サッカー元日本代表 高橋秀人さん ×
FIFAクラブW杯出場多数 岩田卓也さん
2023年にニュージーランドのクラブチームと海外移籍の調整をしている元日本代表の高橋秀人さん、そしてすでにニュージーランドのAuckland City FCでプレーしており、FIFAクラブW杯にも多数出場、2023年2月開催のFIFAクラブW杯2022にも出場中である岩田卓也さんのお二人に、日本からニュージーランドに渡り、プレーすることについてお話を伺った。
岩田 卓也
Takuya Iwata
ポジション:DF。2006年に岐阜FCに入団。オーストラリアに渡り2010年からエッジヒル・ユナイテッドFC、クイーンズランド・ブルズに加入後、ニュージーランドに移住し2012〜2019年オークランド・シティFC在籍。2020年からウェスタン・スプリングスAFC、日本に戻り、はやぶさイレブン、福井ユナイテッドFCを経て、2022年から再びオークランド・シティFCに加入。
高橋 秀人
Hideto Takahashi
ポジション:MF (DH) / DF (CB)。東京学芸大学在学中に選手として注目され、2010〜2016年FC東京所属し、この間2012〜2013年に日本代表としてプレー。2017年にヴィッセル神戸移籍し、2018〜2020年サガン鳥栖所属、2021〜2022年横浜FC所属となり、2023年ニュージーランドのクラブチームへ加入予定。日本プロサッカー選手会副会長や会長も務めた経験がある。
ニュージーランドのサッカー
日本ではサッカーというと、ゆるぎない人気のスポーツでJリーグというプロリーグもある。一方、ニュージーランドでメジャーなスポーツといえばラグビーという印象があるが、実は最近では競技人口はサッカーのほうが多いと言われている。ところが、ニュージーランドのプロフットボールクラブはオーストラリアのAリーグに参加しているウェリントンフェニックスのみで、他はアマチュアクラブという状況だ。ニュージーランドでサッカーをしてみて感じた日本との違いについて、お二人に聞いてみた。
高橋「考え方の違いを感じる場面は正直多いです。例えばポジショニングの意識。日本だったらチームのために相手ボールを取ろうとしてポジションを離れても助けに行くのは普通ですが、ニュージーランドではプレーヤー個人のポジションがはっきりしていて“常に一対一”をしている印象があります」
岩田「そうですね、キーパーの守る範囲に守備もあまり入らなかったり。また、身体のあたりも強く、近距離でフルスイングされることもあって驚きます」
高橋「フットサルに参加したとき、最初はプレーの違いに戸惑いましたが、点を決めるとメンバーがすごく受け入れてくれて(笑)ひとの温かさや優しさをすごく感じる一方で、プレーを通してニュージーランド人の“自分の活躍が一番大事”という考え方も感じますね」
岩田「試合でのクラブや監督のやることも違います。ニュージーランドでは試合後に監督たちが試合の感想やMVPを発表したり、ワインやバウチャーなどのプレゼント交換をしたりします。評価軸も違いがあり、日本ではナイスアシスト、ナイスセーブなども評価し、過程を見てプレーを修正したりしますが、ニュージーランドでは目立ってるひとが監督から評価され、あまり過程を見ない傾向があると感じますね。また、うまくいかなかったときに“unlucky”という言葉が多く聞こえてきます」
高橋「そうですね、実は僕自身はこの“unlucky”という言葉で片付けていいのかという疑問があって。失敗を修正していくことでレベルも上げていけると思うので」
岩田「そういった部分でも秀人さんとニュージーランドサッカーのプレースタイルを良くしていけたらと思っています!」
お国柄とも言えそうな違いがサッカーにもあるようだが、日本人選手が加入することで日本の“改善”文化がニュージーランドのプレースタイルにも生かされるかもしれない。
ニュージーランドでサッカーをする理由
Jリーグがある日本はサッカーキャリアの道も多いが、なぜニュージーランドでのサッカーを選んだのか、お二人に聞いてみた。
高橋「僕がニュージーランドを選んだのは岩田さんの存在が大きいのですが、海外でサッカーをするなら英語圏と思っていました。日本ではすべてが準備されてサッカーにのぞむ状況だった一方、ここではすべてゼロから悪戦苦闘するわけですが、できないからこそ価値があり、何か得るごとにすごく成長を感じられます。キャリアダウンという見方もあるかもしれませんが、自己表現をするニュージーランドという環境が自分にとっては新鮮で魅力を感じます」
岩田「日本では良くも悪くも当たり前が決まっていますが、ニュージーランドは周りがやってくれないことを自分で考えて臨機応変にプレーできるようになり、使われる選手から考えてプレーできる選手へと成長できました。これはサッカーだけでなく人間としての成長でもあって、日本のサッカーのレベルは高いと言われますが、サッカーのレベル以上の価値を自分は感じています。あと、僕がニュージーランドを選んだのは、映画が好きなのでこの国がロケ地として有名というのもあります(笑)。日本でサッカーのキャリアをスタートしたものの、日本の枠組の中で疲れてしまった時期があって、一時期は引退も考えました。でもニュージーランドではチームの雰囲気が日本とは全然違い、僕にはそれが合っていて、サッカーがまた楽しくなってきたんです。FIFAクラブW杯に出たのをきっかけに、サッカーを続けようと思って気がつけば今に至ります(笑)」
高橋「でもサッカーって、『極めて満足した』と思ってやめていくひとはいないんじゃないでしょうか。周りから評価されても自分では満足出来ない部分はある、だからこそ続けたい」
岩田「そうですね、40歳手前でもあがいています。次の目標や、もっとやってみたいことが出てきますね」
高橋「僕の場合はパフォーマンスが周りに振り回されるときがあると感じていて。他人からの、結果に対する客観的な評価を受けて自分なりに考え、チームの潤滑油的な動きをすることもあったのですが、ニュージーランドの自分中心のプレースタイルに刺激を受けました。経験が長いからこそ、自分が持っている日本の良さも引き出しから出すことができます。サッカー界には現役選手でいることを選び、常に練習し続けるサッカー選手がいますが、場所とかカテゴリーとは関係なく、周りの評価に押し潰されずに自分の感覚を常に研ぎ澄ませておきたいんだと思います。それにはチームに所属してこそ人間って動けるところがあるので、現役でいるんじゃないかなと。僕もここニュージーランドで英語でコミュニケーションをして、新しい自分になりたい、やりたいプレーをやってみたいという気持ちが沸きました」
常になりたい新しい自分になるために努力し、慣れない環境に飛び込んでサッカーをしようという高橋さんにプロサッカープレーヤーとしての強さを感じた。
ニュージーランドサッカー、プロリーグ化?!
岩田さんには叶えたい夢があるという。
岩田「実は僕、秀人さんみたいな頭の良いひとと一緒にやりたいことがあって。ニュージーランドのプレーヤーは27歳くらいでリタイアする印象があるので、もっとサッカーの活躍の場を作るためにも、クラブのプロ化を広げたいなと。自分たちのグラウンドをちゃんと持って、そしてプロリーグを作れたらと思うんです。それにはビジネスの瞬発力も必要で、秀人さんと一緒にまずはクラブを盛り上げていきたいなと!」
ニュージーランドサッカーのプロリーグ化は観客にとっても楽しみになることは間違いない。今後ニュージーランドでサッカーをする選手たちは、ニュージーランドサッカーの黎明期に立ち会うことになるかもしれない?!
大会日程や、試合の視聴方法など、GekkanNZ Webや、GekkanNZのSNSでチェックしよう!
現地での様子も頻繁に更新されている、岩田さんのインスタグラムはこちらから!
2022 FIFA クラブワールドカップ モロッコ
公式ページより、各試合がライブ配信されます!
岩田選手の所属する Al Ahly FC 対 Auckland City FCの初戦は2月1日開催!
※現地時間2月1日開催ですが、試聴できる時間は各地域で違うため、予めご確認ください。
2023年2月号掲載
Text: GekkanNZ