住宅価格の高騰や物価の上昇により、ニュージーランドでも生活苦に悩む人が増えている。
そんな時に頼れるのが福祉・社会保障だ。
この国で暮らすうえで知っておきたい行政サービスについて紹介しよう。
教育関連の支援
Support to study
生活費が高いこの国で学生が負担なく勉強に集中できるよう、高等教育機関で学ぶ人向けの補助もある。就学前の子供に対する初等教育費用もカバーが受けられるので確認を。
学生手当 Student Allowance
就学中の生活費を援助するため、週1回支給されるのが学生手当。類似した補助金に学生ローンの生活費手当(以下参照)があるが、学生手当は返済の必要がない。ニュージーランド市民または居住ビザを取得してから3年以上ニュージーランドに居住している18~65歳のフルタイム学生が対象。ほかに、居住地や受講コースなどの条件を満たす必要がある。また、ニュージーランドの認定教育機関を通じて海外留学する学生も対象となる。16~17歳やパートタイム学生が受給できる場合もある。
学生ローンの生活費手当 Student Loan Living Costs
フルタイムで就学している55歳未満の学生が対象。ニュージーランド市民または3年以上の居住歴が必要。週最大$323.43が支給されるが、返済しなくてはならない。
保育金手当 Childcare Subsidy
3~5歳の子供が就学前教育(ECE)を受ける場合、最初の20時間は政府からの補助が受けられる。また、ニュージーランド市民または永住者は世帯収入と子供の人数に応じて保育金手当を受けることも可能。2025年現在の支給額は以下の通り。
子供の数 | 週当たりの収入 | 1時間当たりの支給額 (子供1人につき) |
---|---|---|
1 | $1,099未満 $1,099~2,001.99 $2,002~2,168.99 $2,169~2,335.99 $2,336以上 | $6.52 $5.20 $3.64 $2.03 なし |
2 | $1,264未満 $1,264~2,302.99 $2,303~2,484.99 $2,485~2,669.99 $2,670以上 | $6.52 $5.20 $3.64 $2.03 なし |
3 | $1,416未満 $1,416~2,568.99 $2,569~2,786.99 $2,787~3,003.99 $3,004以上 | $6.52 $5.20 $3.64 $2.03 なし |
仕事関連の支援
Not Working
解雇などで仕事を失ったり、何らかの事情で現在働くことができなったりする場合、政府から経済的な支援を受けることが可能。受給条件等を満たしているか確認の上、相談・申請しよう。
失業手当(求職者支援) Jobseeker Support
失業中で仕事を探している人を対象とした給付金。パートタイム雇用者や、健康問題などにより仕事を休んだり時短勤務をしたりしなければならない人にも適用される。ニュージーランド市民、永住権保持者、居住ビザ保持者で、子供がいない18歳以上、あるいは子供を持つ20歳以上であることが条件。2年以上の居住歴も必要。
支給額は年齢や家族状況(独身、カップル、子供の有無など)によって決まる。2025年現在、25歳以上の独身者の場合は週$361.32、子供のいないカップルの場合は週$614.84、ひとり親の場合は週$505.80など。
職業訓練手当 Training Incentive Allowance
職業訓練に必要な学費、書籍購入、子供の世話(ベビーシッターの手配など)、道具、交通費などを支援する補助金。給付資格を得るには、以下のいずれかの支援を受けていなければならない。
●ひとり親支援
●生活費支援(介護をしている、けがを含む健康状態に問題がある、障害がある場合)
●ヤング・ペアレント支援(ひとり親のみ)
●緊急または予期せぬ出費に対する手当(ひとり親のみ)
●求職者支援(ひとり親のみ)
加えて、高等教育委員会(Tertiary Education Commission)または教育省(Ministry of Education)の資金援助を受けているコースに在籍していることも必須条件。このコースはNew Zealand Qualifications Frameworkのレベル1~7かつ12週間以上であり、就職に必要なスキルを向上させる内容でなければならない。以上の条件を満たしている場合、週$138.77、最大で52週間に$5,550.80を受給できる。

緊急または予期せぬ出費に対する手当
Urgent or Unexpected Costs
災害や事故といった突発的な出来事が起きた場合に支払われる補助金。住居費、車の修理代、歯科治療代、火災や盗難に遭った際の一時金(返済が必要となる場合もある)、葬儀費用など、支援内容は多岐にわたる。一例として葬儀費用を紹介しよう。
葬儀費用・葬儀参列のための交通費 Bereavement
葬儀費用がほとんどない、あるいは全くない場合、葬儀費用の一部に対して援助が受けられる。受給資格を得るためにほかの補助金を給付している必要はなく、返済も求められない。最大$2,616.12が給付され、火葬費用、棺桶代、霊柩車代などに充てることができる。
また、亡くなった方がパートナー(死亡時に同居していた場合)、子供(継子や里子を含む)、孫、兄弟/姉妹(異母兄弟/姉妹、義理の兄弟/姉妹を含む)、親(継父母、里親を含む)だった場合、葬儀に参列するための交通費の補助を受けられる場合がある。
ACCについて
ACCとはAccident Compensation Corporationの略で、けがをサポートする政府機関のこと。ACCが提供する無過失補償制度は、ニュージーランドで事故に遭い負傷した旅行者を含むすべての人が対象。 多数の死傷者が出るような大事故も含まれ、子供、生活保護受給者、学生も含まれる。働いていても、失業していても、退職していても補償の対象となり、治療、手術、入院、リハビリ等の治療補償が受けられる。ただし、事故以外で生じたけが、例えば病気や加齢によるもの、日焼けなどは対象外。
また、所得補償もあり、例えばけがが原因で仕事ができなくなった場合、復職するまでの間、最大で給与の80%がACCから支払われる。障害補償や亡くなった場合の遺族補償などもある。
そのほかの支援について
政府はほかにもさまざまな支援・補助を行っている。どのような補助が受けられるか、Ministry of Social Development(MSD)※のサイトで簡単に調べられるのでチェックしてみよう。
※生活保護や家賃補助、就職サポートなど、暮らしを支える福祉サービスを提供する政府機関。