賃金上昇の波にも高低

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上昇率7%の攻防

月から最低賃金が22ドル70セントになる。上げ幅は1ドル50セントで上昇率は7%だ。 昨年は同6%だったが、今回はインフレ率が7.2%だったこともあり、2019年以来4年ぶりに7%台に乗せた。最低賃金上にある労働者は約22万人で、週40時間働く場合、週60ドルの増額となる。一方、賃金の中央値は29ドル66セントで、その上昇率は7%に届かない。人事コンサル企業マーサーの総報酬調査によれば、ニュージーランドの雇用主は今年の昇給率の中央値を昨年と同じ3%と見込んでいるという。つまり、賃上げ率が7%以下の職種や階層が多いことを示している。また物価全体の上昇率は7.2%だが、日々の暮らしに重要な食料品価格の上昇率は11.4%になっている。

移民に時給30ドルの壁

移民にとっては、最低賃金より中央値29.66ドルが重要だ。認定雇用から就労ビザ(AEWV)を得る場合、この賃金以上を得る必要があるからだ。ただし、一部の産業(食肉・水産加工、建設、介護)については、時給24ドル〜26.16ドル、観光・飲食業については28.18ドルが適用される。就労から永住権に繋げる場合は、中央値以上の賃金で技能職を3年続ける必要があるが、賃金が中央値の1.5倍と3倍のラインで優遇措置がある。また、今年8月からは中央値の1.5倍の賃金を得ている永住者は親1人を、同2倍を得ている場合は両親を呼び寄せる抽選権を得られるようになる。外国人がこの国で就労し、永住するためには、スキルはもとより稼ぎが重要な要素になっている。

職種で高低、広がる格差

平均時給は37ドル86セントで、上昇率は7.4%だ。平均年収と賃金上昇率は、業種によって高低がある(別表参照)。賃金上昇率が11・8%を記録した宿泊・飲食業は、年収では下位グループであり、深刻な人手不足や外国人雇用における賃金中央値の縛りによって賃金が上昇したと考えられる。その一方で教育職は年収が下位グループな上に賃金上昇率も低く、その不満がストライキなどに繋がっている。とりわけ幼児教育は、資格職であるにもかかわらず最低賃金に近い給与であることが多い。また、今は高収入である業種でも、技術革新による自動化が進み、雇用環境が激変して失業する可能性もあるため、投資や副業も含めた戦略的な働き方が必要になるだろう。

職種別賃金と上昇率(データ:NZ統計局)

Text:Kazzy Matsuzaki 
2023年4月号掲載