2023日本語スピーチコンテスト大学生部門 優勝 Liza Yooさん

JSANZ主催・2023日本語スピーチコンテスト大学生部門 優勝 Liza Yooさん EDUCATION

受賞者からのコメント

 JSANZコンテストで入賞できたことに感謝しています。この機会を通じて、自身と周囲の人たちについて振り返る貴重な機会が得られ、色々考えさせられました。練習中にはよく言い間違えたり、ペースが乱れていたりして、本番では上手くいくか不安でしたが、周りの応援とサポートに支えられ、無事自分の思いを伝えることができて嬉しいです。これからも日本語を頑張っていきたいと思います。

2023日本語スピーチコンテスト大学生部門 優勝 Liza Yooさん
優勝 Ms. Liza (Sua) Yoo・University of Auckland

「人との繋がりの大切さ」

 皆さんにとって生きていく上で最も大切な物は何ですか? 今皆さんの頭にパッと思い浮かんだ物を当ててみます。「お金」を思い浮かべた方が多いのではないでしょうか?お金は確かに生きる上で必要なものとされています。ある調査によると約3割の社会人が人生で最も大切なのはお金だと答えています。しかし、お金で買えない物もあります。それは人との繋がりです。

 中学の頃、私は政府から提供された施設でリハビリをしているコミュニティでボランティア活動をしました。最初は母について行くだけでしたが、皆と会話を進めるうちに心が温かくなりました。手を差し伸べると皆が喜んでくれる姿を見て、喜びは共有すれば倍になると気づきました。彼らは政府から支援を受けていてお金には不自由していなくても人と繋がることが恋しかったのかもしれません。これらの人たちの変化を見て、私は人との繋がりの大切さを学びました。また、それは幸せな人生と良い生活の始まりだと感じ始めました。

 ですが、最近世界中で人との繋がりを大切にする人や他人を気にかける人が減少しているという傾向があるようです。ニュージーランドでも、冷たい人や困っている人を気にしない人が増えたと感じませんか?それは個人主義の考え方が強まっているからだと思います。個人主義は他人より個人の権利、幸福、自由などを重視する考え方のことを指します。本来、個人主義とは個人の発言や意見を尊重するというものです。しかし、今は自分にとって都合がいいように個人を優先する傾向があります。個人主義が強まっているということは、自分だけの為に行動する人が多くなり、他人や困っている人を気にかけない人が増加しているということでもあります。ニュージーランド、特にオークランドでよく見られることは困っている人を見ても、何もしないで通り過ぎることです。例えば、警察による社会実験ではオークランドの都心でゴミ箱を漁っている少年を数百人が無視したことが分かりました。このように、個人主義が広がって人と関わることを大事に思わない人が増えてしまうと多くの人が傷つく事になります。このような個人主義的な行為をただただ容認してしまっては、本当に皆の、社会のためにならないのではないでしょうか。

 皆さんはコロナウイルスが蔓延する前と現在とで何か人間関係に変化を感じたことはありませんか?コロナウイルスは今の時代の個人主義に大きく影響を及ぼしました。一人は皆の為にと教わったのに皆が疑いあって周りを気にかけず、離れていく時代になってしまっています。思いやりや助け合いが馬鹿らしく見えてくるのなら、もしかしたら、一番蔓延してしまったのは私たちの個人主義的な考え方かも知れません。皆が離れていっている今の時代だからこそ、重視すべきことは人との良い関係を築くことです。コロナの蔓延はもちろん、洪水などの自然災害が頻繁に発生しているこのオークランドでも周囲との繋がりを大切にすべきです。
私たちの言動は常に誰かに影響を与えています。誰かの助けになれる反面、誰かにとって苦痛になることがあるかもしれません。誰かが困っていれば、大丈夫?と聞くだけで救われる人がいるかもしれません。私たちは周りの人との関係が他人にどのように影響するか忘れがちです。みなさんも誰かの助けを必要としている人を見過ごしてはいませんか?自分のことばかりではなく、優先すべきことは何なのか一緒に考えてみましょう。

 ご清聴ありがとうございました。


※スピーチ内容、コメントは原文のまま掲載しています。

JSANZからのコメント
 ビデオ投稿による大学生スピーチコンテスト(Tertiary Japanese Language Speech Contest)は、今年で10年目を迎え、国内の大学から選抜された9人のファイナリストの中から選ばれた入賞者の受賞式が先日オークランド大学で行われました。このコンテストは、ニュージーランド初の大学生による日本語スピーチコンテストとして、ニュージーランド日本研究学会(JSANZ)により2014年に立ち上げられたもので、学習者の学習意欲と日本語能力を高める動機づけとなり、同時に大学間、教員、学生、またスポンサーを含めた支援者とのつながりを生み出すことを発足の意義としています。寄せられるスピーチの質は高く、毎回メッセージ性の非常に高いスピーチが流暢な日本語で語られます。2018年より二水会のご厚意により一位受賞者には日本への往復航空券が送られるという大きな魅力もあり、日本語学習者の大きな目標となっています。

2024年1月号掲載

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