OCR再引き下げにより、主要銀行の利下げ相次ぐ
5月28日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)がOCR(政策金利)を0.25ポイント引き下げ3.25%に設定したことを受け、6月に主要銀行が相次いで金利を引き下げている。ウェストパック銀行、ANZ、BNZ、ASB、Kiwibankの各行は、6カ月や18カ月、2年といった期間の固定住宅ローン金利と、定期預金金利を相次いで引き下げ。2022年4月以来の低水準金利が実現している。銀行側は、金利低下が家計や企業にとって負担軽減になると述べ、50万ドルのローンで年間1万ドル以上の負担軽減となることもあるため、顧客に自身のローン条件を見直すよう呼びかけている。住宅市場活発化の動きがあるため、店舗の営業日を拡大する銀行もある。世界的な経済減速の懸念から、OCRは年末までにさらに2.75%または2.5%まで下がるとの予測もある。次のOCR発表は7月9日を予定している。
オークランドの不動産評価下落
6月10日、カウンシルのウェブサイトの「不動産の料金または評価額を検索する(”find your property rates or valuation”)」ページにて、オークランド市の最新の公示地価(CV)が発表された。2021年比で、住宅全体の平均価格は約9%下落した。ただし、市中心部の住宅は約14%下落した一方、郊外や農村部の住宅は比較的価値を維持し、場合によっては上昇した。地価の変動は税額に影響し、平均の9%よりも下落幅が小さい地域では、5.8%の税率引き上げにより実質的に納税額が増える。一方で、下落幅が大きい地域では税負担が軽減される。今回の評価は実勢価格の推定や保険・ローンには使えないが、税負担の公平な配分に用いられる。市は2021年の評価が市場のピーク時に行われたこと、現在は高金利による価格下落が反映されていると説明している。CVへの異議申し立ては7月25日まで可能。
男女平等:ニュージーランドが4年ぶりに世界ランキング低下
ニュージーランドは、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書(Global Gender Gap report)」で4位から5位に後退し、4年連続の後退となった。報告書は教育、健康、経済、政治の4分野で男女平等の進捗を評価し、ニュージーランドのスコアは83.5%から82.7%に低下。主な要因は、政治分野での女性の代表数減少で、特に閣僚の女性比率が影響した。2023年の総選挙後、女性議員数が減少し、現在の閣僚14人中女性は4人のみ。さらに政府が急ぎ可決した新たな賃金公平性法は、請求基準を厳格化し、比較対象の職種を限定する内容で、野党や労働団体から「女性への逆行」と反発が起こった。一方、女性担当大臣は、政府が提供する男女賃金格差ツールキットを活用することで、企業・団体・政府が一体となって女性の地位向上の長期的な改善を目指す姿勢を示している。
デスティニー教会のブライアン・タマキ氏、「外国」宗教に抗議
6月21日、デスティニー教会(Destiny Church)の指導者ブライアン・タマキ(Brian Tamaki)氏が、オークランド中心部で「信仰・国旗・家族(Faith, Flag and Family)」をテーマに抗議行進を実施し、ニュージーランドでの非キリスト教宗教の拡大を批判した。タマキ氏は、これらの宗教がビジネスや雇用を掌握し、国を侵食していると主張。約500人が黒い服で参加し、イスラム教、仏教、シーク教、パレスチナの旗を破り踏みつけるなど過激な行動を取った。女性がブルカを脱ぎ捨てるなど挑発的パフォーマンスもあり、群衆からは「殺せ」といった過激な発言も飛び出した。反対派の抗議者との衝突を防ぐため、警察は列を作って両者を分離。報道陣への妨害もあり、現場では混乱が見られた。タマキ氏は過去にも過激な活動で批判を受けており、今回の行動にも強い懸念の声が上がっている。
米軍のイラン核施設攻撃:原油やKiwiSaverに影響、ニュージーランド経済が危機に
6月22日、アメリカのトランプ大統領は、米軍がイランの主要核施設3カ所への空爆を実施したと発表した。イラン政府は、今回の攻撃によって外交の扉は閉ざされたとし、対話の余地は当面ないと表明、米国およびイスラエルへの報復を予告した。フランスをはじめ欧州各国は事態のエスカレーションを懸念し、自制を呼びかけている。これに対応してニュージーランド政府は、在留ニュージーランド国民を避難させることを目的に、国防軍の航空機を中東に派遣している。専門家は、この中東情勢の緊迫化がニュージーランド経済にも深刻な影響を与える可能性があると警告。燃料価格の高騰や、KiwiSaver残高など金融市場の不安定化が懸念されている。短期的には市場の動揺やインフレ圧力が高まり、輸入品価格も上昇する可能性があるとしつつ、長期投資においては冷静さを保つよう呼びかけている。
イケア・ニュージーランド、開業前に500人を雇用へ
イケア(IKEA)は2025年末にニュージーランド初の店舗をオークランド・シルビアパークに開業予定で、採用人数を当初の400人から500人に増やすと発表した。5月25日時点で1万5千件以上の応募があり、すでに66人を採用したという。採用活動は2023年から始まり、まずは上級管理職20人を採用。2024年には物流や倉庫スタッフ、さらに今年4月以降はショールーム、レストラン、インテリア、販売、管理職など幅広い職種の募集も開始された。イケアでは従業員を「共に働く仲間(co-workers)」と呼び、成長を重視。福利厚生も充実しており、年5週間の有給休暇、育児・家族・地域活動のための休暇、15%の社員割引などが用意されている。7月には、オークランドで巨大な六角レンチを使ったインタラクティブな求人広告を展開予定で、インスタレーションに参加するとIKEAグッズがプレゼントされる。
社会
2025年国王誕生日叙勲:約190名が叙勲、新たに6名がデイムとナイトに
今年の国王誕生日叙勲(King’s Birthday Honours)では、約190人が各分野での貢献により表彰された。デイム(Dame)に叙されたのは、元馬術選手で脊髄損傷後にCatWalk財団を設立したカトリオナ・ウィリアムズ(Catriona Williams)、民族支援や家庭内暴力防止で知られるランジナ・パテル(Ranjna Patel)、植物学者アリソン・スチュワート(Alison Stewart)の3名。ビジネスと慈善活動で功績を挙げたブレンダン・リンジー(Brendan Lindsay)、裁判官マーク・クーパー(Mark Cooper)、観光業に貢献したエワン・スミス(Ewan Smith)の3名はナイト(Knight)に叙された。その他、元財務相ルース・リチャードソン(Ruth Richardson)、オリンピック自転車選手エリース・アンドリューズ(Ellesse Andrews)、子ども向け司会者スージー・ケイトー(Suzy Cato)など、多彩な顔ぶれが功績を称えられた。
宇宙に行った初のニュージーランド人:起業家マーク・ロケット
クライストチャーチの航空宇宙起業家マーク・ロケット(Mark Rocket)氏が、Blue Origin社のNS-32ミッション(宇宙観光プログラムの弾道飛行)で宇宙へ飛び立ち、ニュージーランド人初の宇宙旅行者となった。飛行は米テキサス州から行われ、高度105kmに到達、約11分間のサブオービタル飛行で無重力も体験。ロケット氏は、ニュージーランド創業の航空宇宙企業「Rocket Lab」元共同ディレクターで、リモート航空機開発「Kea Aerospace」の創業者でもある。幼少期から宇宙への憧れを持ち続け、25年前に「ニュージーランド初の宇宙飛行者になる」と誓っていた。飛行中には5Gの重力を感じる場面もあったが、「想像以上に素晴らしい経験だった」と語る。同氏は「宇宙はもはや超大国だけのものではなく、ニュージーランドも貢献できる」と強調。今後の再挑戦にも意欲を示している。
NBR富豪リスト: ニュージーランドで最も裕福な人々
最新のNBR(National Business Review)長者番付によると、おもちゃメーカーZuruの創業者ニック&マット・モーブレイ(Nick and Mat Mowbray)兄弟が、推定純資産200億ドルでニュージーランド一の富豪の座を維持した。元トップのグレイアム・ハート(Graeme Hart)氏は121億ドルで2位、映画監督ピーター・ジャクソン(Sir Peter Jackson)とフラン・ウォルシュ(Dame Fran Walsh)夫妻は26億ドルで5位に入っている。Zuruの共同創業者である妹アンナ・モーブレイ(Anna Mowbray)氏は、5億ドルで47位に入り、女性個人では2番目の資産家となった。女性部門「Women’s List」も初めて発表され、中国出身でフィンテック企業Airwallexを共同創業したルーシー・リウ(Lucy Liu)氏が7億ドルで女性1位に。2025年版長者番付には計119人・家族が掲載され、総資産額は1,021億ドルに達した。
ニュージーランドの罠猟師が「アローン:オーストラリア」で優勝
ベイ・オブ・プレンティ東部の罠猟師シェイ・ウィリアムソン(Shay Williamson)氏が、オーストラリアのリアリティ番組「アローン:オーストラリア(Alone: Australia)」シーズン3で優勝し、賞金25万豪ドル(約2,700万円)を手にした。家族への思いを支えに、過酷なタスマニアの自然で76日間の孤独なサバイバルを最後までやり遂げ、番組史上初のニュージーランド人優勝者となった。過酷な環境下で住居を失い、ミミズや草の根を食べながらも生き延び、最後には素手で小型有袋類pademelonを捕まえる場面も。賞金は住宅ローンの返済に充てる予定で、今後は家族と自然の中で過ごす時間を大切にしたいと語る。また、自身のYouTubeチャンネルで自然との関わりを発信し続ける意向もある。番組への応募を検討する人には「本当に孤独に耐えられるか試してみるべき」と助言している。
Smith & Caughey’s閉店
オークランド中心部で145年の歴史を持つ老舗百貨店Smith & Caughey’sが、2025年6月15日16時をもって閉店した。当初予定では閉店日は7月31日の予定だったが、6週間前倒しされた。閉店の背景には、経済の不確実性、駐車場の高騰、道路工事、市内鉄道リンクの進行遅れなどの要因があったという。2024年5月に閉店検討が始まって以降、経営陣はあらゆる可能性を模索したが、コロナ後の在宅勤務の定着や、ショッピングモールの台頭も影響し、業績の回復が困難になり、苦渋の決断に至った。98人の従業員が解雇される。閉店セールが一時は混乱を伴いつつ実施され、多くの顧客が思い出を語り惜しんだ。閉店直前には創業者マリアン・スミス(Marianne Smith)に敬意を表した最後のショーウィンドウ展示も公開され、来店客に感謝を伝えるとともに、店舗の歴史と価値観を振り返る機会が設けられた。
生活
ニュージーランド航空、一部便でスターリンクWi-Fiを試験運用
ニュージーランド航空は、国内線航空機で「スターリンク(Starlink)」を用いた機内Wi-Fiの試験運用を開始した。対象はエアバスA320型機「ZK OXE」で、ATR航空機にも導入を予定している。ニュージーランド航空は、世界で初めてターボプロップ機での機内Wi-Fi導入を試みる航空会社となる。これまでWi-Fi非対応だった航空機に、高速・低遅延のインターネット接続を提供し、乗客が自宅のリビングにいるかのように動画視聴や文書編集、ゲームなどを快適に楽しめることを目指す。試験期間中は無料で利用でき、乗客のフィードバックを元に今後の本格導入を検討するという。スターリンクはイーロン・マスク氏が設立したSpaceX社の衛星インターネットサービスで、2021年にニュージーランドでサービスを開始し、遠隔地にも高速通信を提供しており、現在は約3万7,000人の利用者がいる。
オークランドの「名物グルメ」100選
カウンシルの委託を受けタタキ・オークランド(Tātaki Auckland Unlimited)が毎年調査しているオークランドの「Iconic Eats Top 100(象徴的な料理100選)」が今年も発表された。今年は39の新規店舗と77の初登場メニューを含む過去最多の3,019件の応募がある中、ピーナッツバタームースパイやクレイフィッシュのエクレア、生ラーメンなど、多彩な料理が入選。このリストはオークランドの食文化の多様性と質の高さを称えることを目的として選出・発表され、高級レストランから屋台、フードトラックまで幅広く対象としている。料理だけでなく、食を通して語られる家族や思い出のストーリーも重視されている。2020年の開始以来毎年選ばれている、ノースショアのカフェSugar at Chelsea Bayの「ラズベリーラミントン」とレストランDepotの「フィッシュスライダー」は、今年も入選した。
南島最大のPak’nSaveが10月にオープン
ニュージーランド南島最大のPak’nSaveが、カンタベリー地方セルウィン(Selwyn)地区のロールストン(Rolleston)に当初の予定より2か月早い10月14日に開店する。店舗面積は8,100㎡、総工費は4,000万ドル以上で、約250人の雇用を創出。太陽光パネル、EV充電器、自然冷媒、LED照明など最新の省エネ設備を備え、地域の成長に対応した持続可能な設計だ。レジは有人8台、セルフ18台、スキャナー60台と「クリック&コレクト」にも対応。地域住民の買い物の利便性の改善や価格競争、若者の雇用機会も期待されている。オーナーは長年の経験を持つブラックバーン(Blackburn)夫妻で、「単なるスーパーではなく、地域の人々に雇用とキャリアの機会を提供する場にしたい」と語っている。また、店舗は災害時も稼働できるIL3基準で建設され、緊急時には物資供給拠点としても活用される予定だ。
芸能・スポーツ
ジャシンダ・アーダーン元首相の人生を描いたドキュメンタリー映画
ニュージーランド第40代首相のジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)氏のドキュメンタリー映画『首相(Prime Minister)』が公開される。アーダーン氏の波乱に満ちた政権時代の裏側を、パートナーのクラーク・ゲイフォード(Clarke Gayford)の撮影による家庭的で私的な300時間もの映像を通じて描く。映画では、政権中の緊張や母としての苦悩、辞任に至るまでの心境が、映像日記やインタビューを通して赤裸々に語られる。育児と政務を同時にこなす姿や、パンデミック下の厳しい批判、心ない攻撃に苦悩する様子なども含まれる。アーダーン氏は2023年に「燃え尽きた」として辞任し、その後米国ハーバード大学で研究職に就いた。現在は思いやりあるリーダーシップの推進や過激主義対策の活動に注力している。政治への再出馬は否定しており、夫と娘とともに穏やかな生活を模索中だという。
スーパーラグビー・パシフィック:クルセイダーズがチーフスを破り優勝
6月21日に行われたスーパーラグビー・パシフィックの決勝戦で、クルセイダーズ(Crusaders)がチーフス(Chiefs)に16対12で勝利し、優勝した。昨年はプレーオフ進出を逃し7連覇が途切れたことで、監督ロブ・ペニー(Rob Penney)が批判を受けたが、今年見事な復活を遂げた。試合はクライストチャーチでで行われ、クルセイダーズはホームでのプレーオフ無敗記録を32試合に更新。これに対しチーフスは過去5年で4度目、3年連続の準優勝となった。前半はチーフスが優勢で、プロップのジョージ・ダイアー(George Dyer)が先制トライ。クルセイダーズはフッカーのコーディー・テイラー(Codie Taylor)がトライを返し、前半を13-12でリードした。後半は両チームとも得点が伸びず、終盤にリヴェス・レイハナ(Rivez Reihana)のペナルティキックでリードを広げ、そのまま逃げ切った。