娘のマイホーム 購入資金の援助

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「困ったときの法律駆け込み寺」日本とは勝手が違い、戸惑うことも多いニュージーランドの法律。現役弁護士がお答えします。

娘が結婚を控え、マイホーム購入を援助したく思っています。ただ、大きな金額ですし、比較的簡単に離婚に至ってしまう傾向がある最近、万が一別れてしまったらそのお金はどうなるのだろうと心配になります。アドバイスをお願いします。

今回から法律コラムを担当させていただきますK3 Legal所属弁護士の浅利友香です。日本人の方の法律的なご相談や紛争解決などは個別に対応させていただいております。

今日は、ご質問いただいた『贈与』に関してお話していきます。
近年、不動産は高騰し続けており、若いカップルにとって、共働きをしても手が届く金額ではなくなりました。デポジットでさえも大金なので、両親にそのお金を借りたりして、どうにか家を持とうとします。また、結婚のお祝いとして家の購入金額の半分もしくは全額を払うという親御さんもいらっしゃいます。その時は二人の新たな門出を祝して出したお金であっても、その後二人が別れてしまったら果たしてそのお金はどうなるのでしょうか?

このような状況において、大抵の場合、元嫁あるいは元婿は、親から提供された不動産購入資金は贈与であると主張します。なぜならニュージーランド法では、当事者関係が親子の場合、そのお金が本当にローン(貸与)であると客観的に示せない限り、贈与として扱われ、子供の資産になるからです。そして夫婦であったら関係財産について複雑なルールがあるものの、その「財産の半分を受け取る権利が元嫁あるいは元婿にある」という分配ルールが出発点となります。この贈与かローンかの議論は親子関係がある以上、反証はなかなか難しいものがあります。

まずは、お金をお子さんの口座に実際に入金する前に、弁護士に相談することをお勧めします。「不動産の共同名義人になる」、「金銭消費借契約書を結ぶ」、あるいは「WILL(遺言書)に記載する」など、親御さんの状況に合わせて、その資産を守る手立てを講じます。そうすることで、お子さんの意に反して破局を迎えた際には、お子さん夫婦から全額を取り戻し、必要に応じて自分のお子さんに再融資することもできます。また、このような方法を講じておくことで、万が一、裁判になった際にも優位に事を進めることができます。

備えあれば憂いなしです。ご質問や具体的なご相談がある場合には、お気軽にご連絡ください。


※本記事はあくまでも法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用いただくためのものではありません。

Yuka Asari
弁護士
Yuka Asari
浅利 友香

オーストラリアでの弁護士キャリアを経て2020年にK3 Legalへ所属。
専門は会社法・商法・ 用法、主に企業担当。

K3 Legal
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2021年6月号掲載