2024年7月31日、8月1日に日本の国会の衆議院・農林水産委員会の調査団が、ニュージーランドにおける農産物の生産・輸出に関する調査のため、ニュージーランドを訪問しました。
その時の視察内容の概要をご紹介します。
一行は ニュージーランドの代表的な農産物の輸出企業であるキウイフルーツのゼスプリ社と乳製品のフォンテラ社を訪問し、各社の幹部や、キウイフルーツ生産者と意見交換を行いました。日本産食品の輸入、販売については、TOKYOFOOD社、JAPAN MARTで意見交換と視察。また、オークランド日本経済懇談会(二水会)の農林水産関係企業とも、意見交換を行いました。
調査概要
① ゼスプリ社及びキウイフルーツ農園への訪問
ゼスプリ社は、キウイフルーツの世界的輸出大手であり、日本でもライセンス生産を行う会社。ニュージーランドのキウイフルーツはオーストラリア以外へは、全てゼスプリ社を通して輸出される。
ニュージーランドのキウイフルーツは、タウランガのベイオブプレンティ地域で約8割が生産される。
全世界のフルーツ生産量全体ではキウイフルーツは1%にも満たないので、まだまだ成長の余地が大きい。世界中で周年供給を行うためには、キウイフルーツをニュージーランドだけでなく海外生産することが必要。日本ではゴールド種のみ生産。主な生産地は三重、山口、愛媛、佐賀、宮崎。両国ともに生産者の高齢化が課題となっている。

キウイフルーツ農園にて
65ヘクタールの農園でグリーン、ゴールド、レッドのキウイフルーツを栽培。収穫ピーク時は75人、冬は30人ほどで対応。サモア、フィジーからの労働力者も多い。
収穫に当たり、サンプリング検査でゼスプリ社が規定する大きさ、糖度などの基準をクリアしないと収穫の許可が出ない。また、化学物質の残留の有無も調査される。

② フォンテラ社への訪問
フォンテラ社は、ニュージーランド最大の酪農協同組合、オーナーは8,300の農家。世界中に乳製品を輸出しており、日本の大手企業にも原材料として供給している。
2014年から北海道でニュージーランドの放牧酪農の導入に関するプロジェクトが行われている。
フォンテラ社では、乳牛のゲップからのメタンガス排出の削減や、工場やトラックのエネルギーの脱炭素化にも取り組んでいる。


③ TOKYOFOOD社およびJAPAN MARTへの訪問
30年にわたり、日本食材等の輸入・卸売・小売に携わる会社で、ニュージーランド初の日本産和牛肉販売や、地元大手スーパーへの日本酒販売を実現した 。日本人企業が日本食品の全国流通を押さえていることは世界的にも珍しい例で、2018年に社長の村山晴政氏が日本食海外普及功労者表彰を受けている。
<村山社長のコメント>
36年ほど前は、ニュージーランドには日本食レストランは5軒、オークランドには3軒だけで、日本食のマーケットがなく、生魚や寿司を食べる文化もなかった。しかし、ニュージーランド独自の食文化というものが少ないため、日本食は、抵抗なく受け入れられた。
お米については、日本産米以外は冷めると固くなり、パラパラになるため、おにぎりなどには不向き。日本人だけでなく、香港、台湾の人も日本産米を好んで食べる。ニュージーランドは日本食の浸透度が特に高く、テイクアウトの寿司屋も多い。
ニュージーランドでもwagyu(交雑種)の生産はあるが、この国では穀物ではなく牧草で育てるため、日本の和牛とは質が異なる。日本国内で日本独自の高い技術でスライスして加工した日本産和牛肉をニュージーランドに輸出できれば、外食産業やスーパーマーケットなどで販路が広がるので、更に輸出が拡大するのではと考える。
<大澤大使のコメント>
ニュージーランドには、日本食専門の輸入・流通事業者が数社あり、貴重な存在だと認識しています。このような事業者がいると日本産食品の輸入・普及は進みやすいと思います。
大使館としては、ぜひとも和食の普及に力を入れていきたいと考えております。
衆議院:農林水産委員会 調査議員団
団長(委員長):野中厚(自民)
理事:小島敏文(自民)
理事:古川康(自民)
委員長:友慎治(国民)
衆議院ニュージーランド及びシンガポール
農林水産事情等調査議員団報告書抜粋

日本国大使館、こんな仕事もやっています
ウェリントンは相変わらずのお天気ですが、雨風に負けずに元気に活動しています!
熱い姉妹都市間の交流
9月14日、ジャパンフェスティバルウェリントンが開催されました。日本から駆けつけた落語家のふく姫さんの落語の披露、日本関連のグッズ販売などが行われ大盛況でした。フェスティバルの一環での日本映画祭2024も連日完売御礼、ニュージーランドにおける日本文化への関心の高さがうかがえました。
姉妹都市間の交流も熱いです。今年はウェリントン堺:姉妹都市30周年(10月)、ダニーデン小樽:姉妹都市45周年(11月)で、様々な周年行事が行われています。日本との間には44もの姉妹都市交流があります。相互理解を深める人と人との草の根交流が、長く盛んに行われているのは素晴らしいことですね。


今シーズンのサッカーに注目
スポーツ界も、にわかに日本熱が高まっています。
「オークランドFC」に酒井宏樹選手、「ウェリントンフェニックス」男子チームに長澤和輝選手、石毛秀樹選手が、女子チームには田中萌(めばえ)選手が加わりました。ニュージーランド在住の日本人としては嬉しい限り、今シーズンのサッカーは見逃せません。
※NZCIS (New Zealand Campus of Innovation & Sports)は、2023年ウェリントン近郊に 完成したサッカー、ラグビー等のスポーツの最新鋭トレーニング施設。
報告:大使館 田口