政府予算発表、その明暗

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緊縮の中でのやりくり 

政府は先月18日、2023年予算を発表した。歳出規模は1,280億ドルで、この国のGDPの32.5%にあたる。緊縮財政の中で「生活防衛」を掲げて福祉分野に381億ドル、医療・健康に288億ドル、看護師の500人の増員に10億ドル、教育に187億ドル、インフラ整備に107億ドルを投じる。また、600万ドルを2月に起きた気候災害の復旧にあてる。2025年までに3,000戸の公共住宅を建設し、気象災害の被災者のために400戸の仮設住宅を作る。予算の発表においてロバートソン財務相は「コスト圧力」という語句を52回も使って政府機関に予算を積み増す必要を説明した。「生活防衛」を掲げた予算案は「省庁防衛」予算でもある。

予算の恩恵を受ける層 

この予算で一番恩恵を受けるのは子育て中の家庭だ。現在は3歳からとなっている週20時間の無料の幼児教育を2歳から受けられるようになり、その間に親は働くことができる。その費用は3億2,200万ドル。またバスや列車の運賃を助成して5歳から12歳までの乗車賃が無料化し、13歳から24歳までは半額になる。この補助金は8,000万ドル。ヒプキンス首相は、「生活防衛」は子育て家族支援で達成されると述べた。その他に重点が置かれたのは、研究やゲーム開発だ。4億ドルが投じられる「サイエンスシティ」構想は、研究機関をウェリントンに集約してリサーチ・ハブを作り、気候、健康、バイオテクノロジー、先進エネルギーなどの研究を促進する。また、ゲーム開発者の支出に対して20%の控除を認める。すでに豪州で同様の制度があり、成長産業であるゲーム開発を国内に留めるための措置だ。またマオリに対する支援は既定路線として着実に増えている。

分断される利益と負担

歳入の4分の3を占める税収は1,080億ドルに達した。大規模な増税を行わないと前言した政府は、トラストにかかる税率を39%に引き上げ、所得税の最高税率に合わせて公平を図ったと説明した。労働党支持者が少ない富裕層には負担を、労働党の支持者が多い中・低所得層には支援をと、選挙年の予算としての色合いが出ている。富裕層でなくても25歳以上で子供がいない人は、この予算で恩恵を受けることはほとんどない。今後に予想される経済成長の悪化や失業率の上昇などの局面に立ち向かう準備が必要となるだろう。

経済予測と財政収支

Text:Kazzy Matsuzaki 
2023年6月号掲載