深まる対立と政権の行方

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政権交代か3期継続か 

3年に一度の総選挙が10月14日に迫る中、各党の選挙戦は激しさを増している。今回の総選挙の焦点は「政権交代が起こるかどうか」だ。前回の2020年選挙では、アーダーン首相のもとで歴史的な大勝を果たして2期目をスタートした労働党政権だったが、昨年から支持率が低下し今年1月には首相交代に至った。新たに労働党代表となったヒプキンス首相は「優先順位の見直し」を提唱し、経済重視の姿勢を示したことで支持率は一時的に持ち直したが、その後も低下傾向に歯止めがかからない。8月のワンニュースの世論調査によれば、労働党の支持率は29%で危機ラインを割り込んだ。対する国民党の支持率は37%で、同13%の右派政党ACTとの連立によって政権奪還の可能性が出てきた。とはいえ、政権の行方を決めるのは、幾多の世論調査ではなく一度の選挙結果だ。

左右の政党に流れる支持

もう一つの注目点はACTとグリーン党の伸長だ。前回の選挙で現有1議席から10議席へと大躍進したACT党は、支持率を13%に増やして17議席をうかがう勢いだ。個人の自由を重視し、中道右派の国民党よりもリバタリアン的な政策を掲げるACTが支持を広げている。その一方、政府による環境規制の強化や公的給付の拡充など左派的政策を掲げるグリーン党も支持を伸ばしている。従来の選挙では、政権交代の可能性があるときは中道左右の二大政党に票が集まり、小党への票は減少する傾向があった。今回の選挙ではその傾向が見られず、むしろ左右両極に票が流れている。これが社会の分断や国民の利害の対立が進んでいることの現れであるかどうかが注目される。

政権の賞味期限は8年?

ニュージーランドの政治においても政権交代は重大事であるが稀ではない。戦後78年の間に10回の政権交代が起こっており、一政権の存続期間は8年弱だ。ただし国民党政権が平均9.4年であるのに対し、労働党政権は同5.4年であり、3期9年続いたのはヘレン・クラーク政権だけだ。公的給付を手厚くして国民受けするはずの左派政権の方が短命なのは意外だが、改革の性急さや方向性に原因があるのかもしれない。今回の選挙で左派系の政党と右派系の政党がそれぞれ掲げる政策の隔たりは大きく、どちらの政権になるかで社会のあり方や国の将来に大きな違いが生じる。重大な選挙である。

主要政党の支持率の推移

Text:Kazzy Matsuzaki 
2023年9月号掲載