ニュージーランドニュース「手術の順番に人種を考慮」ほか

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ヒプキンス首相が訪中

ヒプキンス首相は、先月25日から30日にかけて中国を訪問し、習近平国家主席、李強国務院総理、趙楽基全人代議長を含む中国指導部と会談した。首相就任後初となる今回の訪中には、29人の産業界の代表も随行し、北京、天津、上海でニュージーランド産品や観光・教育のプロモーションを行った。中国は最大の貿易相手国であり、輸出全体の約4分の1を占める。また、コロナ前の来訪者は豪州に次いで多かった。中国に対しては近年、安全保障やセキュリティをめぐって中国の脅威を感じさせる問題がいくつもあり、今年3月の外相会談でも不信感は拭えなかった。今回の訪中は、冷え切った両国関係を修復し、経済関係を優先する姿勢を示すものとみられている。

手術の順番に人種を考慮

緊急でない手術の順番の決定に人種を加えた新基準がオークランドで導入された。これは臨床上の必要性、待機期間の長さ、地理的条件、人種、困窮度の5要件に基づいて優先順位を決める仕組み。人種要件ではマオリとパシフィカが白人やアジア人より優先される。マオリとパシフィカは待機日数が200日以上で手術の順番リストに登載されるが、それ以外の人種は250日以上とする運用を保健省が指導したという。国民党やACT党は、人種に関係なく医療上の要件だけで順位を決めるべきで、特定の人種を優先するのは不公平だと強く批判した。ヒプキンス首相は、マオリやパシフィカは歴史的に医療へのアクセスが悪く支援が必要でそれが公平だと説明した。

人権の充足度で国を評価

世界各国の人権の充足状況を調査するヒューマンライツ・メジャーメント・イニシアチブが発表した年次報告書によれば、ニュージーランドの生活の問題点が浮き彫りになった。特に食糧の充足度はOECD諸国で下から2番目とされ、公正な収入の権利でも下位となった。この評価は食料自給率が高く、失業率が低いこの国の特徴とは異なる印象があるが、それは「食べる権利」、「働く権利」という人権の側面からの評価になるためだ。高評価だったのは、教育を受ける権利(4位)や健康への権利(5位)。ただし、質の高い教育を受ける権利は不十分だとしている。一方、日本の評価は、食の人権が極めて高く、働く人権がとても低い。

来訪者コロナ前の7割に

今年4月の海外からの来訪者は22万人で、コロナ前(2019年4月)の72%まで回復した。来訪者の国別内訳では、豪州が49%、米国が9%、中国が5%、英国とインドが各4%となっている。コロナ前は12%を占めていた中国を除き、他の4カ国は従前の構成比に戻っている。また、ニュージーランド国籍または永住者の往来もコロナ前の86%まで回復した。国別の内訳を見ると、豪州、米国、フィジー、中国に次いで日本が5200人で5位に入っており、永住邦人の往来が活発になったことを示している。観光シーズンを迎える今年の10月以降は、コロナ前の人数もしくはそれ以上の来訪者が期待できるが、その鍵となるのは中国からの来訪者数の回復だ。

Text:Kazzy Matsuzaki 

2023年7月号掲載