日本酒をもっと身近に、もっと楽しく。
このコラムでは、日本酒の魅力や楽しみ方、日本酒造りの背景などを、酒造りの現場からお届けします。
はじめに、久慈氏が蔵元を務める「南部美人」の酒蔵をご紹介します。

南部美人は岩手県にある酒蔵です。岩手県は三陸海岸の海の幸に恵まれ、お米が豊かに取れる場所でもあります。
そんな岩手県で1902年に創業したのが南部美人です。初代が残した家訓である「品質一筋」を124年間守り抜き、代々久慈家で酒造りをしております。
このコラムでは、ニュージーランドでの日本酒の楽しみ方や、日本酒造りの背景、歴史などを、さまざまな角度からご紹介していきます。読み終えたあとに、「日本酒が飲みたい」と思っていただけたら嬉しいです。
まずは、日本酒というお酒について。
2024年12月、日本酒を含む日本の伝統的な酒造りが、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。
つまり、日本酒は世界に誇る文化遺産となったのです。

そんな日本酒ですが、ワインとは異なる魅力の1つに「季節で飲む酒」があります。日本は四季が非常に豊かではっきりした国ですから、祖先はそのような日本酒の飲み方を古い時代からしてきたのです。
ニュージーランドはこれから秋になりますね。
日本酒は日本の秋から冬にかけて仕込みが行われ、春から夏にかけて蔵の中でゆっくりと熟成していきます。
その日本酒が最も「美味しい」とされるのが秋なのです。
この秋に飲む季節のお酒として「ひやおろし」というお酒があり、日本全国の蔵元から発売されます。
「ひやおろし」とは、春にしぼったお酒を原酒のまま秋まで寝かせて、最高の状態になったものを選んで秋の限定として出すものです。しかも多くは割水というアルコール調整をせずに、しぼったままの原酒で出す蔵も多くあります。生酒ではなく、一度火入れ殺菌をしたものを秋まで寝かせますので、熟成のスピードもゆっくりですし、大きな変化を伴う熟成ではありませんが、アルコールの角がとれてとてもまろやかな味わいになります。

「ひやおろし」は同じく秋の名物である「松茸」などのキノコ類との相性が抜群で、キノコ鍋やキノコとお肉の炒め物などと合わせて飲むと最高に美味しいです。また、秋は美味しいものがたくさんある季節ですので、是非そういった秋の恵みと合わせて「ひやおろし」を楽しんでみてください。

久慈 浩介(くじ こうすけ)
岩手の地酒「南部美人」五代目蔵元。東京農業大学客員教授。岩手県酒造組合会長。「世界中、日本酒で乾杯」を目標に、1997年から世界へ日本の伝統文化である日本酒を輸出。IWC2017※ では世界一「チャンピオン・サケ」受賞。
※IWC(International Wine Challenge)
イギリスで開催される世界最大級のワインコンペティション。日本酒部門もあり、最高評価の日本酒には「チャンピオン・サケ」が授与される。
