岩手の銘酒「南部美人」を醸す五代目蔵元 久慈浩介氏による日本酒コラム【日本酒とチーズの組み合わせ】

岩手の銘酒「南部美人」を醸す五代目蔵元 久慈浩介氏による日本酒コラム GOURMET

日本酒をもっと身近に、もっと楽しく。
このコラムでは、日本酒の魅力や楽しみ方、日本酒造りの背景などを、酒造りの現場からお届けします。
今回は、日本酒とチーズの組み合わせについて語っていただきます。

酒樽

日本酒といえば、お寿司、お刺身、焼き魚。皆さんも、日本酒に合う料理として思い浮かべるのではないでしょうか。

もちろん、これらの日本食は日本酒と最高の相性を持っています。

しかし、日本食以外にも日本酒と相性の良い食材は数多くあります。例えばキャビアには、日本酒の透明な瓶内二次発酵によるスパークリング日本酒が抜群に合いますし、牡蠣には辛口の吟醸酒が驚くほどよく合います。そんな中、日本酒と合わせるイメージが少ないものの一つが「チーズ」です。「チーズには赤ワインでしょう」と思う方も多いと思います。もちろん、それは間違いのないペアリングです。しかし近年では、チーズと日本酒の組み合わせも大きな注目を集めています。

フランスでは、私の友人であるソムリエがチーズに日本酒を合わせ、現地でも高い評価を受けています。実際にこのペアリングを体験すると、その相性の良さは予想をはるかに超える素晴らしいものです。

では、なぜチーズと日本酒は相性が良いのでしょうか。
その理由は、「旨味の相乗効果」にあります。例えば、鰹節だけで取った出汁に昆布出汁を加えると、旨味は単純に2倍になるのではなく、アミノ酸同士の相乗効果によって何倍にも膨らみます。同じことが、チーズと日本酒の組み合わせでも起こっています。

ご存じの通り、日本酒には旨味成分であるアミノ酸が非常に多く含まれており、世界のアルコール類の中でも特に豊富だと言われています。まるで「アミノ酸を飲んでいる」と言ってもよいほど、日本酒は旨味を持つお酒なのです。そしてチーズですが、日本でよく食べられるプロセスチーズは、すっきりとしていて食べやすい反面、旨味は少なめです。しかし世界のチーズは、アミノ酸を主体とした旨味の塊です。さらに日本酒と同じ発酵食品でもありますので、そういう意味でも相性は良いのです。

日本酒 × チーズ マリアージュ例

①辛口タイプ
 → モッツァレラチーズ
②大吟醸
 → 香りのあるクリームチーズ
③純米酒
 → チェダーチーズ
④貴醸酒・全麹(ぜんこうじ)酒・熟成古酒
 → ゴルゴンゾーラなど青カビ系チーズ

日本酒 × チーズ マリアージュ例

では、どのようにチーズと日本酒を合わせるのか。これがなかなか難しいのですが、すっきりした辛口タイプには、同じくすっきりしたモッツァレラチーズなどがよく合います。クリームチーズのように少し香りがあるタイプは、日本酒でも大吟醸などと合わせると相性が良いです。

純米酒のような濃くて食中酒として人気のお酒には、旨味も豊富に含まれていますし、酸の高いお酒もあるので、チェダーチーズなどとは相性抜群です。そして一番難しいのは、青カビ系のゴルゴンゾーラなどです。しかし青カビ系のチーズは、貴醸酒※1全麹(ぜんこうじ)酒※2、色が濃くついて熟成した古酒などと合わせると、最高に相性が良くなります。これはゴルゴンゾーラにはちみつをかけて食べることからもわかる通り、日本酒の中でも甘みの強いお酒や熟成したものとは、とても相性が良いのです。

ぜひ皆さんも、日本酒とチーズの相性を試してみてくださいね。

※1 貴醸酒:仕込み水の一部に日本酒を使って造る、甘みとコクの強い日本酒
※2 全麹酒:米麹のみで造られた、旨味の強い個性的な日本酒

岩手の地酒「南部美人」五代目蔵元 久慈浩介
久慈 浩介(くじ こうすけ)

岩手の地酒「南部美人」五代目蔵元。東京農業大学客員教授。岩手県酒造組合会長。「世界中、日本酒で乾杯」を目標に、1997年から世界へ日本の伝統文化である日本酒を輸出。IWC2017※ では世界一「チャンピオン・サケ」受賞。

※IWC(International Wine Challenge)
イギリスで開催される世界最大級のワインコンペティション。日本酒部門もあり、最高評価の日本酒には「チャンピオン・サケ」が授与される。

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