入国者増は国を救えるか

New Zealand News!NZ NEWS

2022年10月号掲載

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 入国正常化への期待

ニュージーランド政府は、9月26日から新型コロナワクチンの接種義務を解除し全て任意とした。まだ入国後2回の迅速抗原検査(RAT)は残るものの、入国のしやすさは2年半ぶりにコロナ前に戻った。入国者数は3月、5月、7月と条件が緩和されるたびに急増している。1〜8月の間に、豪州国籍の来訪者は100倍になり、学生ビザでの入国は45倍、就労者は26倍、自国民を除く入国者の合計は6千人から14万人へと23倍になった。それでもコロナ前の2019年8月の半分ほどであり、これから始まる観光シーズンや年末のロングホリデーに向けて、入国者はさらに急増する。待ちかねた自由往来が復活し、瀕死状態にあった留学や観光が息を吹き返した。期待は大きい。

解消しない人手不足

入国者が急増している一方で、人手不足は解消していない。観光やホスピタリティ業界では、需要の増加にスタッフの配置が追いつかない。介護業界では必要な看護師の78%しか確保できておらず、農業分野では人手不足と気候変動の挟み撃ちにあっており、建設業も人手不足と資材不足に苦しんでいる。広範な職種で人手不足が解消されていない。政府は昨年、入国制限による深刻な人手不足への対策として就労ビザ保持者に特別永住権を付与したり、ワーキングホリデービザの期限を数度に渡り延長した。国境の往来が自由化し、入国者が急増することで人手不足は緩和されるのか、それとも深刻化するのか判断が別れている。

住みやすい国なのかどうか

今年4月末までの1年間に国外から転入したのは4万6500人、対して国外に転出したのは5万5200人で移住の出入りは8700人の純減だった。このうち外国人の純減は8900人で、自国民は200人の純増だった。新規の人材流入よりも、既存の流出の方が多かったわけで、これが人手不足の要因である。政府は今年8月、ワーキングホリデーの受け入れ数の拡大と6ヵ月間のビザ延長を決めた。また、介護、建設、食肉、水産、観光などの業種で賃金要件を緩和し就労ビザを出しやすくした。しかし、人手不足は先進国に共通する問題であり、人材獲得の競争が国際的に激化している。もともと流動性が高い移民にとって、働きやすく暮らしやすい国なのかどうかが問われている。

NZ入国者数と内訳2022年(NZ国籍者を除く):Stats NZ

Text:Kazzy Matsuzaki