プレデターフリーの本気度

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絶滅危惧種の回復進む

今年5月、50羽のブラウンキーウィが北島中部のサンクチュアリマウンテンに放された。これは生態系を復元する計画の一環であり、世界で最大規模の広さ3400ヘクタールのサンクチュアリの周囲はフェンスで厳重に囲まれ、キーウィを捕食する動物の侵入を防いでいる。さらに7月には、絶滅危惧種で離島で繁殖管理されていたカカポ4羽が移殖され、9月にも6羽が追加放鳥された。将来的には私有地を含む2万4000ヘクタールに4万個以上のオコジョ捕獲罠を設置しプレデター管理区域にする計画だ。一方、南島でも8月に18羽のタカへが捕食者駆除を達成したクイーンズタウンの奥地に放たれた。絶滅が危惧されていたタカへは、現在500羽に増えている。2050年にプレデターフリーの達成を目指した計画の推進が、この国固有の生態系の復活に成果を上げつつある。

侵略的動物の導入と駆除

陸生哺乳類がいない独特の生態系に適応していた固有種は、人間による捕獲や生息域の破壊、移入された動物の脅威によって生息数が減少した。過去750年の間に少なくとも鳥類51種、トカゲ3種、カエル3種、魚類1種が絶滅したとされる。人と共に早い時期に出現したネズミは鳥類に大きな被害をもたらした。19世紀半ばに毛皮を得るために導入されたポッサムは旺盛な食性で固有種の餌を奪った。1879年ウサギを駆逐する目的で導入されたオコジョは、その俊敏さと肉食性によって鳥や小動物の最大の脅威となった。同じくウサギ対策として1880年代に移殖されたフェレットやイタチも固有種を脅かした。これらの外来種は全て駆除対象で、多くの人員と費用が割かれている。

猫の扱いが最後の課題に

政府がプレデターフリー宣言をしてから7年がたち、生態系の修復に希望が見えてきた。しかし「プレデターフリー2050」を達成するには、猫の問題を避けて通れない。特に野生化したノネコが在来種におよぼす害は大きい。DOC(環境保護局)がアーサーズパスで行った調査によれば、ノネコが狩るケア(山岳性オウム)の数はオコジョに匹敵し、ケアが死ぬ原因の2割を占める。猫は約4割の世帯で飼われている人気の高い愛玩動物であり、ノネコ駆除や飼い猫の管理強化には愛猫家の抵抗が予想される。プレデターフリートラストが昨年行った調査では、66%がマイクロチップ埋め込みに賛成だが、室内飼いに賛成は44%だった。意識は変わりつつある。

アーサーズパスにいたノネコ

Text:Kazzy Matsuzaki 
2023年10月号掲載