のスタイル・場所・タイミングまで、家族が自由に決められることが特徴だ。
近しい人が亡くなったらすべきこと
病院などで人が亡くなり、それが自然死だった場合、医師が死亡診断書(Medical Certificate of Cause of Death)を作成する。死亡診断書は葬儀や埋葬、死亡届の提出に必要なので必ず受け取ること。次に家族や友人といった関係者への連絡、職場に伝えて忌引き(有給休暇)を取得、遺言書の有無と内容の確認(葬儀に関することが書かれていることも)を行う。
葬儀に関しては葬儀社を利用するのが一般的だが、自分で手配することも可能。ただし、その場合は法的手続きに加え、棺やそれを運送する車両の用意、遺体の安置、埋葬の手配、死亡届の提出などが必須だ。
葬儀社を選ぶときは「ニュージーランド葬儀社協会(Funeral Directors Association of NZ/FDANZ)」または「ニュージーランド独立葬儀社協会(NZ Independent Funeral Homes/NZIFH)」に加盟しているかどうかをチェックすることがおすすめ。これらの協会のウェブサイトで葬儀社を検索することができる。
日本国籍保持者が亡くなった場合は、日本大使館か領事館にも死亡届を提出する。詳細は大使館のウェブサイトで確認を。

埋葬方法 ─ 土葬 ・ 火葬 ・ 水葬
ニュージーランドの埋葬方法は土葬・火葬・水葬などから選べる。土葬の一種と見なされる海葬も認められている。
最も多いのは火葬で、遺灰はお墓に埋葬するほか、散骨、骨壺に納めて手元に保管する、墓地の納骨堂に安置するなどさまざま。家族や知人と少しずつ遺灰を分け合ってもOK。散骨場所に法的な制限はほとんどないが、念のため自治体や葬儀社に確認しよう。
最近注目されているのはアクアメーション(Aquamation)またはウォータークリメーション(Water Cremation)と呼ばれる水葬。水とアルカリ性溶液で遺体を分解する葬送方法で、火葬に比べて二酸化炭素の排出量を約90%も削減でき、環境にやさしいことが特徴だ。処理後は遺骨だけがきれいに残るため、これを乾燥・粉砕して遺族のもとへ返却される。2026年5月現在はクライストチャーチでのみ利用可能。
葬儀にかかる費用は?サポートは受けられる?
ニュージーランドの葬儀代は決して安くない。2025年のデータによると一般的に以下の通りの費用が必要とされる。
●葬儀社……$3,000~$6,500
●エンバーミング(遺体衛生保全)……$700~$1,050(義務ではない)
●棺……$1,200~$5,000(棺の代わりに布を使うことも可能)
●霊柩車のレンタル……$200~$500
●土葬(墓地代+埋葬費用)……$1,000~$8,000
●火葬……$600~$1,100
●遺灰の埋葬(墓地代+埋葬費用)……$200~$3,000
ほかに会場代、セレブラントに支払う費用(セレブラントの利用は義務ではない)、会場で参列者に提供する飲食費、生花代などもかかる。経済的支援が必要な場合、条件はあるがWork and IncomeやACC(事故やケガで亡くなった場合など)から給付金が受けられることがあるので検討しよう。
遺骨を日本へ持ち帰るには?
ニュージーランドで火葬した遺骨を日本で埋葬したい場合は、火葬証明書(Cremation Certificate)、死亡証明書(Death Certificate)およびそれらの和訳を用意する。可能なら葬儀社からのレター(Funeral Director Letter)、遺骨識別書類(Ashes Identification Document)およびその和訳があると安心。遺骨を機内持ち込みにするか受託手荷物にするかは利用する航空会社によって規定が異なるので確認を。ニュージーランド航空は基本的に機内持ち込み可だが、事前連絡は必須。保安検査があるのでX線で中身を透過できる木製やプラスチック製の骨壺がおすすめ。
ニュージーランドらしい葬儀とは?
ニュージーランドで故人を偲ぶセレモニーは、葬儀(Funeral/棺が会場にある一般的な式)、追悼式(Memorial/棺が会場にないお別れの会。数週間~数か月後に行われることも多い)、タンギハンガ(Tangihanga/マラエ※で数日間にかけて行われるマオリ式葬儀)の3つが主流。セレモニーではスピーチを中心に、故人の写真のスライドショーや映像、故人が好きだった音楽を流すなどして故人の人生を祝うのがニュージーランド式だ。
宗教色がない式も一般的で、マオリの戦いの舞ハカが披露されることも多い。会場の選択肢も幅広く、葬儀場や宗教施設のほか、自宅、職場、ホテル、学校、ビーチ、公園、森などでも行うことができる。
※マラエ(Marae):マオリのコミュニティにおける伝統的な集会所・共有空間。歓迎式や結婚式、葬儀、会合など人生の節目や地域行事が行われる大切な場所。
ニュージーランドのお葬式について聞いてみました。
※本記事は、ニュージーランドで実際に行われた葬儀に参列した方への取材をもとに構成しています。
家族だけでゆっくり過ごす時間が印象的でした
「参列したお葬式では、涙に包まれるというより、故人との思い出を語り合う温かい雰囲気でした。子どもたちも自然に参加していて、日本との違いを感じました。」
服装は思ったより自由でした
「もちろん黒い服の方もたくさんいましたが、故人の希望で華やかな色を身につけている人もいて驚きました。」
セレモニーより、その後の時間が長かったです
「式が終わったあとも参列者と食事をしながら何時間もいろんな話をしていました。悲しみだけでなく、故人との思い出を語り合うという印象でした。」
初めての教会でしたが、安心して参列できました
「細かなマナーを知らなくても周りからは、全く気にしなくて良いと言われました。堅苦しい雰囲気ではなく、故人を大切に思う気持ちが一番大事なのだと思いました。」
実際にニュージーランドで行われた葬儀に参列した方に、お話を伺いました。
自然に囲まれた穏やかな環境
会場に到着してまず驚いたのは、その景色でした。
「大きな木々が立ち並び、緑に囲まれた敷地は、とても静かで穏やかな雰囲気でした。日本で想像する『お墓』という印象より、公園のような空間で、自然の中で故人を見送る場所という感じがしました。」
家族や友人がゆっくり故人を偲ぶ時間
式典そのものだけでなく、その後の時間も印象的でした。
「参列者同士が故人との思い出を語り合い、食事やお茶を楽しみながらゆっくり過ごしていました。悲しみだけではなく、故人の人生をみんなで振り返る温かい時間だったのが印象的でした。」



※ご遺族の許可を得て掲載しています。

