季節の暮らしに役立つ作業療法的健康ヒント(夏編)

予防医学 LIFESTYLE

つまずき・転倒のリスクを減らす:床と戸の工夫

高齢者の怪我の原因として最も多いのが「転倒」。65歳以上の方を対象としたある調査によると、自宅内の転倒から交通事故を含めた事故の中で、77%は住宅内で起きており、その中で最も多いのはリビングです。意外なところに転倒リスクを高める要因が潜んでいます。

ニュージーランドでは、リビングや寝室に絨毯が敷かれていることが多いと聞きました。見た目には暖かく快適ですが、高齢の方にとっては足を引っ掛けやすく、大きなリスクとなります。

カーペットの端がめくれていないか定期的にチェックし、めくれがある場合は滑り止めテープなどで固定するのが良いでしょう。部分的な置き敷き絨毯(ラグ)よりも、壁から壁まで隙間なく敷くタイプのカーペットであれば、より安全に過ごせるでしょう。キッチンマットや玄関マットも同様に要注意です。

室内履きであるスリッパもまた、転倒の原因の筆頭です。特に、底が厚いもの、かかと部分が固定されないものは脱げやすく、バランスを崩しやすくなります。家の中では、底が薄く滑りにくい素材で、かかとまでしっかりと覆われ、足にフィットするタイプの室内用シューズを選ぶことをお勧めします。

ニュージーランドの住宅では、引き戸ではなく開き戸が主流です。開き戸は、歩行が不安定な方にとっては半歩下がりながら開閉動作が必要なため、転倒リスクにつながることがあります。ドアノブは握るタイプよりも、軽く押すだけで開けられるレバー式のものに交換を検討しましょう。軽い力で開閉できるタイプのドアストッパーを活用し、戸を開けたまま固定して通過時の負担を減らすのも有効です。

電話線、パソコンの電源コード、ランプのコードなどが床を這っていませんか?これらは、意識せずともつまずきを引き起こす「見えない罠」です。
コード類は、家具の後ろや壁に沿って固定し、人が通る動線上に置かないようにすると良いでしょう。コードカバーで固定するのも良い方法です。

浴室とトイレの安全確保

湿気が多く、滑りやすい浴室や、狭いトイレは、転倒事故が起こりやすい場所。立ち上がりや浴槽のまたぎ動作は、想像以上に足腰に負担がかかります。特に夏場はシャワーの回数が増え、床が濡れやすくなるため、浴室やトイレでの立ち座り動作に注意が必要です。 

浴室やトイレには、手すりの設置をお勧めします。ニュージーランドの住宅は壁の構造上、日本の住宅のように簡単に手すりを設置できない場合もあるかと。工務店や専門業者に相談して、壁の補強が必要か確認すると良いでしょう。汗や水で足元が滑りやすくなる季節は特に、浴槽の出入り、洗い場での立ち座り、トイレでの立ち座りなど、動作の補助となる位置に縦型の手すりを取り付けることを検討しましょう。賃貸などで壁に穴が開けられない場合は、挟んで固定するタイプの浴槽用手すりや、吸盤式の滑り止めマットも役立ちます。

滑り止めマット:濡れた床での転倒防止に
吸盤式手すり:賃貸でも設置しやすいタイプ
浴室用椅子:立ち続けが不安な方に
低コストで手軽に滑りにくくするシート式マット。小さなお子さんにも。
目白大学 保健医療学部 作業療法学科 准教授 野村 健太
目白大学 保健医療学部 作業療法学科
准教授 野村 健太

認定作業療法士,博士(作業療法学)
保険内の作業療法は回復期リハビリテーション病院、医療・介護保険の訪問看護、障害福祉の通所施設(自立訓練)で実務経験あり。保険外では、健康な男性高齢者が地域活動を選択し習慣化する集団作業療法プログラム、オレンジカフェ、介護者サロン、独居高齢者支援、子ども食堂など。
目白大学WEBサイト:https://www.mejiro.ac.jp

ニュージーランドでも相談できる作業療法士(Occupational Therapist)
ニュージーランドには、日本の作業療法士に相当する Occupational Therapist(OT) がいます。OTは、転倒予防や住環境の調整、日常生活の工夫などを通して、年齢や体力の変化があっても安全に暮らし続けるための支援を行う専門職です。GP(家庭医)や地域サービス、ACCなどを通じて相談することができます。

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