スーパーマーケットの寡占状態の解消を検討
政府は、食料品価格の高騰に対応し、競争促進のためスーパーマーケット業界の二大勢力であるFoodstuffs(Pak’nSave、New World、Four Squareを運営)とWoolworths(Countdown、FreshChoice、SuperValueを運営)の分割を検討している。ニュージーランドのスーパーは、長年にわたりこの二大勢力による寡占状態にあり、競争が限定的であることが指摘されてきた。財務大臣のニコラ・ウィリス(Nicola Willis)氏は、実効的な競争を生み出すためには「大きな改革が必要」として、外部専門家に構造改革の助言を依頼。構造改革には卸売と小売部門の分離も含まれる。専門家によると、ニュージーランドのスーパー市場の改革には新規参入者を誘致するだけでは不十分で、現在の二大勢力であるFoodstuffsとWoolworthsを完全に別会社化し、取締役の兼任を禁止する法整備が必要であると指摘されている。
トランプ関税:ニュージーランド経済への影響
4月上旬にトランプ米大統領が発表した、世界125か国以上に対して課した新たな関税により、懸念の声が上がっている。ニュージーランド製品には一律10%が課されたが、中国には34%、日本には24%、EUには20%など、他国にはさらに高い関税が課されている。米国はニュージーランドにとって主要な輸出先であり、2024年の輸出額は約90億ドルに達している。特に肉類輸出業界からの危惧が大きい。ニュージーランド企業ZURU Toysの共同創業者ニック・モーブレイ(Nick Mowbray)氏は、中国への関税強化が自社に大きな影響を与えていると述べている。ZURUは中国で製造している年間約20億ドル相当の商品を米国に出荷しており、関税負担額は約30億ドルに達する。関税コストは、大幅な価格上昇という形で消費者に転嫁されることが見込まれるため、ニュージーランド経済全体への影響が懸念されている。
OCR引き下げに伴い、大手銀行の住宅ローンも金利引き下げ
4月9日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、政策金利(OCR)を0.25ポイント引き下げ、3.5%とした。これは2022年10月以来の低水準となる。RBNZは、世界的な貿易障壁の増加が経済活動とインフレ見通しに下振れリスクをもたらしているとし、今後さらに利下げの余地があることを示唆した。経済学者らは、トランプ米大統領の関税政策によるインフレ影響はまだ不透明だと指摘。今後の金利方針については5月に再度詳細が発表される予定だ。これを受け、大手銀行も立て続けに住宅ローン金利の引き下げを発表。BNZは住宅ローンの18カ月固定金利を5.19%から市場最安水準の4.95%に、1年固定も4.99%に引き下げた。Westpacも6カ月と1年固定をそれぞれ5.59%と4.99%に引き下げ、18カ月固定も4.99%に。KiwibankとANZも住宅ローンおよび定期預金金利を引き下げ、両行とも1年固定特別金利を4.99%に設定した。
運転免許制度見直し:2度の実技試験の代わりに60時間の監督付き運転義務化を提案
政府は運転免許取得を簡素化する方針を打ち出している。ニュージーランドは現在、2度の実技試験を実施しているが、提案が通れば、フルライセンス取得時に必要だった2回目の実技試験が廃止され、視力検査の回数も削減される。この提案には、限定免許者に無事故無違反記録を求め、運転初心者にはゼロアルコール制限を導入する安全対策案も含まれている。AA(ニュージーランド自動車協会)によると、これは2011年以来初の大規模な免許制度改正になるという。ニュージーランドでは25歳未満の若年層の交通事故死が非常に多いことが問題視されており、2度目の試験を廃止する場合は、最低でも60時間の運転練習を義務づけるべきだと提案されている。この免許制度の見直しと並行して、労働党政権下で一律に引き下げられた速度制限の撤回も進めており、7月1日までに一部道路の速度制限を元に戻す方針だ。
ファミリーブースト制度見直し
政府は、家計支援策「ファミリーブースト(FamilyBoost)」の改善を6月に発表する予定でいる。ファミリーブーストは、世帯年収18万ドル以下の家庭を対象に、週ごとの保育料の25%(最大週75ドル)を還付する制度。政府は当初、対象家庭を2万1,000世帯と想定していたが、実際の申請件数は予想をはるかに下回り、2024年4月9日時点で3四半期連続で最大額を受け取った家庭はわずか249世帯に留まっていた。財務大臣のニコラ・ウィリス(Nicola Willis)氏は、申請手続きや適格基準の見直しを行うと表明し、現在申請に必要な「保育施設からの請求書の提出」などの手間のかかる仕組みの簡素化を検討している。制度設計上の問題点を改善することで、より多くの家庭に恩恵が行き渡るようにするのが狙いだという。政府はこの制度に数億ドル規模の予算を確保しており、5月に発表予定の予算案にその方針が反映される予定だ。
公共EV充電器の導入を加速
政府は、電気自動車(EV)充電インフラの整備を加速すると発表した。運輸大臣のクリス・ビショップ(Chris Bishop)氏とエネルギー大臣のサイモン・ワッツ(Simon Watts)氏によると、ニュージーランドは他のOECD諸国に比べてEVあたりの公共充電器数が少なく、これがEV普及の妨げの一因となっているという。2024年末時点で設置されている充電器は1,378個で、EV84台に対して充電器1個の割合だが、政府は2030年までに1万個の設置、40台に1個の割合という目標を掲げている。充電インフラの整備は、EV市場が成長し、複数の事業者が参入している現状に合わせ、より商業的なアプローチに移行する。これまでは主に直接補助金を交付してきたが、今後は民間事業者に対して低利融資を提供し、公共充電インフラへの投資を促進する。これにより、民間投資を前倒しし、税負担を抑えつつ、充電器の普及の加速を狙う。
社会
日本食レストランオーナー、有害な食品の販売と入国管理違反で罰金
クライストチャーチのコロンボ・ストリート(Colombo St)にあるラーメン屋「サムライ・ボウル(Samurai Bowl)」の経営者シンチェン・リウ(Xinchen Liu)氏は、有害な食品の提供と不法就労の雇用により、自宅拘禁6か月および3万ドルの罰金を言い渡された。2019年、店で提供した冷凍ラーメンから高濃度の黄色ブドウ球菌が検出され、食品安全当局(New Zealand Food Safety)は全商品の回収と廃棄を命じた。しかしリウ氏はこれに従わず、食材を解凍後、各部に分解・再冷凍して、一部を顧客に提供し、残りを従業員に食べさせるという行為に及んだ。また、就労資格のない外国人3人を違法に雇用していたことも発覚し、移民法違反にも問われている。裁判官は「公衆と従業員の健康を軽視した、極めて無責任な行動」と非難。食品の安全や労働環境へのリスク、さらにはニュージーランドの国際的信用への影響も指摘した。
オークランドのスタジアム論争激化
オークランドの主要なスポーツ、エンターテイメントイベントに対応できるスタジアムの整備については、長年にわたって論争が繰り広げられていた。、2006年には「既存のイーデン・パーク改修かウォーターフロント(キー・パーク)新設か」で意見が割れ、以後19年間進展なしだった。今月に入って、オークランド・カウンシルは新たにイーデンパークの改修案「イーデン・パーク2.1(Eden Park 2.1)」を支持し、ウォーターフロント案を退けた。市は1億1,000万ドルの政府支援を求めている。計画は3段階に分かれており、第一段階では北スタンドの座席の可動化、ラグビー観客席の移動、収容人数の拡大、第二段階では南スタンドとデザインの統一、第三段階では可動式屋根の設置を実施する予定でいる。この改修は、世界的イベントの誘致や地域・文化活動の活性化を目指しており、完成までに5〜15年を見込んでいる。
4月から値上げされたもの:最低賃金、福利厚生、電気料金
ニュージーランドでは4月1日から新年度が始まり、年次一般調整の開始に伴い様々な料金が改定された。最低時給は1.5%上昇して23.50ドルとなった。賃金上昇やインフレを考慮して年金や退役軍人年金は約3%増加し、失業手当やシングルペアレント手当などの福祉給付金は約2.22%上昇した。例えばシングルペアレント手当は週あたり11ドル増の505.80ドル、子どもがいる夫婦への給付金は週当たり7.06ドル~324.61ドル増、独身の成人への給付金は361.31ドル、夫婦の場合は1人あたり307.42ドルとなるという。人口増加や気候変動、電化の進展によって電力インフラへの投資が必要とされるため、電気料金も平均で月に10ドル増額する。学生ローンは、返済の所得基準が凍結されたため、約37万人の国内の借り手に平均で週$1.20の負担増となる。これらの改定は、経済支援と持続可能な社会インフラの維持を目的としている。
生活
オークランド交通局、駐車料金を1時間あたり50セント値上げ
オークランド交通局(AT)は、4月14日から市内の駐車料金を引き上げると発表した。AT管理の全駐車場で1時間あたり50セント増額され、1日あたりの上限料金も変更される。ただし、最近価格改定があった一部地域(デボンポート(Devonport)、ウェストゲート(Westgate)、フリーマンズベイ(Freemans Bay)など)は対象外となっている。この値上げは運営コストの上昇(13%増)や、違反対応など市民からの要望の増加(30%増)を背景としたもの。価格調整は年次レビューや需要、経済状況、社会的要因を考慮して行われ、公共交通機関の運賃改定と同様の方針で実施されている。この取り組みは地方税(Rates)の負担を抑えるための対策でもあり、利用者に維持管理費用の一部を負担してもらう形になっている。前回の駐車料金引き上げは2023年8月で、1時間あたり1ドルの値上げが実施された。
マクドナルド、NZ国内の少数店舗でマックウィングを試験販売
マクドナルド・ニュージーランドは現在、一部店舗で新商品の骨付きフライドチキン「マックウィング(McWings)」を試験的に販売している。マックウィングは3ピース入りで、「厚みがあり、衣はクリスピー、中のチキンはジューシーで、ペッパーの効いた風味豊かな味」と評され、多くの消費者から支持を集めている。マクドナルド・ニュージーランドの広報担当サイモン・ケニー(Simon Kenny)氏によると、今回の試験販売は新メニューの運用面や顧客からのフィードバックを評価する目的で実施されており、現在のところ反応は非常に良好とのこと。ただし、今後の展開については現時点では未定としている。この商品は3月にオーストラリアで実施された試験販売でも好評を博した。マクドナルド・ジャパンでも2014年に期間限定で販売されたことがあるが、2025年4月現在、日本では常時販売はされていない。
2025年全国優秀食品生産者賞:ホークスベイの精肉店「マタンギ」
ホークスベイのブティック精肉店「マタンギ(Matangi)」は、2025年の優秀食品生産者賞(Outstanding Food Producer Awards)で最優秀賞(Supreme Champion Award)を受賞した。また、2年連続で「Emerson’s Paddock Champion」のタイトルも獲得し、ホークスベイ地域にとって大きな成功となった。マタンギは、創業者のロバート・ハーゼルスタイナー(Robert Haselsteiner)氏と経営パートナーのジェームズ&ニッキー・ガダム(James and Nicky Gaddum)夫妻が2023年3月にヘレタウンガ・ストリート(Heretaunga St East)の再開発地区に開店した、小規模な牧場から精肉店までの一貫した直営店。2023年のサイクロンで大打撃を受けたが、10カ月で事業を再建した。今回受賞したのは「30~45日間熟成させたサーロイン・ステーキカット」で、審査員から「バターのように柔らかく、ジューシーで風味豊か」と絶賛された。
芸能・スポーツ
オールブラックス:マッケンジーが契約延長
オールブラックス(All Blacks)のダミアン・マッケンジー(Damian McKenzie)が、ニュージーランドラグビー(NZR)との契約を2029年まで延長した。現在29歳の彼は、海外からの強い関心にも関わらず「チーフス(Chiefs)とオールブラックスの一員としてこれからも貢献したい」と語り、2027年のラグビー・ワールドカップでの成功にも意欲を見せている。マッケンジーは2016年に代表デビューし、2024年には全14試合に出場。スーパーラグビーではチーフスで131試合出場し、歴代最多得点者でもある。チーフスの監督マクミラン(McMillan)氏、オールブラックスの監督ロバートソン(Robertson)氏はともに、マッケンジーを「影響力を持つ重要な存在」と高く評価している。マッケンジーの契約には、2028年にサバティカル休暇(sabbatical、使途に制限がない職務を離れた長期休暇のこと)をとる条項も含まれている。
F1:ローソンがレッドブルから降格、レーシング・ブルズへ移籍
ニュージーランド人F1ドライバーのリアム・ローソン(Liam Lawson)は、2025年シーズン当初からレッドブル(Red Bull)のドライバーに抜擢されたが、最初の2戦で期待された結果を出せず、降格を言い渡された。後任として、日本の角田裕毅が昇格。レッドブルは、RB21の開発において経験豊富な角田がより適任と判断したと説明したが、今回の交代は過去最も迅速かつ厳しい判断と評されている。4月6日に鈴鹿サーキットで開催された日本グランプリでは、ローソンは姉妹チームである古巣のレーシング・ブルズ(Visa Cash App Racing Bulls)として出場し、予選13位、決勝17位でフィニッシュ。ローソンと交代でレッドブルに移籍した角田は、予選はローソンを下回る14位、決勝は12位という結果で、両者ともポイント獲得はならなかった。ローソンが再びレッドブルへ昇格できるかは今季のパフォーマンス次第である。
ロードが4年ぶりの新シングル『What Was That』で音楽界に復帰
ニュージーランド出身の人気シンガーソングライター、ロード(Lorde)が、約4年ぶりとなる新曲『What Was That』のリリースを発表した。これは2021年のアルバム『Solar Power』以来のソロ作品であり、ロードが4年ごとにアルバムを発表するパターンに沿った動きとなる。新曲発表に先立ち、ロードはTikTokに未公開音源の一部を含む短い動画を投稿し、ニューヨークの公園で走る姿を披露。動画は3,200万回以上の視聴回数を獲得している。さらに、ソーシャルメディアを通じてファンに謎めいたメッセージやボイスメモを送り、「すべてが変わる」と語るなど、新作への期待を高めていた。ロードの公式ニュースレターでは、米国の電話番号を記載したメールが配信され、ファンは専用コミュニティに登録できるようになっている。これらの動きから、ファンの間では2025年中にニューアルバムが発表されるとの期待が高まっている。
映画『ティナー』が興行収入500万ドルを突破、ニュージーランド映画史に名を刻む
ニュージーランド映画『ティナ―(Tinā)』が公開から7週間で興行収入503万NZドル、動員32万人超を記録し、国内歴代6位の成功を収めた。『ティナ―』は、私立学校の代用教員が合唱団を結成し、子どもたちと心を通わせていく感動ドラマ。2023年にクライストチャーチとオークランドで撮影され、2025年2月27日に公開された。脚本・監督はミキ・マガシヴァ(Miki Magasiva)が、主演はアナペラ・ポラタイヴァオ(Anapela Polataivao)が務めた。ニュージーランド、太平洋諸国を含む128の映画館で上映され、地元やパシフィカ・コミュニティを中心に高い支持を得ている。海外の映画祭でも評価され、パームスプリングス国際映画祭(Palm Springs International Film Festival)で観客賞を受賞した。制作側は、地域の物語を大切にすることの重要性と、観客との共感の力を強調している。