Good Kiwi Tucker! vol.185「おばあちゃま直伝!?難読レシピのマッシュルーム ・マリネ」

Good Kiwi Tucker! GOURMET

二ュージーランドは、手に入るキノコの種類が少ないのがちょっとつらい。この国でキノコと言ったら白か茶色のボタン・マッシュルームか、大きめで平たいポートベロ・マッシュルームぐらい。ぜいたくしてもいい覚悟なら、高級シイタケ・マッシュルームも生で手に入るけれども、もっと気軽でなきゃ嫌だ。

ふつうの白いマッシュルームだと、食べ方のバリエーションもイマイチだし、ニュージーランドのキノコつまんなーい!と、なんにも知らずに思っていた、遠い遠い夏の日。とあるおうちの持ち寄りバーベキューに呼ばれたわたしは、一つのサラダボウルに目を留めた。真っ黒い汁に、まるごとのマッシュルームだけがボッコボコと浮かんだ…サラダ?マリネ?なにしろ、めっちゃ黒いビジュアルにビビりつつも、食べたことのないものは一度は口にしたいもの。おいしそうに焼けた分厚いステーキの横に、その黒い物体も盛り付けてみたのだった。

そしてお肉をかじったあとに、そのマッシュルームを食べてみたら!「んー!」とうなるほどイイ味なのだ。もとはただの白のマッシュルームのはずが、まろやかに甘くて酸っぱくて、サッパリしてしかもコクがあって…とにかく肉料理にぴったりの味がギューっとしみているのである。思わず「これおいしい!作った人誰かな?作り方が知りたい!」と、パーティの主に聞いてみたら、たまたまその人が作った本人だった。そしてわたしのあまりのホメように気を良くしたのか、すぐにメモ用紙を取ってきてサラッサラ〜と何か書いて渡してくれた。やったー、レシピゲット!わたしは小躍りしながら家に帰った。

ところが…このレシピというのが、おばあちゃまの走り書きとあって、昔風の筆記体のくずし字というやつ⁉達筆すぎてところどころ読めないの

読めたよ できたよ!
イラスト リカ

である!かろうじてブラウン・ビネガーというつづりは読めたが、そんなの持ってないから買わないと…などとグズグズするうちに作る機会を逸してしまうし、いつバーベキューにお呼ばれしてもその真っ黒マッシュルームは必ず出てくるものだから「自分で作ることもナイかな〜」と優しいおばあちゃまに甘えてしまい、結局レシピは長い間お蔵入り状態になってしまったのだ。

そうしている間に時は流れ、おばあちゃまは去年、わたしがレシピを聞こうにも聞けないお空に行ってしまった。それで今年は意を決して、あのメモ紙を引っ張り出し解読にいそしむことになった。ウー…文字そのものは読めたけれど、実は材料の書き方も難解だった。ブラウン・ビネガーとはモルト・ビネガーでいいのか。オイルとしか書かれていないのはサラダ油?量の“ダッシュ”とは少々、という意味か…。そもそも、このマリネ液に、マッシュルームをどれだけ入れるのかという、一番肝心のことが書いてないし!

かなりの当てずっぽうではあったものの、おばあちゃま製にほぼほぼ近い形でマッシュルーム・マリネは完成した。真っ黒だししゃれたものは入っていないのに激うま…。もともとマッシュルームの食べ方としてマリネは人気らしく、今だったらオイルやハーブにもっと凝った、よりヘルシーなマリネのレシピがいくらでも出てくる。でも、わたしにとってのマッシュルーム・マリネはきっと永遠にコレであり続けるのだ。この国のキノコの種類の少なさなんか、なんでもないよ…ありがとう〜!(と空に叫びたい)。

*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味

マツザキ リカ

ニュージーランド在住25年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!


2021年9月号掲載

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