正社員として働くか、フリーランスとして働くか?受託者として、ビジネス契約をする際に気をつけるべき点は?

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「困ったときの法律駆け込み寺」日本とは勝手が違い、戸惑うことも多いニュージーランドの法律。現役弁護士がお答えします。

2022年9月号掲載

Q. ニュージーランドでエンジニアの仕事を考えていますが、正社員として働くか、フリーランスとして働こうか悩んでいます。受託者として、ビジネス契約をする際に気をつけるべき点はありますか?

従業員と受託者の違い

仕事をするうえで、自身がEmployee(従業員)となり、フルタイム、パートタイムなどの形態で、雇用主と雇用契約を結ぶ方法。または、Contractor(受託者)として別の事業主と業務委託契約を結ぶ方法の主に二つの選択肢があります。

雇用主とEmployeeが結ぶ雇用契約では、雇用法による権利がEmployeeに保証されます。例えば、最低時給の保証、有給休暇や病気休暇、雇用主から不当な扱いを受けた場合の提訴権などです。雇用主側には、雇用契約書の保管、勤怠や給与の記録、税金の支払いなどの義務が課されます。

これに対しContractorの業務委託契約は事業主間のビジネス契約で、委託者とは雇用関係にないためContractorは雇用法の恩恵を受けられません。その代わり一つの委託者に縛られず、別の委託者とも自由に契約をすることが出来ます。業務に必要な費用の負担、利益や税金の管理など多くの義務もありますが、雇用契約より選択権があります。

業務委託契約が雇用契約と判断される場合も

2020年5月、雇用裁判所において、運送会社(委託者)と業務委託契約を結んでいた配達作業員が一方的に契約を打ち切られたことに対し、自身の契約形態はContractorではなくEmployeeであると提訴し、認められました。これにより、配達作業員は契約日に遡って給与や有給休暇の権利、および不当解雇に対する提訴権を得ました。この判決の決め手は、運送会社側が配達作業員の業務を事実上コントロールし、事業主であるはずの配達作業員に自主的な選択権がほぼ無かったことです。具体的には、配送ルートや勤務日の指定、この運送会社以外からの集荷は出来ず、休暇の取得も運送会社の承認が必要など、総合的にこれらの制約から事実上の雇用契約と判断されました。

雇用法による権利を保障されないContractor契約を結びながらEmployeeと同様の扱いをする事業主がいることを理解し、不当な契約を結ばない、結ばせないように心がけることが重要です。

Junichi Nishimura
弁護士
Junichi Nishimura
西村純一

ローズバンク法律事務所代表弁護士。オークランド大学法学部を卒業し、ニュージーランドで初の日本人弁護士となる。

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