政府がNCEAの廃止と代替案を発表
政府は、中等教育の主要な資格制度であるNCEA(National Certificate of Educational Achievement)を廃止し、Year12と13にそれぞれ「New Zealand Certificate of Education(NZCE)」「New Zealand Advanced Certificate of Education(NZACE)」を導入する方針を発表した。Year11では英語と数学を必修とした基礎スキルを計る「Foundational Skills Award」が設けられ、高学年の資格取得に備える。Year12、13の生徒は5科目を履修し4科目合格で資格を得る仕組みとなり、100点満点の点数評価とA~Eの評定の併用で評価する。2028年から段階的に導入し、2030年に完全移行を目指す。今回の改革は、NCEAが柔軟すぎて一貫性を欠き、職業教育への道筋が不明確であるなどの批判が背景にある。新制度は柔軟性が減る一方、核心的スキル習得と将来の進路選択に資する構造化された仕組みとなる見込みだ。
幼児向け教材からマオリ語を削除
エリカ・スタンフォード(Erica Stanford)教育相は、5歳児(小学1年生)向けの読本シリーズ「Ready to Read Phonics Plus(RtRPP)」の新刊から、登場人物名を除くマオリ語の使用をほぼ全面的に禁止する方針を昨年10月に決定した。理由は「英語を学習中の児童が混乱する恐れがある」という識者の指摘によるが、根拠は限定的である。対象となるのは新たに追加される12冊で、すでに刊行済みの27冊にはマオリ語が含まれるが、書き換えは行わず再版も可能とした。スタンフォード氏は、小学2年生以降に英語カリキュラム内でマオリ語の読み方を段階的に導入する指導法を整備するよう省に指示した。一方、識字教育の専門家からは「マオリ語は発音規則が単純なので、英語学習の妨げにはならない」との意見もあり、学校現場や専門家からはこの決定に対し反発や懸念の声が広がっている。
失業率5.2%、2020年以来の高水準
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2025年6月期のニュージーランドの失業率は5.2%となり、2020年以来の高水準に達した。3月期の5.1%から上昇し、前年同期の4.7%も上回ったが、経済学者予想の5.3%よりはわずかに良好だった。失業者数は15.8万人で、前年より1.6万人増加。賃金は時給平均43.39ドルで前年より4.5%増だが、伸びは鈍化している。特にオークランドの失業率は4.6%から全国最悪の6.1%に悪化し、全国平均の5.2%を上回った。これに対し、経済界や政界からは不満が高まっている。クリストファー・ラクソン(Christopher Luxon)首相は、不況は前政権からの「負の遺産」やコロナ後の影響、国際的な関税問題によるものと説明。南島の一次産業は好調だが都市部には課題が残るとし、大規模プロジェクトの迅速化、中小企業の投資減税、建設規制緩和などの施策を挙げている。
OCR3%に引き下げ
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利(OCR)を0.25%引き下げ3.0%とした。2026年3月までにさらに2回の利下げが行われ、最終的に2.5%となる見通し。発表直後、NZドルは下落し株価は上昇した。ANZ、 Westpac、 Kiwibankなど主要銀行は住宅ローンの貸出金利を引き下げた。インフレ率は6月期で年2.7%、9月期に3%へ一時上昇後、来年には2%へ低下すると予測される。二コラ・ウィリス(Nicola Willis)財務相は利下げを歓迎し、企業成長や雇用創出、家計支援につながると強調。特に50万ドルの住宅ローン返済が1年前より隔週330ドル減少し、多くの家庭に恩恵が及ぶとした。小売業界からも歓迎の声が上がり、消費者信頼感の改善に期待が寄せられる。ただし住宅市場は雇用不安などから当面低調との見方が強く、経済見通しの不確実性が残る中、今後の政策判断は流動的で注目されている。
ニュージーランド郵便局、トランプ関税発動で米国への配送を一部停止
ニュージーランド郵便(NZ Post)は、米国のトランプ大統領による新たな貿易関税の影響を受け、8月中旬より米国本土およびアメリカ領への一部配送サービスを一時停止した。対象はアメリカンサモア、グアム、北マリアナ諸島、プエルトリコ、米領ヴァージン諸島などで、エコノミー便、追跡付きエコノミー、エコノミープラス、クーリエ、エクスプレスなどが利用不可となっている。例外的に、エコノミー書簡とエクスプレスによる文書配送のみ継続されている。NZ Postは、関税制度が整備されるまでの暫定的措置であるとし、利用者に理解を求めているが、再開時期は未定。8月29日以降、ビジネスアカウントを持つ事業者については、米国向け小包の発送が再開された。ニュージーランドから米国への輸出品には、当初発表の10%から引き上げられた15%の基本関税が課されることになっている。
運転免許証とWoFの電子化への審議開始
ニュージーランドで運転免許証をスマートフォンで利用できるようにする法案「The Regulatory Systems (Transport) Amendment Bill」が国会で審議入りした。現在は運転中に物理的な免許証の携帯が義務だが、新制度では電子版と紙版の両方が選べるようになる。免許証の定義を電子版に拡大するほか、身分証提示が必要な場面全般で利用可能とする枠組みを整える。また、車検(WoF)や登録証明(vehicle registration)も紙のステッカーからデジタル化へ移行可能とし、印刷・郵送にかかる年間1,700万ドルの経費削減が期待される。走行中に携帯電話で免許証を表示する矛盾を指摘する声もあるものの、政府は2026年半ばまでの導入を目指している。実現には時間を要するが、世界でも先進的な取り組みとなる見込みだ。運転免許証の電子化は、すでにデンマークや米国の一部州で導入済みである。
社会
全国的にホームレスが急増
キリスト教慈善団体の救世軍(The Salvation Army)や地域の住宅支援団体が協力する「全国ホームレスデータプロジェクト(National Homelessness Data Project)」による最新の調査によると、ニュージーランドでは現在1,000人に1人が住まいを持たず、深刻なホームレス問題が拡大している。救世軍は、政府が住宅政策を進めていることは評価しつつ、国としての統一的な対応を求めている。救世軍の調査では、2024年8月以降、社会開発省(MSD)が「自己責任によるホームレス化」として支援を拒否する件数が386%増加したことが判明。路上生活や車上生活が増加し、特に単身者や55歳以上の女性が脆弱な立場に置かれているという。救世軍は「すべての人が住まいと必要な支援にアクセスできる体制が必要」と訴え、緊急住宅の拡充や短期から長期にわたる支援サービスへの投資を提案している。
CensusAtSchool:全国調査で現代の子どもたちの姿が浮き彫りに
全国規模の教育調査「CensusAtSchool」によると、ニュージーランドの子どもたちの生活習慣が急速に変化していることが明らかになった。参加した約16,000人の小中高生の回答によると、最も人気のある食べ物は「寿司」であり、行きたい国のトップは「日本」、流行語としては「シグマ」が最も多く挙げられた。テクノロジー利用は学年が上がるにつれて増加し、高校3年生女子は平均1日4時間以上画面を見ている。SNSの利用状況では、TikTokが日常的使用率でトップ、YouTubeは週単位で最も利用されている。さらに、約4割の高校生がChatGPTを使ったと答え、AI利用も広がりを見せている。半数の子どもが楽器を演奏でき、ピアノやギターが人気がある。7割以上が犬や猫、鳥やウサギなどのペットと暮らしている。将来なりたい職業では弁護士が最も多く、医師、獣医、教師が続いた。
生活
食品価格、7月に前年比5%上昇
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2025年7月までの1年間で、食品価格は前年同期比5%上昇した。主因は乳製品価格の高騰で、牛乳は16%増、バターは42.2%増、チーズは29.5%増となった。2020年以降で牛乳価格は約34%上昇している。肉類も大きく値上がりし、牛ひき肉1kgは21.97ドルに達した。果物・野菜は年7.3%、外食・惣菜は2.2%、清涼飲料は4.4%上昇。食品以外では、家賃が2.4%、たばこ類が4.8%、アルコールが0.9%上昇した一方、ガソリンは3.7%、ディーゼルは7.2%、国内航空運賃は5%下落した。国際航空運賃は7.1%増加している。物価全体の高騰は依然続くが、2011年以来最も緩やかなペースとなった。こうした状況を受け、「政府は不動産投機家やたばこ業界には手を差し伸べているが、庶民の生活費を下げる努力をしていない」と非難する声もある。
ニュージーランドの有給休暇制度、世界的に見ても恵まれている
ニュージーランドは、世界的に有給休暇制度が比較的手厚い国の一つとされ、Moorepayの国際調査で187か国中14位にランクインした。ニュージーランドの平均的な労働者は年次有休暇給20日+祝日11日を得ており、金額に換算すると約8,405ドル相当となる。最も手厚いのはルクセンブルクで、26日の年次休暇と11日の祝日により平均19,264ドル相当を得ている。隣国オーストラリアは平均8,872ドル相当の合計29日。米国は全国的な有給休暇・祝日の法律がなく、雇用主と労働者の契約に依存するため、制度面で最下位に位置した。英国や日本、オランダなどは祝日が無給であるが、年次有給休暇は、英国では28日、日本では10日が法定で認められている。専門家は有給31日は悪くないと評価する一方、若い世代はより多くの休暇を重視しており、人材流出につながる懸念も指摘されている。
2025年ニュージーランド最高のトースティは
ニュージーランドのトーストサンド選手権「Great NZ Toastie Takeover 2025」で、オークランド・ニューマーケットにあるカフェ「Toast on the Green」が初優勝を果たした。同店の「McChickle & Bacon」は、チキン、ベーコン、バーガーソース、アメリカンチェダー、ピクルスペスト、マクルーア社のブレッド&バターピクルスを組み合わせたトースティ。審査員は「多彩な味を見事に調和させた、パンチのある美味しさ」と絶賛した。今年の大会には過去最多となる全国208店が参加し、審査員団もその創意工夫と味の豊かさに驚いたという。Toast on the Greenシェフのマイク・シャンク(Mike Schank)はカナダ出身で、感謝祭の食卓をヒントに創作したと語り、喜びを表した。この受賞はオークランド勢として初めてであり、優勝メニューは同店で9月後半まで提供される予定だ。
日焼け止めの多くが宣伝通りの保護効果なし
6月にオーストラリアの消費者団体Choiceが実施した調査で、20種類をテストしたところ、そのうち16種類がSPFの基準を満たしていないことが指摘された。この調査結果を受け、ニュージーランドの化粧品小売大手Meccaは日焼け止めブランド「Naked Sundays」の人気商品「SPF50+ Collagen Glow Mineral Sunscreen」を販売を停止した。同社はリコール義務はないものの、顧客保護のため自主的に販売停止を決定。購入者が申し出れば返金するというが、SNS上では「消費者に十分に説明せず、密かに販売を中止した」との批判も広がっており、検査基準や企業姿勢への不信感が強まっている。別ブランド「Ultra Violette」のSPF50+商品は、実際にはSPF4しかなかったことが発覚し、謝罪の上で回収に至った。同調査で効果が認められたのはCancer Council Kids Sunscreen SPF 50+など4製品のみだった。
芸能・スポーツ
世界水泳選手権:ニュージーランド選手が健闘
7月から8月にかけてシンガポールで開催された世界水泳選手権(World Aquatics Championships)で、ニュージーランド勢はメダル獲得こそならなかったものの健闘を見せた。エリカ・フェアウェザー(Erika Fairweather)選手は女子200m自由形決勝に出場し、6位に入賞。序盤50mを3位で折り返し、レーン3から終盤まで上位を追走したが、最後の50mでスピードを維持できず、6位でフィニッシュした。フェアウェザー選手は女子800m自由形でも7位に入賞した。ルイス・クラレバート(Lewis Clareburt)選手は、得意種目の400m個人メドレーでは決勝進出を逃すも、男子200m個人メドレー決勝では堅実な泳ぎで自己新記録兼ニュージーランド新記録となる1分57秒06をマークして5位に入賞した。同大会で、日本勢は金メダルは逃したが、銀メダル3、銅メダル1を獲得している。
ジェームズ・キャメロンがニュージーランド市民権を獲得
『アバター』や『タイタニック』で知られる映画監督のジェームズ・キャメロン(James Cameron)氏が、ニュージーランド市民権を取得したことが明らかになった。カナダ出身のキャメロン氏は、数々の歴代興行収入上位作品を手掛け、資産は約13億ドルとされる。撮影をきっかけに2012年からニュージーランドに土地を購入し、妻スージー・エイミスと子ども達と共に生活の拠点を築いてきた。現在はウェリントンの高級住宅地ロゼニース(Roseneath)に邸宅を持ち、ワイララパ(Wairarapa)地方にも農場用など30以上の土地を所有している。キャメロン氏は今年公開予定のシリーズ第3作目『Avatar: Fire and Ash』のポストプロダクション作業を進める一方、今後の全作品をニュージーランドで制作すると公言している。市民権取得の動機のひとつには、アメリカ政治への不満もあるとの見方もある。
イライジャ・ウッド「アルマゲドン・エキスポ」30周年記念イベントへ
今年10月にオークランドで開催されるニュージーランド最大のポップカルチャーイベント「アルマゲドン・エキスポ(Armageddon Expo)」に、映画『ロード・オブ・ザ・リング』などの豪華俳優陣が、同イベントの30周年を記念して来場することが発表された。『ロード・オブ・ザ・リング』のイライジャ・ウッド(フロド役)とアンディ・サーキス(ゴラム役)、『ホビット』のエヴァンジェリン・リリー(タウリエル役)とグレアム・マクタヴィッシュ(ドワーリン役)、『スター・ウォーズ』のジョン・ボイエガ(フィン役)、アニメ『バッド・バッチ』のミシェル・アング(オメガ役)など世界的スターが一堂に会する。アルマゲドン・エキスポは1995年にSFとトレーディングカードの小規模イベントとして始まり、現在では映画、ゲーム、アニメ、コミック、コスプレまで網羅する大規模な祭典に成長した。
海外サッカー:クリス・ウッドがプレミアリーグ年間ベスト11に選出
ニュージーランド代表FWクリス・ウッド(Chris Wood)は、2024-25シーズンにイングランドのプレミアリーグ、ノッティンガム・フォレストで20得点を挙げた活躍が評価され、イングランド・プロサッカー選手協会(PFA)のプレミアリーグ年間ベストイレブンに選出された。フォワード枠で選ばれたのはウッドのほか、リバプールのモハメド・サラーとニューカッスルのアレクサンダー・イサクの2名。ベストイレブンには他にリバプールからファン・ダイクら、アーセナルからサリバ、ライス、ノッティンガムからGKマッツ・セルスなどが選出された。イサクは得点ランキング2位でも表彰されている。女子部門では、アーセナルを欧州制覇に導いたスペイン代表マリオナ・カルデンテイが年間最優秀選手、同じくアーセナルのオリビア・スミスが女子若手最優秀選手に選ばれた。