今回は、家族でニュージーランドに移住する際に最も多く利用される「就労ビザと家族ビザ」の仕組みを解説します。
主申請者と帯同する家族の権利や条件を整理し、実際の判断に役立つポイントをまとめました。
「どのビザを選ぶと家族全員が安心して暮らせるか」が具体的にイメージできます。
ニュージーランドで家族移住を考える際、最も一般的なのが「就労ビザを主申請者として取得し、家族は帯同ビザで同行する」方法です。
主申請者が働きながら家族が現地で生活できるため、現実的で選ばれることの多いルートです。
ここで重要なのが、家族の滞在条件や権利は「誰を帯同するか」によって基準が異なるという点です。
特に、子どもの就学とパートナーの就労では、確認すべき収入条件が異なります。
① 子どもを帯同する場合(Dependent Child Student Visa)
主申請者が適切な就労ビザを持ち、一定の収入基準を満たしている場合、子どもはDependent Child Student Visa を申請し、ニュージーランドの学校に通うことができます。
この場合の主な収入目安は以下のとおりです。
● 年収ベースの基準:$55,844/年
この基準を満たさない場合、子どもは 留学生として Student Visa(Fee Paying Student) を取得する必要があり、授業料が発生します。
② パートナーを帯同する場合(就労可否の判断)
パートナーが 就労可能なビザを申請できるかどうかは、主申請者の職種・スキルレベル・給与水準によって判断されます。
代表的な収入基準の例は以下のとおりです。
● ANZSCO(Australian and New Zealand Standard Classification of Occupations)または
NOL(New Zealand Occupation List)において、比較的高度な技能・資格・経験が求められる
Skill Level 1〜3 に分類される職種:時給 $26.85 以上
● 職種を問わず:時給 $50.34 以上
● Green List※ 掲載職種:時給 $33.56 以上
● Transport Sector/Care Sector Work to Residence※ 対象職種:時給 $26.85 以上
これらの条件を満たす場合、パートナーは就労可能なビザを申請でき、フルタイムでの就労が認められます。
一方で、基準に達していない場合は、就労に制限がかかる、または就労が認められないこともあります。
※ Green List
ニュージーランド政府が定める人材不足分野の優遇職種リスト。
一定の条件を満たすことで、居住権(Residence)申請の優遇措置が受けられる。
※ Transport Sector/Care Sector Work to Residence
運輸分野(Transport Sector)および介護・ケア分野(Care Sector)において、
一定期間の就労後に居住権申請が可能となる「Work to Residence」制度の対象職種。
よくあるケース
Bさん一家(夫:ITエンジニア、妻:専業主婦、子ども2人)は、夫が AEWV を取得。
妻はパートナービザで就労可となり、現地でパートタイムの仕事を始めました。
子どもたちも学校生活に順応し、家族全員が少しずつ生活基盤を築くことができました。
ただし、もし夫の給与が基準に届いていなければ、妻は働けず、家族全体の生活設計も大きく変わっていた可能性があります。
ポイント
● 子どもの就学とパートナーの就労では、確認すべき収入基準が異なる
● 「誰を帯同するか」を前提に、条件を整理することが重要
● 家族全体の生活設計を見据えたビザ選択が不可欠
次回予告
次回は「学生ビザ+保護者ビザ」を中心に、教育目的での移住について解説します。
三浦サリー / Power In Numbers Ltd.
ニュージーランド・オークランドで生まれ育ち、高校受験を機に日本で3年間生活した経験があります。NZと日本、どちらの国のことも理解しているからこそ、両方の視点から安心してご相談いただけるのが強みです。
2015年に Power In Numbers Ltd. を設立し、ニュージーランド政府公認イミグレーションアドバイザーとして活動。リーズナブルで質の高いサポートを提供し、移住を希望される方々のライフプランや現地での暮らしに寄り添ったアドバイスを行っています。
プライベートでは子育てをしながら、多様なライフスタイルに触れてきた経験を活かし、家族での移住を考える方から単身で挑戦される方まで、幅広いご相談に親身に対応しています。
【E-mail】enquire@powerinnumbersltd.com
【Web】https://www.pin-nz.com
Immigration Adviser #201700259


