ニュージーランドで味噌づくり

ニュージーランドで味噌づくり GOURMET

味噌を知って、楽しんで、活用しよう!

味噌の歴史
味噌の起源には諸説があるが、もともとは古代中国の塩蔵食品「醤(しょう・ひしお)」だといわれている。醤は腐敗を防ぐために肉や魚に酒や塩を混ぜて漬け込み、熟成させたもの。飛鳥時代、遣隋使によって日本に伝えられ、日本独自の製法を用いて味噌が誕生したという説が有力だ。

701年(飛鳥時代)の大宝律令に「未醤(みしょう)」という文字が記されているが、これは醤になる前、まだ大豆の粒が残っている熟成途中のもの。その「みしょう」が変化して「みそ」と呼ばれるようになったと考えられている。

平安時代には文献にも「味噌」という文字が登場する。しかし当時は食べ物につけたり、かけたりするもので、寺院や貴族階級で珍重される高級品だった。鎌倉時代に入ると「一汁一菜」という武士の食事習慣が確立し、味噌汁として食されるようになった。

室町時代には大豆の生産量が増加し、農民が味噌を自家醸造するようになり、一般庶民にも味噌汁が広がる。江戸時代には庶民の間でも味噌づくりが盛んになり、味噌の味や、味噌を使った料理も増えて発展していった。各家庭で作った味噌を自慢し合った習慣を由来とする「手前味噌」という言葉もこの頃にできた。

味噌の効果とは?

栄養価が高く、健康づくりに役立つといわれる味噌。どのような栄養成分と効果があるのかまとめてみた。

●タンパク質
主原料の大豆には植物性タンパク質が豊富に含まれている。また、味噌のタンパク質は酵素によってアミノ酸に分解され、体内に効率よく吸収されるという特徴がある。このアミノ酸の中には、生命維持に必要な必須アミノ酸9種類が含まれている。

●食物繊維
味噌に含まれる食物繊維には腸内環境を整えて便通をスムーズにするほか、血糖値や血圧の上昇を抑制する働きがある。

●ビタミンB群
エネルギーを生み出し、皮膚や髪の毛、爪などの状態を正常に保つ働きがある。

●ビタミンE
抗酸化作用を持ち、体内の酸化を防いで老化防止に役立つ。

●イソフラボン
女性ホルモンである「エストロゲン」に似た働きをし美肌効果が期待できる。更年期に現れる症状の緩和にも役立つ。

●大豆サポニン
抗酸化作用のほか、コレステロール値の低下や肥満対策、血流の改善、免疫力の向上などをサポートする。
そのほかにカルシウムやマグネシウム、鉄分といったミネラルも含む。

メンタルヘルスにも効果あり

冬になると心が沈みやすかったり、体のだるさを感じやすくなったりすることも。こういう時は幸せホルモンといわれる「セロトニン」レベルを上げるため、味噌の力を借りるのがおすすめ。味噌にはセロトニンの分泌を促す成分トリプトファンが含まれているためだ。

また、味噌のように幼い頃から慣れ親しんだ味や香りを楽しむことでもセロトニンはアップするとか。海外暮らしが長い人ほど味噌の味に癒されやすいのではないだろうか。


自家製味噌づくりに挑戦!

<材料>

大豆(乾燥しているもの) 500g
米麹 1kg
塩 300g
※味噌約2.5kg分

<作り方>

  1. 大豆をよく洗い、水に一晩浸ける(12~24時間 が目安)
  2. 大きな鍋で大豆が柔らかくなるまで煮る(2~4時間が目安、圧力鍋の場合は30分が目安)
  3. 温かいうちにマッシャーなどを使って大豆をつぶす
  4. つぶした大豆に米麹と塩をよく混ぜる
  5. 混ぜた大豆を団子状に丸め、アルコールなどで消毒した容器に隙間がないよう詰める
  6. 空気に触れないよう表面にラップを敷き、フタをする(ジッパー付き保存袋を利用する場合はしっかり空気を抜く)
  7. なるべく温度変化の少ない場所で6ヵ月~1年 寝かせて熟成させる
自家製味噌

ニュージーランドの味噌づくりについてインタビュー!

この10年余りで、ニュージーランドでも味噌が身近な存在に
~前田武人さん、美笑さん夫婦

前田武人さん、美笑さん夫婦

Urban Hippieを立ち上げたのは2011年。当時ネルソンで大豆を栽培している人がいたことが味噌づくりを始めたきっかけです。ネルソン産の大豆、ブレナム産のシーソルト、オーストラリア産の米で作ったところ、初めからとてもおいしくできたので、これをビジネスにしようと思いました。現在は、残念ながらネルソンで大豆栽培が行われなくなってしまったため、クライストチャーチ産の大豆とカナダ産の輸入大豆を使用しています。

ニュージーランド人は案外保守的で、食に関しても馴染みのないものに対して抵抗があるようです。ただ、ネルソンはオープンマインドな人が多く、新しいものも積極的に試してくれるので、味噌づくりをスタートするにはよい場所でした。また、この10年あまりでこの国にも食通が増え、味噌も一般的なスーパーマーケットに並ぶほど身近な存在になりました。和食だけでなく、さまざまな調理に使われるようになったのが嬉しいですね。

Urban Hippieの商品のなかでは、味噌以外に味噌マイトもおすすめです。ベジマイトをイメージしてトーストに塗れるよう考案したのですが、ほぼ白味噌なので、味噌汁にしたり、西京漬けに使ったりと多様に活躍します。そして味噌づくりの工程で生まれる「たまり」も非常においしいです。少量しか生産できないため、店舗には卸していませんが、オンラインストアで販売しています。これからも良質な大豆、塩、米、おいしい水を使って、伝統的で安心・安全な味噌づくりを続けていきます。

Urban Hippieの商品

奥深い麹菌の世界にはまっています
~林加奈子さん

長男が生まれた23年前、家族に安全な食べ物を食べてもらいたいという思いから味噌づくりを始めました。今は孫も誕生し、孫のために作るのがモチベーションになっています。

味噌づくりに必要な材料は、米麹、大豆、塩の3点だけ。日本にいるときは米麹を買っていましたが、ニュージーランドでは手に入りにくいので米から麹菌で醸して作るようになりました。麹菌の世界は奥が深く、すっかりのめり込んでいます。まるで赤ちゃんを見守るように、3日間温度調節をして大切に育てます。その甲斐あって真っ白で、きれいな米麹ができたときはとても嬉しいです。

林加奈子さん

大豆を購入するときはなるべくニュージーランド産のスプレーフリーのものを選んでいます。とはいえ、オーガニック大豆は入手困難なので、6年前から自分でも育て始めました。うまく育つ年と不作な年があり、自然の面白さと難しさを実感しています。塩も大事な要素なので、ミネラル豊富なシーソルトを使っています。

ニュージーランドでも味噌は概ね作りやすいです。多湿な時期のカビ発生に気をつければ、おいしくできると思います。時々味噌づくりのワークショップも開催しています。味噌を通していろいろな方々とおいしさ・楽しさを分かち合いたいと思います。

味噌づくりワークショップも開始!
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