第1回 申請を始める前に確認しておきたいこと
ビザを申請するとき、まず確認したいのが「自分はこのビザの条件を満たしているか」ということです。ただ、条件を満たしていることと、それを申請書類で証明できることは同じではありません。
今回から6回にわたり、ビザ申請の準備から結果が出るまで、実際に申請を進める際に知っておきたいポイントをご紹介します。第1回は、申請を始める前に確認しておきたいことについてです。
条件を「自分の場合」に当てはめる
INZ(ニュージーランド移民局)のウェブサイトを見ると、ビザごとに申請条件が説明されています。
例えば、仕事を理由に申請するビザであれば、仕事内容、雇用条件、給与、職歴、資格など、さまざまな条件があります。
ここで気をつけたいのは、ウェブサイトに書かれている条件を一つずつ読んで、「自分は大丈夫そう」と判断するだけでは不十分な場合があることです。
実際の申請では、条件を満たしているかだけでなく、その条件をどのように説明し、どの資料で証明するのかまで考える必要があります。
「条件を満たしている」と「証明できる」は別
例えば、これまでの仕事で十分な経験があるとしても、以前の勤務先からもらった在職証明書に勤務期間と役職しか書かれていなければ、実際にどのような仕事をしていたのかを確認できないかもしれません。
本人からすれば、「何年もその仕事をしてきたのだから、経験があることは明らか」と感じるでしょう。しかし、ビザ申請では、本人がそう説明できることと、提出された資料からその事実を確認できることは別の話です。
特に、何年も前の職歴や海外での勤務歴などは、申請する時点になってから必要な資料を探そうとしても、すぐに用意できないことがあります。会社がすでになくなっていたり、当時の上司に連絡が取れなかったり、書類は残っていても仕事内容までは記載されていなかったりするケースもあります。
そのため、申請準備では「自分はこの条件を満たしている」と確認するだけでなく、「それを第三者に分かる形で証明できるか」という視点を持っておくことが大切です。
何を証明するための書類なのか
書類を準備するときにも、この考え方は役立ちます。
例えば、職歴を証明するためにEmployment Referenceを用意したとします。
そこに会社名、役職、勤務期間が書かれていれば、確かにその会社で働いていたことは分かります。では、申請するビザで確認されるのが「その仕事をしていたか」だけではなく、「どのような業務を担当していたか」だった場合はどうでしょうか。その場合、勤務期間だけを証明する書類では、必要な情報を十分に説明できない可能性があります。
だからこそ、書類を集めるときは「必要書類のリストにあるから提出する」という考え方だけではなく、この書類で何を証明するのかを一つずつ確認してみることが大切です。
一つの資料ですべてを証明する必要があるとは限りません。雇用契約書、給与記録、Job Description、雇用主からのReferenceなど、複数の資料を組み合わせることで、職歴や仕事内容をより具体的に説明できる場合もあります。
過去の情報も、申請前に整理する
もう一つ、早めに確認しておきたいのが過去の情報です。
現在の仕事や住所だけなら、比較的簡単に確認できます。しかし、ビザ申請では過去の住所、職歴、海外渡航歴、以前取得したビザなどについて情報を求められることがあります。何年も前のことになると、正確な日付まで覚えていないことも珍しくありません。
また、以前ニュージーランドでビザを申請したことがある場合には、そのときに提出した情報と今回の申請内容を確認しておくことも大切です。転職や引っ越しなどがあれば、以前と現在の情報が違うのは当然です。問題なのは「違っていること」ではなく、なぜ違っているのかを自分で説明できるかということです。「前回はこう書いたけれど、今回はなぜ違うのか」と聞かれたときに、実際の経歴に沿って説明できるようにしておくと、申請全体の整理もしやすくなります。
よくあるケース
例えば、AEWV(Accredited Employer Work Visa)を申請するとします。
現在の仕事も申請するポジションに関連しており、これまで同じ分野で数年間働いているため、職歴については問題ないと思っているとします。
ところが、過去の勤務先から取得したReferenceを見ると、勤務期間と役職しか記載されていません。本人としては「実際にその仕事をしていたのだから問題ない」と思っていても、申請書類だけを見ると、どのような業務を担当していたのかが十分に分からない可能性があります。
さらに、以前の勤務先がすでに閉鎖されていて、詳しいReferenceを新たに取得することが難しいということもあります。このような問題は、申請フォームを入力している段階で初めて気づくよりも、申請を始める前に職歴と証明資料を確認しておく方が対応しやすいでしょう。
また、職歴だけではありません。過去の住所や海外滞在歴についても、「自分では覚えているから大丈夫」と思っていても、実際に申請フォームに入力しようとすると、日付が分からなかったり、パスポートの記録と照らし合わせる必要が出てきたりすることがあります。
だからこそ、申請準備はフォームを開いてから始めるのではなく、自分の情報と、それを裏付ける資料を先に整理するところから始めるのがおすすめです。
「申請できそう」から「申請を組み立てられる」へ
ビザについて調べていると、「このビザなら自分も申請できそう」というところまでは比較的早く判断できることがあります。
しかし、実際の申請では、その先にもう一段階あります。自分がどの条件を満たしているのか。それを何で証明するのか。過去の情報と今回の申請内容に違いはないか。もし資料が足りなかった場合、ほかに何を使って説明できるのか。ここまで整理して初めて、「自分の申請をどのように組み立てるか」が見えてきます。
ビザ申請では、単に必要書類を集めてフォームを埋めるのではなく、申請する人の状況と、提出する情報・資料が一つのストーリーとしてつながっていることが重要です。
申請を始める前に一度立ち止まり、「この条件は何を提出すれば証明できるだろう?」と考えてみるだけでも、その後の準備は大きく変わってきます。
ポイントまとめ
- ビザの条件を満たしているかだけでなく、何で証明するのかまで確認する
- 書類は「必要だから集める」のではなく、何を証明するものなのかを考える
- 過去の職歴、住所、滞在歴、ビザ申請などの情報を早めに整理する
- 以前の申請内容と今回の情報に違いがある場合、その理由を説明できるようにしておく
- 申請を始める前に、「自分は申請できるか」だけでなく「どうやって申請内容を証明するか」まで考える
次回予告
次回は、ビザ申請で必要となる「書類」について、単に集めればよいわけではない理由をもう少し詳しく見ていきます。
三浦サリー / Power In Numbers Ltd.
ニュージーランド・オークランドで生まれ育ち、高校受験を機に日本で3年間生活した経験があります。NZと日本、どちらの国のことも理解しているからこそ、両方の視点から安心してご相談いただけるのが強みです。
2015年に Power In Numbers Ltd. を設立し、ニュージーランド政府公認イミグレーションアドバイザーとして活動。リーズナブルで質の高いサポートを提供し、移住を希望される方々のライフプランや現地での暮らしに寄り添ったアドバイスを行っています。
プライベートでは子育てをしながら、多様なライフスタイルに触れてきた経験を活かし、家族での移住を考える方から単身で挑戦される方まで、幅広いご相談に親身に対応しています。
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Immigration Adviser #201700259


