居住ビザを持つ外国人投資家、NZの住宅を購入できるように
政府は、投資家向け永住ビザ(Active Investor Plus Visa、通称「ゴールデンビザ」)を持つ富裕層の外国人に、国内で住宅を1軒購入または建設することを認めると発表した。これは外国人による住宅購入を原則禁止してきた従来方針の大きな転換となる。ただし、最低価格は500万ドルと定められ、対象は全住宅の1%未満に限定される。政府によると、この変更は外国人の住宅所有解禁ではなく、経済成長に資する投資を呼び込むことが目的で、投機目的の購入は防ぐ方針だ。現在この「ゴールデンビザ」には約308件の申請があり、総額18億ドル以上の投資が見込まれる。申請者は主に米国、中国、香港出身者だという。高額物件の需要増が全体の価格を押し上げ、一般国民の住宅取得を難しくするという批判もあるが、外国資本の受け入れを進めつつ、国内不動産市場の安定を保とうとする妥協策といえる。
マオリ議員、タイム誌「世界で最も影響力のある新星」の一人に選出
マオリ党の国会議員ハナ=ラウィティ・マイピ=クラーク(Hana-Rawhiti Maipi-Clarke)氏が、米誌『タイム』の「世界で最も影響力のある新星(The world’s most influential rising stars)」の一人に選ばれた。マイピ=クラーク氏は2023年、当時21歳で国会議員に当選、ニュージーランド史上最年少の国会議員となり、翌2024年には条約原則法案(Treaty Principles Bill)の採決時にハカを披露して世界的な注目を集めた。『タイム』誌は、マイピ=クラーク氏がマオリ語や文化を守ってきた先祖の精神を受け継いでいると紹介。地域社会に貢献する若い政治家をたたえる「One Young World Politician of the Year」にも選ばれており、若い世代や先住民の権利を守る活動が高く評価されている。今年は歌手スタン・ウォーカー(Stan Walker)のミュージックビデオに出演するなど、文化面でも注目されている。
OCR 50ベーシスポイント引き下げ、2.5%に
10月8日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、政策金利(OCR)を0.5%引き下げ、2.5%とした。中期的にインフレ率(年2.7%)を目標の2%付近に安定させるため、今後も必要に応じて追加利下げを行う可能性があると発表した。NZドルは発表直後に対米ドルで0.5セント下落。利下げを受けて、NZ株式市場は上昇、S&P/NZX50指数は過去最高値に接近し、金利市場では2年物スワップレートが低下した。「住宅ローンや企業への負担軽減につながる」「消費者の支出意欲を回復させ、需要を刺激する」と利下げを歓迎する動きもあるが、「ニュージーランド経済のダメージを引き起こしたラクソン首相の責任」と批判する声もある。経済学者ら専門家は「経済を立て直すためのショック療法となることが期待できる」「利下げは予測どおりで、マイナスの影響は小さい」と概ね肯定的に評価している。
最新世論調査:国民党支持率20%台に急落
10月1〜5日に1,000人を対象に実施された最新のTaxpayers’ Union-Curia世論調査によると、国民党(National Party)の支持率は3.5ポイント下落し29.6%になった。一方、NZファースト党(New Zealand First)は2.5ポイント上昇して10.6%に。最大野党の労働党(Labour Party)は31.2%で首位を維持しているが、前月比2.6ポイント減となった。緑の党(Green Party)は12%、アクト党(Act)は6.6%、マオリ党(Te Pāti Māori)は4.4%だった。首相支持率では、労働党のヒプキンス(Hipkins)党首が20.9%で国民党のラクソン(Luxon)首相(19.8%)を逆転。次いでNZファースト党のピーターズ氏(9.9%)、グリーン党のスウォーブリック氏(6.3%)、アクト党のシーモア氏(4%)が続いた。有権者の最大の関心事は「生活費の高騰」(26.4%)で、次いで「経済全般」(17.4%)、「医療」(10.3%)だった。
社会
逃亡中のトム・フィリップス死亡:警官が射殺、子どもたちは無事発見
約4年間逃亡を続けていたワイカト地方マロコパ(Marokopa)出身の男性トム・フィリップス(Tom Phillips)が、9月8日未明、ピオピオ(Piopio)で警察との銃撃戦の末に射殺された。警察官1名が頭部を撃たれ重傷を負ったが、子ども3人は同日中に全員保護された。フィリップスは2021年に3人の子どもを連れて失踪し、潜伏生活中に銀行強盗や車両盗難などを繰り返したため、全国的な捜索対象となっていた。子どもたちと森の中の粗末なキャンプで長期間生活していたとみられる。警察はキャンプ地の捜索を行い、共犯者の存在を調べている。地元住民の間では長期に及んだ捜索中の警察の強硬な対応に不満の声が多く、今も警察への不信感が根強く残っている。事件を題材としたドキュメンタリー制作をめぐって家族が放送差し止めを求め、裁判所が報道制限命令を出すなど、社会的議論を呼んでいる。
オークランドでパレスチナ支持デモが2万人集結、ガザ停戦を求める
9月13日にオークランド中心部で約2万人が参加する大規模な親パレスチナデモが行われた。デモ参加者の家族連れや学生、活動家らはアオテア・スクエアに集結し「即時停戦を」「占領を終わらせろ」と書かれたプラカードを掲げてクイーン・ストリートを行進。途中、デスティニー教会(Destiny Church)などの反対派グループと衝突しそうになる場面もあったが、警察が間に入り大きな混乱はなかった。デモはヴィクトリア・パークで集会となり、ガザでの即時無条件の停戦、封鎖解除による人道支援の確保、ニュージーランド政府による外交・経済的制裁の実施という3つの要求が繰り返し訴えられた。主催団体「Aotearoa for Palestine」のナディーン・モルタハ(Nadine Mortaja)氏は、「これは歴史的な抗議であり、全国から人々が集まった」と述べ、今後も活動を続ける意向を示した。
大腸がん検診の年齢、58歳に引き下げ
政府は、大腸がんの無料検診の開始年齢を現行の60歳から58歳に引き下げると発表した。この10月からノースランド、オークランド、南島で実施され、2026年3月に北島全域へ拡大される予定。この変更により、初年度だけで約122,000人が新たに対象となり、今後25年間で約771件のがん発症を防ぎ、566人の命を救えると見込まれている。新たに、大腸がんの症状が疑われる人のための在宅便潜血検査「FIT for Symptomatic」も導入が進められており、これにより不要な内視鏡検査を3〜6割削減、待ち時間の短縮や早期診断が期待されている。大腸がんは、ニュージーランド人のがん死亡原因で2番目に多いがんであり、政府は今回の変更を「多くの命を救う重要な一歩」と強調している。2017年に大腸がん検診プログラム開始以降、約253万件の家庭用検査キットが配布され、3,000件近いがんが発見されている。
麻しん感染者ノースランドで増加中
ニュージーランド北部ノースランド地方で麻しん(はしか、measles)の感染拡大が続いている。10月7日現在、ノースランドで10件、クイーンズタウンで1件の感染が報告された。1969年以前生まれの多くは自然感染により免疫を持つが、それ以降の世代でMMRワクチンを2回接種していない人は十分な免疫がない可能性がある。ノースランドでは0〜25歳の完全接種率が63%にとどまり、集団免疫に必要な95%には達していない。未接種の子どもが感染者に接触した場合、重症化の危険がある。Health NZは、ノースランド各地の臨時会場でワクチン接種を受けるよう呼びかけている。予約や登録は不要で、薬局や一般のGP診療所などで摂取でき、無料の相談窓口(0800 28 29 26)やオンライン予約も利用可能。18歳未満および医療費助成対象者には無料で提供され、妊婦や免疫不全者を除き追加接種も安全とされる。
生活
イケアのニュージーランド初店舗12月4日シルビアパークにオープン
スウェーデンの家具大手イケア(Ikea)は、ニュージーランド初となる店舗を12月4日にオークランドのシルビアパークに開業すると発表した。2019年の進出表明から約6年を経ての実現。ラグビー場3面分に相当する店舗には約7,500種類の商品を取り揃え、クリック&コレクト(ネット注文後の店頭受け取り)やEV充電設備、426席のフードコートを備える。環境配慮も徹底しており、太陽光発電で電力の4割を賄うほか、雨水利用、LED照明、中古家具の買い取り制度も導入される。求人には25,000件の応募があったが、採用予定は500人だという。開店発表には首相のクリストファー・ラクソン(Christopher Luxon)氏も出席し、外資投資促進の象徴として歓迎した。NZポストやメインフレートとも提携し、全国29カ所の受け取り拠点を整備する予定。同店舗は世界で最もスウェーデン本国から遠い拠点となる。
オークランドの免税店DFSギャラリア閉店
9月15日、オークランド中心部の高級免税店「T Galleria by DFS」が閉店し、約30年にわたるオセアニアでの営業に幕を下ろした。同社は今年7月に9月閉店を発表していた。閉店直前には「感謝セール」として大規模な値下げが行われ、ワインや化粧品、ファッションブランド商品などが最大90%引きで販売された。通常約40ドルのピノ・ノワールが4.40ドルで提供されるなどしたため、店舗の棚は早い段階で空になったという。運営元のDFSグループ(Moet Hennessy Louis Vuitton傘下)は、オークランド、シドニー、クイーンズタウンの各店舗を閉鎖し、オセアニア市場から撤退する方針を表明。「世界的な事業最適化の一環としての決定であり、厳しい経済環境を反映したもの」と説明した。DFSは世界主要空港や都市部で高級ブランドを展開しており、今回の撤退に際し従業員への支援と感謝の意を表している。
食品価格5%上昇:牛乳、チーズ、バターが牽引
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2025年8月までの1年間で食料価格は全体で5%上昇した。主因は「食料雑貨」カテゴリーの値上がりで、同カテゴリーは年4.7%上昇し、特に乳製品が大きく影響した。2リットルの牛乳は前年比16.3%高の4.72ドル、1kgのチーズは26.2%高の12.89ドル、500gのバターは31.8%高の8.58ドルとなった。肉類・魚介類も年8.1%上昇し、牛ひき肉は1kgあたり22.53ドルと1年で3.40ドル値上がりした。ヨーロッパや米国への輸出需要が価格を押し上げている。果物・野菜も年8.9%上昇し、キャベツは前年同月比85.5%高と最大の上昇率を記録した一方、キウイフルーツは9.3%下落した。外食や惣菜は2.4%、清涼飲料は3.9%上昇。非食料分野では家賃が2.1%上昇し、電気料金11.4%、ガス14.5%とエネルギー価格も上昇。対照的にガソリンは2.4%、ディーゼルは4%下落した。
ピーター・ジャクソン所有のウェリントンの人気カフェ閉店へ
ウェリントンの人気カフェ「チョコレート・フィッシュ・カフェ(The Chocolate Fish Cafe)」が2026年1月31日に閉店することになり、経営者のジョンとペニー・ペニントン夫妻は深い悲しみに包まれている。同カフェはシェリーベイ(Shelly Bay)で15年間営業してきたが、シェリーベイの再開発計画に伴い、家主であるウィングナットPM(WingNut PM)社がリース終了を決めた。ウィングナットPM社は映画監督ピーター・ジャクソン卿の不動産会社で、同カフェが入る歴史的建物「潜水艦兵舎(Submarine Barracks)」を全面改装し、地域再生と公共施設整備を目的とする大規模プロジェクトの一環であると説明している。ジャクソンとパートナーのフラン・ウォルシュは2023年に同施設を購入した。ジャクソンとウォルシュは他にウェリントンのミラマー(Miramar)地区での新たな動物病院建設計画も発表している。
芸能・スポーツ
ジャシンダ・アーダーン元首相、ニューヨークで児童書を出版へ
ニュージーランド元首相のジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)氏が、子ども向け絵本『Mum’s Busy Work(アメリカ版タイトル:Mom’s Busy Work)』を出版した。本書は娘ネーヴとの日常をもとにした作品で、「どんなに忙しくても子どもは人生で最も大切な存在」というメッセージが込められているという。絵本には母と子の温かい交流が描かれ、働く母親と子どもの絆を称える内容となっている。挿絵は、クライストチャーチ銃撃事件後の共感的な作品で知られるウェリントンのアーティスト、ルビー・ジョーンズ(Ruby Jones)が担当。ニュージーランド国内版は9月25日に発売され、売上1冊につき3ドルが慈善団体「カインドネス・コレクティブ」に寄付される。アーダーン氏は、2023年の退任時に「娘と過ごす時間を大切にしたい」と語っており、本作はその思いを反映したものとなっている。アーダーン氏は2023年に首相を退任後、ハーバード大学でフェローを務めている。
世界パラ陸上競技選手権:NZ選手が健闘
9月27日から10月5日にかけてインドのニューデリーで行われた世界パラ陸上選手権で、ニュージーランドは計7個のメダルを獲得した。ウィル・ステッドマン(Will Stedman)は男子走り幅跳びT36で銀メダル、男子400m T36で銅メダルを獲得した。アナ・グリマルディ(Anna Grimaldi)は女子200m T47で銅メダルを獲得。リサ・アダムス(Lisa Adams)はF37砲丸投げで金メダルを、ダニエル・アッチソン(Danielle Aitchison)はT36 100mと200mで金メダル2個を獲得。ホリー・ロビンソン(Holly Robinson)はF46砲丸投げで銅メダルを獲得した。総合でニュージーランドは金3、銀1、銅3のメダル計7個を獲得し、国別順位は21位となった。同大会で日本勢は佐藤友祈が男子1500m T52で金メダルを獲得するなど活躍。総合では金4、銀8、銅2の計14個のメダルを獲得し、国別順位は16位だった。
NRL:ウォリアーズ、NRL州選手権優勝
ニュージーランドのラグビーチーム・ウォリアーズ(Warriors)が、ニューサウスウェールズ杯(New South Wales Cup)優勝に続き、NRL州選手権(NRL State Championship)決勝でも圧勝し、歴史的な2冠を達成した。試合はシドニーのアコースタジアムで行われ、ウォリアーズはクイーンズランド代表バーレイ・ベアーズ(Burleigh Bears)を相手に9トライを奪い、50対20で勝利。出場17人のうち13人がNRL出場経験者という実力差を活かし、序盤から試合を支配した。ハーフバックのタナ・ボイド(Tanah Boyd)が攻撃の中心となり前半を32対6で折り返し、後半も追加点を重ねた。終盤にバーレイが2トライを返したものの反撃は及ばず、ウォリアーズが50点を挙げて試合を締めくくった。この勝利で、ウォリアーズのリザーブチームは今季23勝1分3敗という圧倒的な成績でシーズンを終えた。
ラグビーチャンピオンシップ:オールブラックス王座を逃す
ニュージーランド代表オールブラックス(All Blacks)は、パースでのオーストラリア戦を28対14で制し、ラグビーチャンピオンシップ(Rugby Championship)を勝利で締めくくった。しかし、南アフリカ代表スプリングボクス(Springboks)がアルゼンチンに29対27で勝利したため、得失点差で王座を逃した。スコット・バレット(Scott Barrett)主将はアルゼンチン戦での歴史的敗北や南ア戦での大敗が痛い教訓になったと認め、スコット・ロバートソン(Scott Robertson)監督も試合中の小さなミスが大差につながることを学んだと語った。オールブラックスはブレディスローカップ(Bledisloe Cup)を守り、イーデンパーク不敗記録も維持したが、2026年は南ア遠征のため大会が開催されず、次の機会は再来年となる。チームは課題を抱えつつも、粘り強さと結束を取り戻した形でシーズンを終えた。