進むマオリ共同統治に賛否

New Zealand News!NZ NEWS

2022年11月号掲載

News in Focus

 プロモートされるマオリ語

公共機関や施設の名称のマオリ語化が進んでいる。震災復興が進むクライストチャーチで新設される大型公共施設のほとんどにマオリ名が付けられている。テューランガは中央図書館で、パラキオレはスポーツ&レクリエーションセンター、テ・カハは多目的アリーナだ。そこには、マオリ語の幼児教育施設「コハンガレオ」のように元々マオリにゆかりがある事例を超えて、マオリ語名を広く一般化しようという意図が読み取れる。国の機関でもNZTAと呼ばれていた国土交通局がワカ・コタヒと呼称されるようになったり、公式スピーチ冒頭のマオリ語挨拶は必須になりつつある。こうした傾向が近年顕著になってきている。

抑圧と復権の歴史 

1000年以上前にこの島に渡ったマオリは、部族社会を形成して数を増やし、ヨーロッパ人が到来した頃の人口は10万人を数えたという。白人がもたらした銃は部族抗争を激化させ、麻疹やインフルエンザなど未知の伝染病とともにマオリの人口を削いだ。やむなく英国君主を庇護者として英国の植民地となるが、族長らがサインをしたワイタンギ条約の解釈には今に続く争いがある。以降、1970年代に復権運動が広がりを見せるまで、マオリの権利や文化が抑圧されていたのは事実であり、来年から小学校で必修となる歴史教育でも扱われることになる。それと共に近年の傾向は復権の進展であり、良いことなのだと教わることだろう。

専属的権利と普遍的権利

マオリはこの国の先住民であり、国歌がマオリ語で始まるように、マオリ語は手話と共にこの国の公用語に定められている。しかし、公用語であっても共通語ではない。医療や水道事業改革など重要な政策にマオリ共同統治概念が盛り込まれる近年の傾向がマオリ復権の延長なのか、それとも優越なのか、あるいはその境界自体が存在するのかが議論となる。アクト党のシーモア代表やNZファースト党のピーターズ代表は、マオリ共同統治が普遍的な人権と民主主義を揺るがすものだとして反対しており、その正当性を国民投票に問うべきと主張している。かつてドン・ブラッシュが党首の時代に、マオリ選挙区の廃止を主張した国民党は、批判を留保している。

マオリの人口、有権者数、言語について:Stats NZ

Text:Kazzy Matsuzaki