ここ数年、ワイン業界でも耳にする機会がグッと増えてきた、リジェネラティブ(環境再生型)。
サステイナブルが、「環境負荷を減らして現状を維持すること」を目指すのに対し、リジェネラティブ農業はその一歩先、「環境を回復させること」を目的としています。
ポイントは大きく3つ。
● 土壌の回復が最優先 : 元気な土が、畑全体の健康に繋がる。
● 生物多様性を取り戻す : 植物・昆虫・微生物など多様な生物が自然のバランスを生む。
● インプットを最小限に : 化学肥料や農薬の使用を減らし、コストと健康リスクを抑える。
つまり、リジェネラティブ農法とは、人の手を必要以上に加えず、自然の力を最大限に活かしてブドウを育てる「再生型」の栽培方法です。
ニュージーランドでは?
ニュージーランドでも、この農法への関心は急速に高まっています。この冬に開かれた「まずは一区画から試してみよう」というワークショップに私も参加しましたが、ワイナリーのオーナーやグローワーたちが課題を持ち寄り、自分たちの経験や、試している取り組みを積極的にシェアしていました。
リジェネラティブについて顧客からの問い合わせも増え、マーケティング面でも避けて通れないテーマになっていて、環境への取り組みは生産現場だけでなく、消費者や市場側からも求められる価値になってきています。

グレイストーンで見た、リジェネラティブの実践
今回訪れたノースカンタベリーのワイナリー・グレイストーンは、先頭に立って着手していて、マスタードをはじめとするカバークロップ※1を積極的に導入し、土壌の多様性と健康を回復させる取り組みが進んでいました。
特に興味深かったのが、リースリングとピノ・ノワールに採用しているハイワイヤー・トレーニング※2。従来の仕立てでは、ブドウの樹の休眠期にしか羊を畑に入れられませんが、ワイヤーを高い位置にして誘引することで、羊が葉やブドウの房に届かないため、年中放牧が可能になります。

その結果、作業効率は大きく向上し、これまで草刈りや下草管理にかかっていた人件費や燃料コストが削減されました。さらに、トラクターの出動回数が劇的に減ったことで、土壌のコンパクション(踏圧)も抑えられ、根がより深く健全に伸びやすい環境が整えられています。
何より印象的だったのは、羊が草を食べ、その糞が有機的な栄養として再び土へと還元されていく——そんな自然の循環が畑の中で完結していたことです。
この区画のブドウから造られたピノ・ノワールは、しなやかさの中に力強さを秘めた味わいで、畑の健やかさがそのまま液体に映し出されているようでした。
これからも、ニュージーランド各地で進む畑の挑戦と取り組みを、継続して追いかけていきたいと思います。
※1 カバークロップ(被覆作物):雑草抑制や土壌環境の改善を目的に、主作物の間や休閑期に栽培される作物。
※2 ハイワイヤー・トレーニング:ブドウの枝を通常より高い位置で誘引・管理する仕立て方法。
ワインエキスパートの理沙さんの厳選ワインをご紹介!

Greystone Petillant Natural 2023
発酵の途中で瓶詰めし、瓶内で発酵を完了させることで、自然に発生した泡を閉じ込める製法。澱抜きをしないため、軽い濁りと酵母由来のうま味があり、スッキリとドライな仕上がり。
品種:リースリング、ピノ・ノワール
産地:ワイパラ・ノースカンタベリー


Greystone Pinot Gris 2024
フレッシュでミネラリー。伸びのある酸が心地よく、梨のようなみずみずしい果実味に、ほのかなスパイスのニュアンスが重なるバランスの良い味わい。
品種:ピノ・グリ
産地:ワイパラ・ノースカンタベリー



ダイヤー 理沙 さん
2001年からニュージーランド在住。
J.S.A ワインエキスパート。WSET Level3。
ワインの勉強をしつつ、お料理とのペアリングを考えたり、NZでのワイナリー勤務の経験、現地の視点を交えてNZワインの魅力やお役立ち情報を発信中。
Instagram: @luv.vin.nz
WEB: lovewinenz.blog
Email: info@lovewinenz.com

