近づく不況の足音

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景気先行き悲観が最多に 

ウェリントンのシンクタンクNZ経済研究所(NZIER)によれば、調査した企業の73%が今年数ヶ月の間は景気が後退すると予想し、33%は自社の業績悪化もありえると回答したという。データを取り始めた1974年以来最悪のものだという。この先、需要の減衰や金利の上昇が見込まれることから、より慎重になった企業は雇用の削減や投資計画の縮小などを検討することになる。政府も今年の経済予測で、インフレの継続、景気の後退、失業の増大などによって生活が厳しくなる可能性に言及している。しかし、経済全体としては退潮局面であっても、企業の実績や雇用の状況は一様ではなく、業種や個別の要因によって成長と衰退の成否が別れる結果となる。

高いインフレ率は継続

昨年7%を越えた記録的なインフレは、今年も継続すると同研究所をはじめ複数のエコノミストが予測する。原材料や賃金・賃料など引き続くコストの上昇は、企業の収益率を低下させ、価格の上昇にドライブをかける。また、金利のさらなる上昇が予想されており、企業の資金調達コストも上がる。家計部門でも、住宅ローンの約半分で今後1年間に金利の見直しが予定されており、その多くが歴史的な低金利だった2〜3%から6〜7%へ移行する。その結果、住宅ローンの負担が大幅に増大するため、個人消費が減少すると予測される。国内経済は高インフレの中で景気後退を迎えることになり、国民生活はより防衛的になるが、家計支出額はむしろ増える可能性がある。

雇用はまだら模様に

7割の企業で景況感が悪化している一方、今年第1四半期で人員整理を考えている企業は1割以下で多くはない。実際、人手不足は依然として深刻で、医療職や技術者などの高度人材においても、農産物収穫や観光などの就労においても求人は多い。ワーキングホリデー来訪者も引く手あまたの状況だ。人手不足で雇用の機会があり賃金も高めなのは、雇われる者にとって好都合だ。しかし、雇う側にとってはストレスであり、政策的な負担増も含めて事業者の不満は政府に向いている。かつては比較的平等で融和的だと称賛されていたニュージーランド社会だったが、今は格差と分断と対立が目立つようになった。この傾向にどう対応するかが問われている。

企業の景況感の推移

Text:Kazzy Matsuzaki 
2023年2月号掲載