【プロダクトデザイナー】子どもの将来の選択肢を増やしたい。「仕事が人生の中心ではない」という魅力を感じて。-Mamoruさん

【プロダクトデザイナー】子どもの将来の選択肢を増やしたい。「仕事が人生の中心ではない」という魅力を感じて。-Mamoruさん BUSINESS

子どもに将来海外に住むという選択肢を与えることができるように、ニュージーランドへの移住を決意したMamoruさん。日本で8年間携わってきたプロダクトデザイナーとしての経験を活かし、ニュージーランドでも同じ職種でキャリアを継続することに成功した。しかしその成功の陰には、200~300社もの企業への応募というコツコツ重ねた努力と工夫があったという。日本よりも規模の小さい求人市場で成功するための就職活動の秘訣とは?また、海外で働くために必要な、才能よりも大切なものとは?ニュージーランドの広大な自然の中で家族と愛犬とのびのび暮らすMamoruさんに、好きなニュージーランドの職場文化や、私生活での変化など、ニュージーランド生活の魅力を伺った。

Q. ニュージーランドへ来たきっかけは何ですか?

僕がニュージーランドへ移住した一番大きなきっかけは、家族の将来について考えたことです。子どもが生まれて親になったことで考え方が変わり、「子どもにどんな未来の選択肢を残せるか」をふと考えるようになりました。

仮に子どもが海外の永住権を取得できれば、将来的に子どもが日本だけではなく海外で暮らすという選択肢も持つことができます。その「選択肢を増やす」ことが親として子どもにしてあげられることだと夫婦で話して決めました。

また愛犬の存在も大きい理由の一つでした。日本で暮らしていた時ももちろん幸せでしたが、より広大な自然があり、犬と一緒に暮らしやすい環境で過ごさせてあげたい、そんな気持ちも移住を考えるきっかけの一つでした。

移住先については、オーストラリアやカナダなども候補にあがりました。ただ、最終的には永住権の保持のしやすさやビザ取得の難易度の観点から、ニュージーランドを選びました。

本当にニュージーランドで生活できるのかを確かめるために、2022年に家族でニュージーランドへ旅行しましたが、そのタイミングでは悪天候による飛行機の欠航でオークランドを観光することができず、結果的に2024年の移住のタイミングで初めてオークランド市内を観光したことを覚えています(笑)

Q. ニュージーランドに来る前はどんなお仕事をされていましたか?

現在と同じデジタル製品のプロダクトデザイナーとして7〜8年ほど働いていました。

新卒では大手IT企業に入社し、その後はフリーランスとして働いたりスタートアップに転職したり、金融から営業関連のドメインまで幅広い領域のプロダクト開発を経験しました。

直近数年間はSaaS領域に関わることが多く、企業向けサービスの改善や新機能開発などを担当していました。ユーザーの業務フローを理解し、その背景にある課題を整理したうえで、本当に必要な解決策を考え、それをデザインを通して実現していくことを領域としています。

Q. プロダクトデザイナーの仕事内容について教えてください。

プロダクトデザイナーの仕事は、一言で説明するのがなかなか難しい職種です。

よく「アプリの画面をデザインする仕事ですか?」と聞かれることがありますが、実際には画面を作る前のプロセスのほうが重要だったりします。

普段の仕事では、まずチームで「今何を解決しようとしているのか」を整理するところから始まります。例えば新しい機能を追加する場合でも、いきなりPCを開いて画面のデザインを始めることはありません。

「なぜこの機能が必要なのか」、「本当にユーザーはこの問題を抱えているのか」、「今ある別の方法では解決できないのか」という部分を深掘りします。

必要な情報が足りなければ、ユーザーインタビューを実施したり、過去のリサーチ結果を見返したりして、課題への理解を深めます。そのうえで仮説を作り、解決策を考え、プロトタイプを作成し、エンジニアやプロダクトマネージャーと議論しながら形にしていきます。

働き方についてですが、会社員だった頃は朝8時半頃から仕事を始めて、夕方4〜5時頃には終わる生活をしていました。週3日はリモートワークで、残りの日はオフィスに行っていました。

日本との違いでいうと、ニュージーランドでは「会議の議事録を誰かが必ず取る」「細かいタスク管理をする」という文化は少し違うように感じます。もちろん会社によりますが、日本では当たり前だった細かい調整や管理業務が、こちらでは個人の責任に任されている部分が多い印象です。

最初は戸惑いましたが、自分で考えて動くことがより求められる環境なので、プロフェッショナルとして成長できる部分でもあると感じています。

Q. ニュージーランドでの仕事はどのように探しましたか?

ニュージーランドで仕事を探すにあたって、主にLinkedInやSeekなどの求人サイトを利用しました。最終的に一つの会社からオファーをもらうことができましたが、それまでには200〜300社ほど応募し、返信をもらえた企業はほんの数社でした。

海外では単純にCV(履歴書)を送るだけでは、なかなか次のステップへ進むことが難しいと思います。特にニュージーランドは人口が少ない市場なので、求人自体の数も日本と比べると多くありません。

途中からは、ただ求人に応募するだけではなく、応募前にLinkedInでその会社の社員や採用担当者にコンタクトを取るようにしました。

また、海外転職を考えている人には、人とのつながりを早い段階から作っておくことをおすすめします。もし今の自分がもう一度海外就活をするなら、もっと早く現地のコミュニティに参加したり、業界の人と話す機会を増やすと思います。

理由はシンプルで、採用する側の立場で考えた時、現地での職歴もなく、誰からの紹介もない人を採用するのはリスクがあるからです。

もちろん日本から海外企業へ直接応募することも可能です。自分自身も結果的にはその方法で移住を実現できました。ただ、可能であれば現地で少しでも経験を積む、インターンやコミュニティを通じて人とのつながりを作る、というルートのほうが現実的な場合も多いと思います。

海外で働くために必要なのは、特別な才能というより、準備を続けることと、チャンスが来た時に掴める状態にしておくことなのかなと思います。

Q.ニュージーランドでプロダクトデザイナーとして働くために必要な資格、あった方がいい経験などがあれば教えてください。

前提として、プロダクトデザイナーとして働くうえで、一番重要なのは資格よりも「これまで何を経験してきたか」だと思います。ただ、海外で採用される時に見られるポイントは、それ以上に、「この人はどんな問題を解決してきたのか」「プロダクトやビジネスにどんな価値を生み出してきたのか」という部分だと感じています。

例えば、

「〇〇という機能をデザインしました」だけではなく、「ユーザーの課題を発見し、その解決策を考え、結果として利用率を改善した」、「複雑だった業務プロセスを整理して、ユーザーの作業時間を短縮した」というように、デザインによって何を変えたのかを説明できることが大切です。

個人的には、これから海外でプロダクトデザイナーを目指す人は、ポートフォリオ作りの段階からそこを意識すると良いと思います。

Q. プロダクトデザイナーとして働くうえで、日本人であることのメリットを感じることはありますか?

正直に言うと、「日本人だから有利だった」と感じる場面はあまりありません。

以前働いていたチームにも様々な国籍やバックグラウンドを持つ人がいて、「どこの国の人か」というよりも、「どんな経験があって、チームにどんな価値を提供できるか」という部分を見られている感覚がありました。そのため、日本人という肩書きだけで評価されることはほとんどありません。

ただ、一方で日本で働いてきた経験が活きていると感じる部分はあります。例えば、日本のプロダクト開発では、細かい部分へのこだわりや、ユーザー体験に対する丁寧さが求められる場面が多いと思います。

もちろん海外にも優れたデザイン文化はありますが、日本で培ってきた「細部まで考える姿勢」や「ユーザーが迷わないように設計する意識」は、自分自身の強みの一つになっていると感じます。

また海外で働く面白さは、単純に外国の会社で働けることではなく、自分とは違う価値観を持つ人たちと一緒にプロダクトを作れることだと思います。

日本人であることを特別な武器にするというより、自分がこれまで経験してきたこと全てを強みに変えていく。それが海外で働くうえで大切なのかなと思っています。

Q. 「ニュージーランドで働く」ならではの楽しさや魅力、やりがいについて教えてください。

ニュージーランドで働いていて感じる魅力は、「仕事が人生の中心ではない」という価値観です。

もちろん、プロフェッショナルとして良い仕事をしようという意識はあります。ただ、それと同時に「仕事は人生を豊かにするための一部」という考え方が非常に強いと感じます。

ニュージーランドに来てからは、家族や自分自身の時間を大切にすることの重要性を改めて感じるようになりました。例えば、仕事が終わったあとに娘と公園へ行ったり、犬と長時間散歩したり、週末に自然の中で過ごしたり。

以前なら「仕事が落ち着いたらやろう」と後回しにしていた時間を、今は日常的に持つことができています。個人的に好きなのは、金曜の午後に会議を入れてはいけないという暗黙の了解があることです(笑)

Q.また反対に大変なことや難しいと感じる部分はありますか?

一番大きな壁は、やはり英語です。

移住前から英語学習には取り組んでいて、ニュージーランドの居住権取得に必要なIELTS Overall 6.5のスコアも取得しました。その時は「これで海外で働くための最低限の準備はできた」と思っていました。

もちろん、IELTS6.5を取得したことで生活面ではかなり助けられましたし、海外移住への大きな一歩になったことは間違いありません。ただ、実際に現地企業で働き始めてみると、試験で求められる英語と、仕事で求められる英語は全く別物だと感じました。

日本で働いていた時は、長年日本語で仕事をしてきたので、頭の中にある考えをすぐ言葉にして、必要な情報を整理して伝えることができました。しかし英語環境になると、その当たり前だったことが突然難しくなります。

会議で話されている内容の大枠は理解できても、細かいニュアンスや、その場で出てくる新しいアイデアについていけないことがあります。

ただ、一方で2年以上働いてみて感じるのは、英語は実際に使う環境に飛び込むことで伸びる部分も大きいということです。移住前は「もっと英語ができるようになってから海外に行こう」と考えていました。

でも、実際には完璧になる日は永遠に来ません。仕事で必要な表現を覚えたり、失敗しながら伝え方を改善したりすることで、少しずつできることが増えていきました。

Q. ニュージーランドと日本での働き方の違いなどはありますか? 

一番大きな違いは、「仕事と生活の距離感」だと感じています。

ニュージーランドでは、「生活を豊かにするために仕事をする」という考え方がより強いです。仕事はもちろん大切。でも、家族との時間や趣味、自分自身の時間も同じくらい大切にする。そのバランスが自然に取られている印象があります。

例えば、こちらでは残業する人はかなり少ないです。もちろん忙しい時期はありますが、「遅くまで働いて頑張ること」が評価される文化ではありません。むしろ、決められた時間の中で成果を出すことが求められます。また、有給休暇や病欠も非常に取りやすいです。しっかり休むことで仕事の質も上がるということを実感しました。

Q. オフの日や仕事終わりの過ごし方はどのような感じですか?

平日は仕事が終わると、家族と過ごす時間を大切にしています。娘と近所の公園へ遊びに行ったり、犬の散歩をしたり、家でゆっくり過ごしたり。以前は「何か特別な予定を作らないと休日を楽しめない」と考えていたこともありましたが、今では日常の中に自然やリラックスできる時間があります。

特に犬との時間は、ニュージーランドに来てからさらに増えました。日本ではなかなか長時間歩ける場所を探す必要がありましたが、こちらでは少し車を走らせるだけで自然の中を歩くことができます。

また、最近は購入した家のDIYも楽しんでいます。こちらでは家は育てていくという価値観が強いので、これから家をどんどん素敵に改築していくのが楽しみです。

Q. 最後に、これからニュージーランドでプロダクトデザイナーとして働きたいと考えている方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

もし数年前の自分にアドバイスするとしたら、「完璧な準備を待たずに、少しでも早く行動したほうがいい」と伝えると思います。海外で働くことを考えた時、多くの人が不安に感じることがあると思います。

自分自身も、移住前は同じような不安をたくさん抱えていました。できる準備は、できるだけしておいたほうが良いと思います。ただ、準備だけを続けていると、いつまで経っても動き出せないということもあります。

実際に来てみて感じたのは、「来てみないと分からないこと」が本当に多いということです。働き方も、人との関わり方も、生活の価値観も、日本にいる時に想像していたものとは違いました。

最近ではビザの条件も年々変化していますし、AIの発展によってデザイン業界の環境も大きく変わっています。これから海外で働くハードルは、以前より高くなる部分もあるかもしれません。だからこそ、もし海外で働くことに興味があるなら、可能な限り早いタイミングで挑戦してみることをおすすめします。

ぜひ「いつかできたらいいな」で終わらせず、小さくても良いので最初の一歩を踏み出してほしいと思います。

最後に、このインタビュー回答後、勤務していた会社でレイオフがあり、退職し、個人事業主として独立しました。突然の出来事ではありましたが、これをきっかけに、自分がこれからどんな働き方をしたいのかを改めて考えるようになりました。

現在はプロダクトデザインの仕事を続けながら、自分自身でもプロダクト開発に取り組んでいます。今後もニュージーランドでのキャリアを軸にしつつ、会社員だけに限らず、自分に合った働き方を模索していきたいと思っています。


プロダクトデザイナー/【Auckland】
Maoさん

プロダクトデザイナー/【Auckland】
Mamoruさん 

日本で約8年間、SaaSやモバイルアプリなどのプロダクトデザインに携わった後、2024年に家族と共にニュージーランドへ移住。
POSシステムを提供する外資企業に勤務後、現在は個人事業主として活動中。個人製品の開発に取り組みながら、フリーランスとして企業を支援。休日は愛犬とのトレッキングや自宅のDIYを楽しみながら、ニュージーランドでの暮らしを満喫中。
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[linkedin] https://www.linkedin.com/in/mamoru-kijima

取材・編集 GekkanNZ

この記事の内容は個人の過去の体験談です。必要な場合は、最新の情報をご確認ください。

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