ハーグ条約:日本に住む親に母子で会いに行きたいのですが元夫の許可をいちいち取る必要がありますか?

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2021年12月号掲載

「困ったときの法律駆け込み寺」日本とは勝手が違い、戸惑うことも多いニュージーランドの法律。現役弁護士がお答えします。

離婚したキーウィの夫との間に7歳と10歳の子どもがいます。
日本に住む親に母子で会いに行きたいのですが、元夫の許可をいちいち取る必要がありますか?
ハーグ条約上、取り締まられてしまうのでしょうか?

ハーグ条約*¹という言葉はご存知の方は多いかと思います。外務省のホームページでは、「国境を越えた子供の不法な連れ去り(例:一方の親の同意なく子供を元の居住国から出国させる事)や留置(例:一方の親の同意を得て一時帰国後、約束の期限を過ぎても子供を元の居住国に戻さない事)をめぐる紛争に対応する為の国際的な枠組みとして、子供を元の居住国に返還する為の手続や国境を越えた親子の面会交流の実現の為の締約国間の協力等について定めた条約」と説明されています。

日本は2014年から締約国となり、子どもが配偶者の自国に連れて行かれた場合連れ戻せるようになりました。これは逆もしかりです。以
下の3条件をすべて満たしている場合にのみ、当条約が適用されます。

  • 子どもが通常生活している国(NZ)と、子どもが連れ去られた国(多くの場合、配偶者の出身国)の両方がハーグ条約に加盟していること。
  • 子どもが15歳以下であること。
  • 子どもが通常生活している国から片方の親に不法に連れ去られた、または留置されている場合。

例えば、離婚協議中や別居中に子どもを日本に連れて行く場合、配偶者から司法手続きに訴えられる可能性があります。海外渡航に合意していない配偶者が、子どもを連れ戻そうと過敏に反応し警察へ捜索願を提出すると、ICPO*²を通じて国際手配されたり、ニュージーランドに帰国時に誘拐の被疑者として逮捕されることもありえます。こうした場合に備えて事前に弁護士に相談し適切な対応をしてから帰国されることをお勧めします。

子どもを他国に連れて行かれてしまった場合には、弁護士に速やかに相談し、法務省と裁判所へ申し立て手続きを行います。同時に警察に捜
索願も提出できます。ここは時間との勝負という側面もあります。なぜならば、子どもが連れ去られた居住地の環境に適応していると見なされた場合には、現地の裁判所が申し立てを棄却できるからです。返還によって子どもに身体的または心理的な危害を及ぼす重大なリスクがある、子どもが耐え難い状況に置かれると判断される場合も棄却理由となります。

*1: 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」
*2: ICPO:国際刑事警察機構

※本記事はあくまでも法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用いただくためのものではありません。

Yuka Asari
弁護士
Yuka Asari
浅利 友香

オーストラリアでの弁護士キャリアを経て2020年にK3 Legalへ所属。
専門は会社法・商法・ 用法、主に企業担当。

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