ニュージーランドニュース「移民の搾取的雇用に罰」ほか

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政策の優先順位を見直し

この国の新たなリーダーとなったヒプキンス首相は、就任の挨拶で政策の優先順位を見直すと表明した。この発言は、人気が衰えた前政権の政策を修正し総選挙に向けてチューニングするとともに、アーダーン前首相と異なる独自色を印象づけるための戦略的発言と受けとめられた。実際、首相に就任して最初に出向いたのはオークランドのビジネスリーダーたちとの会合であり、産業重視の姿勢を示した。また、インフレや生活費の高騰対策を重点施策にすると表明するなど「経済重視」に軸足を移した。ヒプキンス政権成立後に実施された世論調査では、労働党の支持率が5ポイント上昇しており、首相の交代は功を奏した形だ。両陣営の支持率は拮抗状態に戻った。

未曾有の台風、被害甚大

先月中旬、大型の強い勢力をもったサイクロン「ガブリエル」が北島の北東部に接近し、オークランド、ホークスベイ、ギズボーンなどの地域に洪水やがけ崩れ、停電などによって甚大な被害をもたらした。政府は、クライストチャーチ震災と新型コロナ禍に次いで3度目となる国家非常事態宣言を発出し、救援に当たったが、被害の規模が大きく復旧にはかなりの時間と費用がかかる見込みだ。被害総額は130億ドルと概算されている。政府は寸断された道路の復旧など交通の整備に2億5000万ドルを投入すると共に、農家や事業者向けに5000万ドルの救援基金を振り出すとした。大規模な自然災害の頻発は、災害に強い国土と都市づくりに教訓と課題を残している。

最低賃金22ドル70に

4月1日から最低賃金が1ドル50セント引き上げられて22ドル70セントになる。上昇率は7%で、この間のインフレ率7.2%にほぼ合致している。ヒプキンス首相は、この賃上げが物価上昇に寄与する度合いは無視できるほど小さいと述べた。2007年の最低賃金が11ドル25セントだったので、この16年で2倍になった。日本と比べると、2007年の日本の最低賃金︵全国加重平均)は678円で、同年のニュージーランド最低賃金とほぼ同額だった。それが現在は40%増の同961円になっているが、NZドルの対円レートが3割上昇したこともあり、ニュージーランドの最低賃金の約半分になってしまった。この賃金差によって「海外出稼ぎ」という言葉が日本で流行しつつある。

移民の搾取的雇用に罰

クライストチャーチ地方裁判所で先月、インド料理店の元経営者2人が、移民搾取の罪で有罪となり未払い賃金など合計12万4400ドルの支払いを命じられた。同店では最低賃金を下回る雇用やホリデーペイの未払い、就労ビザの要件を満たすために賃金の架空水増しが行われていた。母国との労働条件の格差と被用者の無知を利用して、違法な労働条件で移民を働かせる犯罪は後を絶たず、昨年だけでも200件の苦情が関係当局に寄せられたという。政府は、移民労働者に対する搾取的雇用をなくすために雇用者の認定制度を昨年導入したほか、通報制度を整備した。もし搾取的労働を見聞きした時は、クライム・ストッパーPh0800555111への通報が奨励されている。

Text:Kazzy Matsuzaki 

2023年3月号掲載