【女子ラグビーW杯日本代表戦】惜しくも敗退、今回得られたものと今後の課題とは?

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写真:何度も追いつかれるも、粘り強くリードしたイタリアが勝利し、トーナメントへ。

惜しくも敗退、今回得られたものと今後の課題とは?

ラグビーの聖地、イーデンパークにて優勝候補と目されるニュージーランド代表通称”ブラックファーンズ”とのテストマッチを終え、結果は95-12と大差で負けてしまい、力の差や課題を意識させられたサクラフィフティーン。W杯開幕後、プールBでの予選ではファンガレー会場にてカナダに41−5で負け、ここでもやりたいことを封じ込まれる形に。アメリカ戦では試合の行方が拮抗し、勝てるチャンスもあったものの決めきれず30-17という逆転負けの形で試合終了。予選最終戦であるイタリア戦を取材するため、GekkanNZスタッフがワイタケレスタジアムへ向かった。

この日は日本対イタリア、カナダ対アメリカ、そしてイングランド対南アフリカという盛りだくさんの三試合が行われ、W杯予選結果が出そろう。そのため取材陣も応援団も各国からやってきて熱い試合になることを期待し会場は熱気に包まれた。

さっそく日本対イタリア戦が始まる。両チーム、力が拮抗している印象だったが先制はイタリア。その後日本も追いつき、再びイタリアがリードするも8−5の僅差で後半へ。再び追いつきながらも、お互いに押し合う中、もう一度イタリアがリード。そして日本は反則から相手にチャンスを与えてしまい、さらにダメ押しで加点されてしまう。諦めずに果敢に戦うものの、逆転することができず21-8で予選プールでの敗退が決定。

今大会の印象から、今後のサクラフィフティーンの課題としては、ミスや反則などを減らすことで相手へのスキを与えないようにすること、また相手のミスなどで攻撃へのチャンスをつかんだ際に発揮する瞬発力やスピードも強化したいというところだ。カナダやイングランド、ニュージーランドなどの予選一位通過国はミスが少なく守りが固い印象がある。特にニュージーランドは攻撃側に回ったときのスピードが早く、攻撃へ持っていくためにパワフルなあたりにより相手を揺さぶり、ペースを掴ませないようなスタイルがあるのではないか。イングランドやプールBで圧倒的な力を見せたカナダも、固い守りと相手のミスを見逃さず点につなげる確実さを持っている印象だ。W杯ではさまざまな国のプレーを見ることができ、一段上のチームたちから学ぶことが非常に多いが、こういったところを今後伸ばしていけたらと思う。

自身もニュージーランドにラグビー留学し、プロラグビー選手としてプレーしながらときに通訳もして日本のラグビーに貢献し、現在ニュージーランドのヘイスティングスで高校生へのラグビーコーチングをする名富さんは語る。「両者拮抗しないつまらない試合でも、勝ちは勝ち、勝ったほうが絶対に良い。力はついてきているはずですし、もっと国際試合などで経験を積み、後半でしっかりとした試合運びをして勝ちに繋げる判断力や力をつけていければ。ブラックファーンズはセブンズでの経験のあるスタミナがあって足の速い選手も入れてきている。日本もセブンズの経験や国際試合の場数を踏んでいる選手たちを育成してアタックを強化していければ良い影響があるのではないでしょうか」

確かにニュージーランドで暮らしていると、このニュージーランド社会そのものが多国籍社会であり、さまざまなルーツの子どもたちが一緒にスポーツに取り組んでいる様を見ると、すでに日常が国際的と感じる。ラグビーで言えばもちろん体格は日本の平均より大きく、常にそういった相手と戦うのが普通となってくる。最初は言葉も思うように通じない中でラグビー留学してきた若い選手たちは、国際的かつ体格的に不利な環境でフィジカル面だけでなく、精神的にもタフにならざるを得ない。そんな状況を乗り越え、学生のラグビー界で注目を集める若い日本人選手たちも出てきている。

試合後、レスリー監督は悔しさに涙をにじませつつも「彼女らをベスト8へ連れて行きたかった。負けてしまったがここまで来たことを誇りに思ってほしい」と責任を重く受け止めながらも選手を讃えていた。レスリー監督になってから、彼女の取り組みで国際試合のテストマッチが格段に増え、サクラフィフティーンも力をつけてきていただけに、一段と悔しかっただろう。

ベテランの齊藤 聖奈選手にも、今後日本代表を目指す若い選手へのアドバイス、特に海外での経験について聞いてみたところ「そうですね、やはり国内とは体の大きさも違いますし、どんどん海外へ羽ばたいて経験を積んでほしいと思います」という。

最終的には国際試合、特にワールドカップなどは一発勝負で勝利が必要な為、国際的な経験の場数を踏んでいくのは必須だと言えよう。

さて、W杯はいよいよクォーターファイナルズ(ベスト8トーナメント)へ進む。どの国も一枚上手のプレーをし、各国のサポーターも駆けつけ、お国柄を表すユニークな応援で選手を励ます。ニュージーランド開催2021(2022)RWC、大会の行方はまだまだ目が離せない!試合日程は以下、引き続きラグビーを楽しもう!

  • 10月29日(土)フランス対イタリア16:30(NZ時間)ファンガレー
    熱狂的サポーターの元気な応援を背負い、粘り強く戦うイタリアでしたが、今大会で優勝候補とも言われていたフランスを破ることができるのか? 
  • 10月29日(土)ニュージーランド対ウェールズ19:30(NZ時間)ファンガレー
    ミスが少なく、スピードあるアタックで強さに安定感のあるニュージーランドは決勝トーナメント第一戦はウェールズと。
  • 10月30日(日)イングランド対オーストラリア13:30(NZ時間)ワイタケレ
    固い守りを感じさせるイングランドはオーストラリアとあたります。
  • 10月30日(日)カナダ対アメリカ16:30(NZ時間)ワイタケレ
    プールBで圧倒的強さを見せたカナダは、予選最終戦であたったアメリカと再び対決することに!
攻めるイタリアに食らいつく日本代表。
攻めるイタリアに食らいつく日本代表。
緊張感のある前半、日本も果敢に相手陣へ攻め込む。
緊張感のある前半、日本も果敢に相手陣へ攻め込む。
逆転を狙い日本も果敢に攻めるが勝利には届かず。
逆転を狙い日本も果敢に攻めるが勝利には届かず。
なんとかトライを決めるアメリカ。
なんとかトライを決めるアメリカ。
しかしカナダのディフェンスも凄まじく、逆転することができない。
しかしカナダのディフェンスも凄まじく、逆転することができない。
諦めずに戦うも、カナダに破れるアメリカ。しかし得失点差で決勝トーナメント出場へ。ところが、運命のいたずらか、そこで再びカナダと対戦することに!
諦めずに戦うも、カナダに破れるアメリカ。しかし得失点差で決勝トーナメント出場へ。ところが、運命のいたずらか、そこで再びカナダと対戦することに!
イングランドの固い守りに攻めあぐねる南アフリカ。
イングランドの固い守りに攻めあぐねる南アフリカ。
諦めず戦い続けるも、イングランドによりこの試合は完封されてしまう南アフリカ。
諦めず戦い続けるも、イングランドによりこの試合は完封されてしまう南アフリカ。

取材・文 GekkanNZ