ニュージーランドニュース「インフレ鈍化のきざし」ほか

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勢力伯仲、政権の行方は

7月に実施された世論調査では、野党側が僅差で有利との結果が出た。ワンニュースの世論調査によれば、労働党と国民党は共に前回調査より支持率を2%減らし、それぞれ33%と35%、つまり国民党の方が僅差で優位という結果になった。国民党の連立相手になるACT党の支持率は12%、労働党と連立するグリーン党の支持率は10%だった。小政党のマオリ党とNZファースト党は共に3%。これらの支持率を議席数に換算すると、国民党とACT党でギリギリ過半数の61議席を占める。労働党とグリーン党は55議席で、マオリ党の4議席を加えても59議席で過半数に届かない。総選挙まで2カ月余り、与野党の勢力は伯仲している。政権の行方はまだ予断を許さない。

EUと自由貿易協定

ヒプキンス首相は先月10日、ブリュッセルのEU(欧州連合)本部でFTA(自由貿易協定)に調印した。FTAが完全に発効すれば、年間輸出収入6億ドル以上に相当する新たな貿易拡大の機会が生まれ、欧州に販売できる牛肉の量は8倍に増加する。また、羊肉の免税対象は毎年3万8千トンずつ拡大される。 果物、ワイン、玉ねぎ、マヌカハニー、工業製品、魚介類、園芸品の関税はFTA発効後に撤廃され、最終的には現在ニュージーランドからEU向けに輸出されている品目の97%が無税となる。EUとの貿易の拡大は、中国への依存を減らす上でも重要だ。この調印の後、ヒプキンス首相はリトアニアで開催されたNATO首脳会議にも参加し、NATOへの連帯を示した。

インフレ鈍化のきざし

昨年末に7.2%だったインフレーション率は、今年3月までの四半期に6.7%になり、6月までの四半期で6%に下がった。インフレ率は依然として高い水準にあるが、価格上昇の圧力は弱まりつつあるとの見方が広がっている。統計局によれば、インフレ率を押し上げている価格上昇の大きな要因となっているのが、食料品価格の高騰であり、食料品を除外したインフレ率は4.6%に落ち着くという。インフレを抑制するために、2021年8月に0.25%だった政策金利は、その後連続して引き上げられ続けて今年5月には5.5%になった。しかし、インフレ鈍化の傾向を読み取った中央銀行は、7月期の利上げを見送り政策金利を5.5%で据え置いた。これ以上の利上げはないと予測されている。

カカポ40年ぶりに本土へ

4羽のカカポがハミルトン南東のサンクチュアリ山保護区に放たれた。このカカポは、ニュージーランド南端のスチュアート島に隣接するコッドフィッシュ島で保護増殖されたもの。同島はプレデターフリーで、DOC(自然保護省)のスタッフのみが常駐する。絶滅したと思われたカカポの生存が1974年にフィヨルドランドで確認されて以降、その繁殖プロジェクトは本土から隔絶した孤島で取り組まれてきた。その結果、同島での生息数は248羽に増え、繁殖エリアが手狭になってきた。このカカポの北島への移送によって、40年ぶりに本土にカカポの生息地ができることになる。3400ヘクタールの保護区はフェンスで囲われていてプレデターフリーになっている。

Text:Kazzy Matsuzaki 

2023年8月号掲載