在庫切れはいつまで続く⁉新型コロナがもたらした 物流業界の混乱

新型コロナがもたらした 物流業界の混乱BUSINESS

昨年のクリスマスシーズン、おもちゃ売場がスカスカ状態、自転車や電化製品が在庫切れ、オーダーした家具が届かないなどを実感した人も少なくないだろう。なぜか。
現在、海外からの海運輸送および国内の港湾作業が滞るという事態が起こっているからだ。

 家具も新・中古車も海外の書籍にも入荷の遅れが生じている。海外からのモノの輸送、つまり物流が遅滞しているのだ。物流業界では何が起こっているのだろうか、国際海上・航空貨物輸送業DGX社※のビジネス・ディベロップメント・マネージャー、高須勇喜氏に現状を伺った。

ひっ迫する物流の現場

「昨年10月以降、少なくとも向こう1カ月間は貨物船のスペースに空きがない満船状態が続いています」と高須氏。特にアジアからの貨物は需要過多で、船のスペース不足、アジアでのコンテナ不足が深刻になりつつあるのだという。また、主にアジア主要港の混雑により、船便の所要日数が1~2週間長引き、オークランド港の混雑により、着岸までオークランド沖合での待機日数が8~9日間かかっている。これに伴い海上運賃が上昇。海上運賃は、通常の2~3倍、航路によってはそれ以上だ。それに加えて、オークランド着貨物には混雑サーチャージとして追加料金徴収も始まった。

 新型コロナやロックダウン後の、日用品需要の高まりと港湾関係の人手不足が原因と言われているが、それだけではないようだ。
「例年8~9月はアジアは台風の季節で船の遅延は多いですが、昨年が例年と違ったのは、コロナ禍で航空便の稼働率低下により海上便の需要が増え、10月初めの中国国慶節に向けてすでに満船になっていたこと。そして台風の時期に重なってオーストラリア各港でストライキが起こり、稼働力が落ちていたためです」。これらの理由で、遅延とスペース不足を改善できないままピークシーズンに突入してしまったということだ。「コンテナ船は航路上の多数の港を回りながら積む貨物と降ろす貨物が細かく計算された効率性の上に成り立っているので、どこか1カ所で遅れるとそれがすべてに波及します。まさにその悪循環に陥りました」

とりわけオークランド港では

 世界で起こっている物流の混乱であるが、ピークシーズン以降はオークランドが最も遅延が悪化している港と言えるという。

「理由の一つはオークランド港が力を入れた『ストラドルキャリア(荷役機器)全自動化プロジェクト』がコロナ禍で頓挫して以降、〝半自動〟で稼働し続けておりパフォーマンスが低下していること。もう一つは、過去の港湾事故により安全基準の見直しが行われ、労働時間の上限が下げられたことです」

 オークランド港によると、稼働時間が14%低下しており、国・品目関わらずすべてに遅れが出ている。唯一、年末にコロナワクチン関連機器が入ったコンテナが最優先で降ろされた事例があったが、そんな極端な例外を除いては、品目や輸入者に関係なく影響を受けているのが実態だ。

苦慮する国内の輸入業者

 食品卸売業の東京フードも、この影響を大きく受けている企業の一つだ。同社の貿易事務に携わる田宮潤也氏に現場の声を伺った。「船の遅延、港の混雑により、商品の入荷すべてが後ろ倒しに。貿易の物流を手配するフォワーダーもクレイジーだ、カオスだと嘆いていますね。パッケージも入ってこないため、中身はあっても商品化できないという話も聞きますし、経験したことのない状況です」「他社と連携して、商品を消費者に供給できるように努力しています。コンテナの予約はかなり前もってしていますが、12月からは近々の予約しかできなくなってしまいました。港もタウランガなどに予告なく変更され、そこからの陸送の手配も必要となります」と対応に追われている。

港のてこ入れと時期を待てば

 いつまでこの状況が続くのか、対策はなされているのか、再び高須氏に聞く。「12月にオークランドの代替港として、ファンガレイ南東のノースポートがコンテナ船に利用されましたが、元々大型のコンテナ船は想定されてないため、港の荷役機器不足とコンテナトラックを受け入れるインフラ不足が浮き彫りになりました。これを機にノースポート拡大の可能性は十分にあるでしょう」

 オークランド港では、港湾作業員を50名程増やし人員不足を解消する目標があり、前述の全自動化プロジェクトも3月の完了を目指している。「アジア出し貨物の需要過多の収束は、例年3月以降の荷動きが落ちる時期、スペース不足とコンテナ不足が改善されるタイミングになるのではないか」と見通している。

 昨年9月期の実質GDP成長率は前期比14.0%で、新型コロナ感染拡大前の水準まで回復傾向の今、この混乱の早期収束が期待される。

2020年12月末取材 ※Dependable Global Express社

取材・文 GekkanNZ編集部
2021年2月号掲載