【ワインプロフェッショナル】ブティックワイナリーの魅力あるワインを厳選して日本へ届ける ー 理沙さん

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普段飲んでいるワインについてもう少し学ぼうと軽い気持ちで受けたワイン検定からワインの奥深さに惹かれていった理沙さん。資格試験で得た知識だけにとどまらず、実際に現場の仕事に携わることで身につくことも多いという。

ニュージーランドワインの特徴、自分好みのワインの選び方、今後の目標なども伺った。

Q. ニュージーランドへ来たきっかけは何ですか?

もともと海外へ出ることへの関心は強い方でしたが、日本で出会ったニュージーランド人から話を聞くことで、それまでほとんど知らなかったニュージーランドという国に興味を持ちました。2000年に初めて渡航し、すっかり魅了され2001年に移住しました。

Q. 現在のお仕事を始める前はどのようなお仕事をされていましたか?

ニュージーランドへ来てから最初についた職は、日本食レストランでのホールスタッフやキッチンハンドでした。最も長く携わったのは、留学エージェントとして、日本からの留学生が学校やホームステイでスムースに暮らせるようサポートするお仕事でした。

Q. ワインに関するお仕事を始めるようになった経緯を教えてください。

ワインの勉強を本格的に始めたのは2018年です。
ちょうど前職を退き、時間ができたタイミングでの出会いや、それをきっかけに読んだ本などの影響もあり、普段あまり考えずに飲んでいるワインのことを少し学んでみるのも楽しいかもしれないといった軽い気持ちでした。

日本ソムリエ協会主催のワイン検定受験を皮切りに、ワインの奥深さに惹かれ、その後ワインエキスパートの試験に独学で臨みました。ニュージーランドへ来てからワインを知った私は、フランスワインをはじめ世界のワインに関する知識が乏しく、飲んだこともないワインについて原語で暗記していくのは容易いことではなく、チャレンジングでした。それだけに、無事一発合格できたことはとても嬉しく、せっかくならこの経験を生かした活動をしたいと思うようになりました。

と同時に、詰め込んだ知識は多少あるものの、「知れば知るほど何も知らないことを知る」と言いますか、もっともっと知りたいという欲も深まりました。初めてボランティアで収穫のお手伝いをした時には、このブドウがワイナリーへ運ばれて醸造されていく過程を是非とも見てみたいと思い、翌日も早起きして自主的にワイナリーへ出向いたことを覚えています。現場で見聞きすることは新鮮で楽しく好奇心をそそられました。そして、そのような繋がりから、その後も収穫期間をはじめ、人手が必要な時に声をかけてもらうようになりました。

Q. 現在はヴィンヤードで働いているとのことですが、具体的にはどのようなことをされていますか?また魅力ややりがいについて教えてください。

冬の休眠期間の剪定から、秋の収穫までの間、健全なブドウが育つようお手伝いします。本当に色々な業務がありますが、例えば冬の剪定は、熟練スタッフが適切な長梢を残してカットしていくので、カットされた枝をワイヤーの間から引き、残した枝をワイヤーに固定していく作業を担当します。春になると萌芽が起こり、グングンと成長していく新梢を固定したり、通気をよくするために余分な葉を除いたりします。実ができて色づき始めると、鳥害を予防するためにブドウの樹にネットを被せたり、葉を取り除いたり、引き続きブドウの収穫までの管理をしていくので、その時々で必要な作業をしていきます。チームワークもありますが、任された仕事を1人でコツコツと行うことも多いです。

正直、体力的には楽ではない作業も多いですが、勉強してきたことを確認できたり、また教科書からは学べないことを実際に体験しながら知ることができるので、実りある時間だと感じています。豊かな自然の中で働くのは気持ちが良いですし、日本と同じように四季があるニュージーランドの季節の移ろいをより身近に感じられるようになりました。

Q. ワインに関連したお仕事に就くために必要な資格、持っていると良い資格などがあれば教えてください。

必要な資格というのは職やポジションによって異なるかと思いますが、ワインに関する知識は当然必要になりますし、それを証明するためにも、世界最大のワイン教育機関であるWSET(Wine & Spirit EDUCATION TRUST) の資格を持っていると有利です。募集要項にも条件として具体的にWSET Level2 などと書かれていることもあります。

もちろん他の機関で学んで資格を取得したり、それをステップにすることもできますが、国際資格WSETを持っていると、ニュージーランドでもワインの知識のレベルが相手にすぐに伝わるので話が早いと実感しています。私はニュージーランドで、レベル2、3のコースを受講&受験しましたが、受講生もほぼ全員ワイン業界に既にいる人、これから参入したいと考えている人たちでした。

Q. ニュージーランドワインの特徴やワインの選び方について教えてください。

生産地域はノースランドからセントラルオタゴまで1100キロに渡って広がっているので、地域とその土地に合う品種のそれぞれの特徴がありますが、全体的には、ニュージーランドの気候は冷涼で、日照時間が長く、夜間は気温が下がるため、果実味豊かで酸味を保持したフレッシュなワインが多く生産されています。

ソーヴィニヨン・ブランが生産量の大半を占めていて、輸出量も圧倒的ではありますが、高品質なピノ・ノワールやシャルドネ、輸出量は多くなくても、さまざまな品種が栽培されています。

業界の環境に配慮したぶどう栽培とワイン醸造への意識も高く、96%の栽培地がサステイナブル認証を受けているというのも大きな特徴です。歴史が浅く、柵も少なく自由なワイン造りができる環境で、ポテンシャルが高く、今後への期待が大きいニュージーランドワインです。

自分好みのワインの選ぶには ー
美味しいと感じるワインを選べるようになるためには、まずは自分の好みを知ることからだと思います。そのためには飲み比べの経験を積むことがお勧めです。ワイナリーのセラードアではまとめて数種類のワインが味わえますし、ニュージーランドでは、レストランやバーでも気軽にテイスティングさせてくれるところが多いです。また自宅でも、例えば赤ワインを2種類同時に飲み比べてみて、こちらの方がフルーティーで、渋みが少なくて好きとかそんな自分なりのテイスティングノートをつけていきます。そして、それを店員さんやソムリエなどに伝えて、新しいワインを紹介してもらう、そのような繰り返しの中で、お気に入りに出会い、また幅も広がっていくと思います。

Q. 今後の目標や、これからやってみたい事などはありますか?

ニュージーランドワインの魅力を知ってほしいというシンプルな想いから2021年にワインビジネスを立ち上げました。とあるブティックワイナリーのオーナーからかけられた「私たちのように小さなワイナリー経営者はなかなか畑を離れて営業に行くことができない。でもあなたなら日本に行くこともできるし、私たちの代表としてプロモートすることができる」といった趣旨の言葉が心に響き、背中を押されました。ワイナリーを巡る中で美味しいワインを造っている小さな生産者たちがたくさんいることを知り、少しでも役に立てるのならという気持ちは今も変わらず礎になっています。

また、前の質問に答えながら、「ワインは難しい」と思っている方が「ワインは楽しい」と変化していく過程をお手伝いしたいと思っていたことを思い出しました。少しの知識があるだけで世界は広がり、楽しさもぐんと深まりますので、ワインの楽しさを伝える、一緒にワクワクできる活動を展開していきたいです。

そのためには、引き続き勉強しつつ、アップデートしていきたいと思っています。

【さいごに】ニュージーランドでワインに関わった仕事をしたいと考えている方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

渡航前に、前述のWSETを英語で取得しておくことをお勧めします。
経験のない新たな地で飛び込んでいくことは簡単ではない中で、世界で共通認識のある国際資格は指標となり信頼につながります。

最低限の語学力は大事ですが、ワインに対する情熱や、どんな目標を持って今ここにいるのかという熱意をはっきりと伝えられるコミュニケーション力や態度はきっと評価されると思います。


ダイヤー・理沙さん

ダイヤー 理沙 さん

2001年からニュージーランド在住。
ニュージーランドワインが中心にある日常 – ヴィンヤードで働き、ワインとお料理のペアリングを考え、日本の個人消費者向けにレアなニュージーランドワインを販売。
2019年にJ.S.A ワインエキスパート・2023年にWSET level3 award in wines 取得。
 
【IG】https://www.instagram.com/luv.vin.nz/
【WEB】https://lovewinenz.com
【お仕事依頼やお問い合わせ】info@lovewinenz.com

取材・編集 GekkanNZ