今後のラグビーキャリアを豊かにする経験 NZ高校ラグビー大会速報

今後のラグビーキャリアを豊かにする経験 NZ高校ラグビー大会速報SPORTS

2022年10月号掲載

10月8日に開幕するラグビーワールドカップ2021ニュージーランド大会。2 大会連続5 回目の出場となる女子日本代表サクラフィフティーンの活躍が期待される。また、ニュージーランド国内では9月に高校ラグビーの全国大会が行われ、日本人選手が戦う姿も見られた。ヘイスティングス高校でスポーツコーディネーターとラグビー部2軍コーチを務め、7人制ラグビーの国際高校大会ではアジア系の選手が多く所属するNew Zealand Asian Barbarians(NZAB)を率いる名富朗さんに、両大会について詳しくお話しいただいた。

WSS経験者が戦う
女子ラグビーW杯

10月8日から11月12日まで、ニュージーランドで女子ラグビーワールドカップが開催されます。女子
代表チーム「サクラフィフティーン」には、過去に7人制の高校国際大会「ワールドスクールセブン
ズ(WSS)」に出場した加藤幸子選手、今釘小町選手、吉村乙華選手、松田凜日選手も選出されており、彼女たちの活躍に期待したいですね。WSSは世界トップの選手たちと競り合うので、若い選手にとってよい経験となり、成長につながったと思います。

ヘッドコーチのレズリー・マッケンジーは元カナダ代表。ニュージーランドでコーチ経験を積み、2019年に日本女子代表HCに就任しました。日本のように世界トップクラスとはいえないチームで、彼女のように情熱をもって指導し、レベルを引き上げてくれるコーチは貴重な存在。5月のオーストラリア遠征ではオーストラリア代表、フィジー代表に勝利するなど結果も出しています。今大会ではぜひ決勝トーナメントに進出してほしいですね。

また、7人制の女子日本代表サクラセブンズも、今年9月に行われたセブンズワールドカップで過去最高の9位となり、着実に力をつけています。WSS事務局も日本の女子チームには注目していますよ。12月のWSSには3年ぶりに高校女子日本代表の参戦が決まっており、この中から次のスター選手が生まれる可能性も大いにあります。

ウエストレイク高校が
強豪を下しトップ4へ初進出

9月9~11日に、パーマストン・ノースでニュージーランド高校ラグビーの全国大会が行われました。昨年と一昨年はコロナの影響でキャンセルになったので、実に3年ぶりです。大会を制したのはラグビー伝統校のハミルトンボーイズ高校。準優勝は同じく強豪として知られるネイピアボーイズ高校でした

ここまでは順当といえますが、ノースハーバーのウエストレイク高校がトップ4へ進み、3位となったのは注目したい点です。同校には前回のWSSでニュージーランド・アジアン・バーバリアンズ(NZAB)の一員として戦った日本人の加藤大冴選手と、中国人の血を引くアイザック・マレーマクレガー選手が所属しており、2人とも同校の1軍レギュラーとして活躍しています。

ウエストレイク高校はノースハーバー州予選を1位通過する実力校ですが、トップ4の常連であるオークランド代表のケルストン高校とは体格差もあり、歯が立たなかったんです。ところが今回はケルストン高校を破って初の決勝トーナメント進出。素晴らしい快挙です。準決勝ではネイピアボーイズ高校に大差をつけられて敗退したものの、試合中に加藤大冴選手が華麗なステップでよい動きを見せました。彼は2年連続で18歳以下のノースハーバー州代表に選ばれており、これからが楽しみな選手です。

現在ウエストレイク高校でプレーする加藤大冴選手
現在ウエストレイク高校でプレーする加藤大冴選手はNZABでも活躍
したメンバー。今年末のWSSでの活躍に期待が集まる。強豪ネイピアボーイズとの試合では、チームとしては実力差を見せつけられたものの、存在感のある高いパフォーマンスを披露した。
3位入賞という快挙を果たしたウエストレイク高校。高校全体で一体
となって応援し、勝利を喜びあった。応援では各高校のスクールカラーなどを身につけてサポーターが駆けつける。

南島のジョンマグラッシェン高校が同じくトップ4に初進出したのも印象的でした。ラグビー強豪校はマオリやアイランダー系の生徒が集まる北島に多く、この数年、南島との実力差が開いていたんですよ。ここ何年もトップ4の高校はほぼ固定されていたので、新しい顔ぶれが食い込んできたのはよいことです。いろいろな高校にチャンスがあると再認識できる大会になりました。今後はオークランドとノースハーバーの差も縮まっていくかもしれません。

留学は成長できる
環境選びが鍵

高校ラグビー留学では、主にエージェントが入学する学校を紹介します。しかし生徒自身が「どうしても
この学校に入りたい」と希望を出せば、基本的にどの高校でも受け入れ可能です。例えばプロ選手養成校ともいえるハミルトンボーイズ高校にも入ることができます。

僕自身、高校ラグビー留学をした経験から振り返ると、少しでも強い学校に入りたいという気持ちは理解できます。しかし、それほど上位でなくても設備が整っていて、日本人留学生のサポート体制があったり、インターナショナルラグビーアカデミーなどでラグビーできる機会を与えてくれたりする高校を選ぶ方がよいと思います。

ニュージーランドの高校のラグビー部には1軍から3軍まであり、例えばハミルトンボーイズ高校で1軍入りを果たすのはかなり大変です。最初のうちは英語の面でも苦労するし、ずっと1軍入りを果たせないとモチベーションが低下する子もいます。高校ラグビー留学では強豪校に入るよりも、高校3年間でどれくらい成長できるかが重要。将来に生かせるよう、本場でしっかり学んで経験を積んでほしいと思います。

名富朗ヘッドコーチ(写真左)
大阪府出身。6歳からラグビーを始め、ダニーデンのキングスハイスクールにラグビー留学。帰国後は中部大学に進み、卒業後、宗像サニックスブルースに入団した。豊田自動織機シャトルズで通訳を務めた経験も持つ。現在はヘイスティングスの高校でスポーツコーディネーター、ラグビー部の2軍コーチ、日本語教師として働いている。
中央:元ニュージーランドとサモアの7人制代表監督ゴードン・ティッチェン氏。ダイレクター・オブ・ラグビーとして参加。
右:アシスタントコーチのハレ・マキリ氏。
NZABのユニフォームは桜と龍というアジアらしいモチーフのデザイン。名富さんとマネージャーのブレッドがアイディアを出し合った。白を選んだのはスポンサーの名称が目立つようにとの配慮から。ソックスは乳がんをサポートする意味を込めてピンクにした。

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練習合宿やトレーニングジャージ作成の資金、ユニフォームへの名入れなどチームへのサポート等の申し出、お問い合わせは以下へぜひご連絡を!

名富朗(なとみ あきら)ヘッドコーチ
【Ph】027-560-1846 
【Email】aki10nato26@gmail.com 
【FB】NZAsianBarbariansRugbySevens

Text: Miko Grooby