労働党、医療制度の強化計画を発表
労働党(Labour Party)は、新たなキャピタルゲイン税の導入計画を明らかにし、その税収を全額医療部門に投入することを発表した。労働党首のクリス・ヒプキンス(Chris Hipkins)氏は、現行の税制が雇用創出者よりも不動産投機を優遇していると批判。新たな税の導入により投機家から公平な負担を求めるとしている。新たに導入されるキャピタルゲイン税は商業用不動産または居住用不動産の売却益にのみ適用され、自己の居住用不動産、KiwiSaver、株式、事業資産、相続財産、個人資産はすべて非課税となる。同時に、国民全員に「メディカード(Medicard)」を発行し、カード保持者に年3回の医師診察提供。これにより、高額な医療費のために受診をためらうことがなくなるとされている。経済分析機関の専門家は、この税の範囲が非常に限定的であるため、税収効果は小さい可能性を指摘している。
NZ人がウクライナ功労勲章を授与:シーモア氏ほか2名
ニュージーランド副首相のデイビッド・シーモア(David Seymour)氏を含む3名のニュージーランド人が、ウクライナ政府から国家勲章を授与された。シーモア氏とウクライナ支援活動家ケイト・トゥルスカ(Kate Turska)氏は、ウクライナの主権と領土保全の支援、慈善活動、およびウクライナ国の世界的な促進に授与される「功労勲章三等(Order of Merit, Third Class)」を受賞。また、元国防大臣のロン・マーク(Ron Mark)氏は「アンバー・ハート(Amber Heart)」の栄誉を授与された。シーモア氏は長年にわたり戦争終結を訴えており、資金集めを組織したり、ウクライナ系ニュージーランド人家族に避難所を与えるよう嘆願書に書いたりしてきた。シーモア氏は、この勲章はウクライナのために資金調達や支援活動を行ったニュージーランド人全体への栄誉だと認識していると述べている。
ラクソン首相、アジア太平洋地域との貿易関係強化
ニュージーランド首相のクリストファー・ラクソン(Christopher Luxon)氏は、10月27日にマレーシアの首都クアラルンプールで開催された東アジアサミット(EAS)に出席、あわせて東南アジア諸国連合(ASEAN)・ニュージーランド首脳会議にも臨み、ASEANとニュージーランド間の関係を「包括的戦略パートナーシップ(CSP)」へ格上げする合意を発表した。この枠組みでは、デジタル・グリーン経済、クリーンエネルギー、サプライチェーン強靭化、サイバー・非伝統的安全保障への協力が柱となっている。続いて韓国・慶州で行われたAPEC首脳会議の場で、ラクソン首相はドナルド・トランプ(Donald Trump)米国大統領と一対一で初めて対面会談を行った。ASEAN、APECの両サミットは世界経済の60~70%を占めており、ニュージーランドにとっても極めて重要である。
社会
ストライキ:看護師、教師、消防士、刑務官など10万人が参加
10月23日にニュージーランド全土で、推定10万人の公務員が参加する大規模ストライキが実施された。医師、看護師、教師、消防士、刑務官など多岐にわたる職種が参加し、オークランドでは約1万人がクイーン・ストリートを行進した。ウェリントンやカンタベリーなど一部地域では、悪天候による停電などの緊急事態により医療スタッフがストを中断して現場に戻る事態も発生した。このストライキは、政府が賃上げをインフレ率以下に抑え、公共サービスの資源を削減していることへの抗議として行われた。ニュージーランド労働組合評議会(NZ Council of Trade Unions)の会長ワグスタッフ(Wagstaff)氏は「政府は専門職を長期的に低賃金契約に縛り付けようとしている」と批判。一方、公共サービス大臣のジュディス・コリンズ(Judith Collins)氏は「政治的動機による不当な行動」と非難した。
サウスランドの嵐:強風警報、停電、断水が続く
10月23日にニュージーランド南部が暴風に見舞われ、各自治体が非常事態宣言を発令する事態となった。最大風速150km/hに達する強風により、住宅の屋根が飛び、倒木や停電、水道・通信障害が発生。一時は全国で100便以上の航空便が欠航した。南部全域で数万軒が停電し、特に被害の深刻だったサウスランド(Southland)、クルーサ(Clutha)地区では、非常事態が解除されたあとも17,000世帯以上の停電が継続した。ミルフォード・サウンドへの国道94号などの主要道路は土砂崩れで通行止めになり、南島の一部集落が孤立状態に。燃料供給も滞り、地域によってはガソリン不足が報告されている。携帯電話基地局約90基も停止しており、通信が途絶した地域もある。森林や公園、農業・畜産に対する被害も多数報告されており、地域社会・インフラ・農業・暮らしすべてにわたって深刻な影響を残した。
大手スーパー、クライストチャーチで顔認識システムを試験運用
食品スーパーマーケットNew World、Pak’nSaveを展開する食品小売大手のFoodstuffs South Islandは、クライストチャーチの3店舗(New World St Martins、Pak’nSave Papanui、Pak’nSave Moorhouse)で顔認識システムの3カ月間の試験導入を開始する。このシステムでは、入店者の顔の画像を記録し、暴力的な行為や脅迫的な振る舞いがあった人物を専門チームが審査、監視リストに登録する。以後の入店者の画像をこのリストと比較し、一致が検出された場合はアラートを発し、監視、警察への連絡、隊店要請などの対応を取るもの。18歳未満や社会的弱者の画像は監視リストには登録されず、リストに一致しなかった場合は画像は即座に削除される。同社は、敷地内への立ち入りを禁止した後も悪質な迷惑行為が繰り返されるケースが散見されたため、この試験運用を通じて被害を防ぐことを目指している。
自殺統計:死亡者数は増加しているが、長期的な自殺率は低下
検死裁判所(Coroners Court)とニュージーランド保健省(Health NZ)の発表した最新の暫定統計によると、ニュージーランドで自傷行為による死亡の疑いのある死亡者数(以下、死亡者数)はわずかに増加しているが、人口あたりの割合でみると減少していることが判明した。2024-25年度の死亡者数は630人で、人口10万人あたり11.0人の割合となり、これは過去16年分の平均と比較して3.1%の減少を示している。性別では、男性の死亡者数が474件(10万人あたり16.2人)で、女性の156件(10万人あたり5.8人)を大きく上回る。民族別にみると、マオリ系男性の自殺率が10万人あたり28.1と最も高く、非マオリ系男性(10万人あたり14.2)の約2倍となっている。政府は、年間予算を既存の2,000万ドルからさらに1,600万ドル増額し、コミュニティ基金の設立、救急部門でのピアサポートの導入などの自殺予防行動計画を発表した。
麻疹の流行:保健省が高リスクを警告
ニュージーランド国内での麻疹(はしか、measles)の感染者が確認され、累計感染者数は10月30日時点で13名、濃厚接触者は約2,100人に上っている。他の既知のケースとの関連が不明の感染例も報告され始め、地域社会での感染が懸念されている。ニュージーランド保健省(Health NZ)は、国内全体でさらなる感染拡大や濃厚接触者の発生リスクが「非常に高い」状態が続いていると指摘している。感染者が発見されたオークランドの高校では、濃厚接触の可能性があるクラスに自宅待機を指示した。麻疹は非常に感染力が強く、ワクチン未接種の集団では1人が12~18人に感染させる可能性がある。麻しんの蔓延を防ぐには、地域社会で95%以上の免疫保有率が必要。保健省は、1歳以降にMMRワクチンを2回接種することで、99%の人が麻しんから保護され、ほとんどの人は無料で接種できると改めて呼びかけている。
生活
NZのパスポート、世界で6番目に「強力なパスポート」
国際調査機関ヘンリー&パートナーズ(Henley & Partners)による最新の「Henley Passport Index」によると、ニュージーランドのパスポートは現在、「最も強力なパスポート」ランキングで世界6位にランクインした。2015年の過去最高順位4位からは低下傾向にあるものの、ビザなしで入国可能な国は186カ国で、これはハンガリー、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデンなどと並ぶ。しかし「オープン度」ではニュージーランドは世界73位にとどまり、ビザなしで入国させる国は61カ国に限られる。この「受け入れの厳しさ」と「出入国の自由度」とのギャップが、今後の順位低下要因になる恐れがある。同様の傾向は他国にも見られ、ビザなしで入国できる国が46カ国にとどまるアメリカは、20年ぶりにトップ10から陥落した。同調査では、前回に引き続きシンガポールが首位、韓国が2位、日本が3位にランクインしている。
NZにMrBeast Burgerのフードトラックが登場、米国以外では初
世界的に人気のYouTuber、MrBeast(本名:Jimmy Donaldson)が手掛けるファストフードブランド「MrBeast Burger」が、ニュージーランドでフードトラック営業を開始する。「MrBeast Burger NZフードトラック」は、オークランドFCのホームゲームやフードフェスティバル、地域イベント、夏の人気スポットに登場予定で、メニューには「Beast Style Burger」「Crispy Chicken Sandwich」「Signature Crinkle Fries」などの定番人気商品が並ぶ。フードトラックで全国を回りつつ、UberEatsや公式サイト経由の販売を行い、オークランのフリーマンズベイにテイクアウト専門店も構える。使用する食材のほぼ全てをニュージーランドで調達しており、キーウィならではの風味を加えているという。MrBeast Burgerは12カ国以上で展開しているが、アメリカ国外でフードトラックを運営するのはニュージーランドが初となる。
レインボーズエンド:8年ぶりに海賊船が復活
ニュージーランド最大のテーマパーク「レインボーズ・エンド(Rainbow’s End)」で、かつて人気を誇った名物アトラクション「海賊船(pirate ship)」が8年ぶりに復活する。初代は1983年に登場し、30年以上にわたってキウイたちに親しまれたが、2017年に老朽化のため惜しまれながら運行を停止。2024年に同アトラクションの再建計画が発表され、新型「パシフィカ号」として2025年に正式オープンした。ドイツのHUSS社が製造を担当し、全長13メートル・重量25トン・建設費約650万〜700万ドルの大型設備となった。最大到達点は高さ約20メートル、同時に50人乗車が可能で、パーク内最大の乗客収容力を誇る。船の真ん中よりも、前後席でより激しい浮遊感を味わえるという。遊園地側は、海賊船の復活は遊園地再投資の第一歩であり、今後も既存アトラクションの改修と新設を進めていくと述べている。
生活費の上昇:今最も打撃を受けているのは
ニュージーランド統計局(Stats NZ)が発表した2025年9月期の生活費データによると、年金受給者や生活保護受給者の生活費上昇率が他の層よりも高く、逆に高所得・高支出世帯では上昇率が最も低いことが明らかになった。過去1年間の全世帯平均の生活費上昇率は2.4%で、消費者物価指数(CPI)の3%を下回った。これは住宅ローン金利支払いが平均15.4%下落したことが主因で、ローンを抱える高支出層では金利減少が功を奏し、年間インフレ率はわずか0.8%にとどまった。一方、年金受給者は3.9%、生活保護受給者は3.4%、最も低支出の世帯は4.0%と、低所得層ほど生活コスト上昇の影響を強く受けている。全体として、富裕層は金利低下で恩恵を受ける一方、低所得層は生活必需費の上昇に苦しむ構図が再び鮮明になっている。住宅ローン金利の低下が続くことで今後は高支出層の負担軽減が進むと見られる。
最も人気のあるペットの名前:「ルナ」が7年連続で首位
New Zealand Companion Animal Register(NZCAR)が発表した最新データによると、「Luna」が7年連続で最も人気のあるペットの名前となった。NZCARには過去1年間で11万匹以上の新しいペットが登録され、現在では140万件超のマイクロチップ登録情報が管理されている。全体で見ると「Bella」が登録数1位(1万4千匹)だが、「Luna」(1万3千匹)が急速に追い上げている。「Luna」に続いて「Milo」と「Charlie」が上位にランクインし、2025年のトップ10には「Daisy」、「Bella」、「Coco」、「Poppy」、「Nala」、「Willow」、「Molly」が入っている。地域別では、ウェストコーストで「Cheeto」、ギズボーンで「Tofu」、ノースランドで「Oreo」といったユニークな名前も人気がある。また、マオリ語由来の名前も増加傾向にあり、「Tui」、「Kiwi」、「Kea」、「Kōwhai」、「Aroha」などが登録された。
芸能・スポーツ
カウンティング・クロウズ、2026年にオセアニアツアー
米国のロックバンド、カウンティング・クロウズ(Counting Crows)が、3年ぶりにニュージーランドで単独公演を行うことを発表した。2026年3月23日にオークランドのKiri Te Kanawa Theatreで公演を行う。同バンドのニュージーランド来訪は、クライストチャーチ、オークランド、ウェリントンを訪れた2023年以来初。今回の公演は、最新作『Butter Miracle, The Complete Sweets!』を記念した世界ツアーの一環で、北米や欧州で高い評価を受けてきたもの。オークランド公演の後はオーストラリアに渡り、アデレード、シドニー、メルボルンでもライブを行う予定だ。カウンティング・クロウズはサンフランシスコ出身で、1990年代に結成。1995年にグラミー賞2部門にノミネートされ、『シュレック2』の主題歌「Accidentally in Love」でアカデミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされた実績を持つ。
UCIパラサイクリング・トラック世界選手権2025:ケンブリッジの選手が金メダルを獲得
10月16日~19日にブラジル・リオデジャネイロで行われたUCIパラサイクリング・トラック世界選手権(UCI Para-Cycling Track World Championships)で、ケンブリッジ出身のデボン・ブリッグス(Devon Briggs)が金メダルを獲得した。ケガのせいでパリ・パラリンピックは出場が叶わなかったが、競技復帰を象徴する大きな勝利となった。大会では他のニュージーランド勢も健闘し、シボーン・テリー(Siobhan Terry)がC5カテゴリーで銅メダルを獲得(今大会3個目)、エマ・フォイ(Emma Foy)とジェシー・ホッジス(Jessie Hodges)はスプリントで5位。ニコール・マレー(Nicole Murray)もC5の10,000mで銅メダル(今大会4個目)を手にした。代表監督のブレンドン・キャメロン(Brendon Cameron)氏は、「4日間すべての選手が自己ベストを更新し、戦術面でも成果が見られた」とチーム全体の成長を称えた。
ティンバースポーツ世界選手権:NZ人ジャック・ジョーダンが優勝
10月24日にイタリアのミラノで開催された世界ティンバースポーツ世界選手権(Timbersports world championships)で、29歳のニュージーランド人のジャック・ジョーダン(Jack Jordan)が初優勝を果たし、ニュージーランド史上3人目の王者となった。ジョーダンは昨年も出場したが惜しくも2位に終わり、今年は劇的な逆転で悲願のタイトルを手にした。大会は6種目で競われ、ジョーダンとオーストラリアのブレイデン・マイヤー(Brayden Meyer)が接戦を繰り広げた。最終種目の「高出力チェーンソー(hot saw)」では先にマイヤーが自己ベストの6.48秒を記録したが、ジョーダンはそれを上回る6.16秒の自己新記録を叩き出し、最終合計で勝利。ジョーダンは「支えてくれた全ての人に感謝している。弱点だった種目を重点的に鍛えたことが勝因だった」と語った。チーム戦ではニュージーランド代表が4位に入選した。
