ニュージーランドの高校で 受けられる将来へのサポート

ニュージーランドの高校で 受けられる将来へのサポートEDUCATION

2022年8月号掲載

インタビュー特集:タラデール高校アンドレア・シムス先生

ニュージーランドでは、生徒が卒業後に就職をして自立した生活を始められるよう高校在学中から支援しており、今回はタラデール高校ではどのような支援をしているか、Head of Careers のアンドレア・シムス先生にお話を伺った。

※この記事で紹介しているCareerの授業における専門学校への通学制度は留学生は対象外となり、ドメスティックの生徒のみ対象となりますのでご注意ください(HCMの授業は留学生も受講します)。

卒業後に向けたカリキュラム

ニュージーランドでは、高校に通いながら専門学校に行ける制度など、高校生のうちから就職を見据えた準備ができるようになっている。高校にはキャリア(Careers)と呼ばれる部署が設けられていて、この部署は学校によって内容はさまざまだが、未来に旅立つ生徒たちの将来をサポートすることが役割だ。

 今回は、ホークスベイ地方の高校の中で一番キャリアに力を入れているタラデール高校のアンドレア・シムス先生にお話を伺った。アンドレア先生はこの学校に30年以上勤めているベテランだ。

この部署の活動は生徒が高校に入学した一年目から始まっている。

まずイヤー9とイヤー10では自分がどういう人間なのか知ることから始まる。4学期にSelf Awareness と呼ばれる時間が2時間設けられ、ここで自分がどういう人であるかを学ぶ。

Careers

高校在学中に専門学校に通い仕事体験をすることも

イヤー11になると生徒は社会を“探検”するチャンスを得る。ここではいろいろな仕事場を訪れたり、
Work Experienceと呼ばれる仕事の体験をしたりできる。希望の生徒はTrade academyと呼ばれるコースで週に1〜3日間、ポリテック(専門学校)にて経験学習を行うことができる。1〜3日と言うのはコー
スの内容によって学ぶ日程が違ってくるためだ。

イヤー12になると生徒達は専門学校が行っているキャリアエクスポに参加する事ができ、自分が将来どういう仕事をしたいのか?を知るために実際にその分野で活動している人達と話すことができる。またイヤー12 の生徒もイヤー11 の生徒同様、学校に在籍しながら週に1〜3日、専門学校で学ぶ事ができる。

在学中に専門学校で受けられるコースは様々で、農業、林業、園芸から車のメカニック、ビジネス、大工、エンジニア、コンピューター、ヘアビューティー、スポーツ、ベーカリー、ホスピタリティ、幼児教育、動物ケア、ツーリズム、マオリアート、警察準備コースなどがある。

ニュージーランドならではのコースはやはり農業系だろう。農業や酪農をはじめ、林業や園芸、養蜂コースもあり内容も充実している。最近では、ニュージーランド国内での需要も多いからか、大工になる生徒が増えているそうだ。その他、IT系を学ぶ生徒も以前より増えており人気上昇中とのこと。

これらのコースは学校によって取り扱う内容が違うので、詳しくは通学中、または通学予定の高校のキャリア部署に問い合わせを。また、専門学校での体験学習を行う生徒達はNCEAレベル2と3のクレジットを取得する事ができる。

ニュージーランドでの大学進学率は30%ほどとのことで、その他の生徒は専門学校に通い技術や知識を身に付けている。ニュージーランド国内で受けた専門学校での資格は世界でも通用するそうで、ニュージーランドの高校で受けた技術や知識は将来に役立ちそうだ。

自立した生活を送るために資産管理、料理、運転免許も

イヤー12では学校で週に2回、HCMと呼ばれる授業が行われる。HCMはHealth, Careers, Moneyの略で、5週間ごとにプログラムの内容が変わる。内容としては、Healthでは安全で管理された環境での知識、情報を共有することによって様々な10代の問題を調査してその問題について話し合う。Careersでは仕事をする上で大切な、雇用される為の能力についてを学び、履歴書やカバーレターの作成を行う。Money Mojoでは財務について、金利、キウイセーバー、ローン、クレジットカードなどについて学ぶ。

またこの授業では、将来自立して生活していく上での基本的な10種類の料理の作り方も学ぶことができる。さらに学校内での授業を無事に終わらせるために、先生の監督のもとでこの時間を使い他の科目の学習も行えるようになっている。

HCMはHealth, Careers, Moneyの略

イヤー13になるとHCMの授業は週に一度になり、外部からの講師や業者が学校に来る機会も多くなる。また、一日中授業がなかったり、空き時間や空き日ができるので生徒はここで更に将来に向けて考える時間ができる。

また、タラデール高校では生徒の車の免許取得にも力を入れている。車が運転できると仕事のチャンスも増えるからだ。学校では希望の生徒を専門学校に連れて行き、そこで生徒は半日の学科の授業を受ける。授業後に生徒が試験を受けられる準備ができていたら専門学校のスタッフがAAまで連れて行き、そのまま筆記試験を受けられるシステムとなっている。

運転免許取得にも力を入れている

さらに高校は、生徒が在学中に仕事(アルバイト)を見つけられるよう地元の企業とコネクションを作り、仕事も紹介している。これは生徒達が社会に出て自分で働くことにより少しでも自立するのを手助けするためだという。

こちらの高校では社会生活を送るための基礎も包括的に学ぶことができると言えそうだ。

アンドレア・シムス先生(写真中央)
Andrea Sims
Head of Careers – Taradale High School

キャリアの授業を担当するアンドレア先生はタラデール高校在籍30年以上のベテラン。生徒が社会に出て就職し、しっかりと自立できるようなカリキュラム作りをしている。
【Web】www.ths.school.nz

Text: Izumi Edmonds