【電気工事士】日本で働きながら就職活動を行いジョブオファーを手に入れた ー 竹内さん

キュリアインタビュー 電気工事士 竹内さんBUSINESS

日本で働く中での技術を活かし、日本の会社で働きながらニュージーランドへの就職活動を行った竹内さん。有給休暇を使ってニュージーランドに渡り20社もの面接を受け、ジョブオファーを見事手に入れた。
日本とニュージーランドでの働き方の違いや、事前に準備しておきたい資格などのお話を伺った。

Q. ニュージーランドへ来たきっかけは何ですか?

2014年にワーキングホリデーで来たのが一番最初です。人見知りの性格でそういう自分を変えたくてワーキングホリデーに挑戦しました。この時は移住するなんて考えていませんでした。

その後帰国して結婚を経たのですが、奥さんもニュージーランドに留学していたことがあって、ふたりで思い出話としてニュージーランドのことを話しているうちにだんだんそこでの生活に惹かれ、移住したい気持ちが芽生えました。

2018年に再び渡航、今の会社で就職が決まり、その年の11月から電気工事士として働き始めました。

Q. 現在のお仕事を始める前はどのようなお仕事をされていましたか?

日本では電気系エンジニアをしていました。鉄道車両の電源装置の設計開発や、太陽光発電向けインバーターの設計などを担当していました。

電気工事士の資格は持っていましたが、実際に現場で施工などをしたことはありませんでした。

Q. ニュージーランドでの就職活動はどのように行いましたか?

当時は日本にいたので日本の会社で働きながら就職活動をしました。

ニュージーランドの電気業界に強い日本在住の就職エージェントと契約して、CV作成や資格の手続き、面接のアポ取りなどできる限りのことを日本から行いました。ニュージーランド中の会社にCVを送り、30数社から前向きな返事があり、日程調整の結果20社ほどと面接できることになりました。

そしてお盆休みにあわせて2週間の有給休暇を取り、面接を受けるためニュージーランドに渡って北はオークランドから南はオアマルまで全国各地を回りました。連日、慣れない英語での面接に精神を削られ、さらに面接のあとは休む間もなく車で長距離移動しなくてはならなかったのでヘトヘトでした。いくつかの電気工事士の会社では配線の実技もありました。

最終的には今の会社から面接当日にジョブオファーと雇用契約書をもらい、日本に戻ってビザなど必要な手続きをして無事ニュージーランドで働く第一歩を踏み出しました。

Q. 現在のお仕事に就くために必要な資格などがあれば教えてください。

ニュージーランドで電気工事士として働くには、EWRBという協会が発行する資格が必要です。この資格にはいくつか種類があって、僕の場合は日本の第二種電気工事士の資格をコンバートして「Limited Certificate」というものを取得しました。これがあればQualified Electrician(国公認の電気工事士)の監督の下で電気工事ができます。就活ではこのLimited Certificateをあらかじめ取得しておき、即戦力であることをアピールしました。

働き始めてからはニュージーランドの現場で経験を積み、学校で数週間のコースと実技・筆記試験を受けて、僕も晴れてQualified Electricianとなりました。

Q. 現在のお仕事を始める際に英語力はどれくらい必要でしたか?

電気工事士の場合、仕事をするうえで必要な英語は限られています。部品や工具の名前などを押さえておけば就職の段階ではそこまで高い英語力は必要ないと思います。なので、ほかの職種と比べて敷居は低いのではないでしょうか。

一応渡航前はオンライン英会話をしたりニュージーランド人のYouTube動画を見たりして必要最低限の勉強はしていました。ただそれよりも、現場で上司がクライアントと会話しているのを聞いて学んだ言い回しなどのほうが役に立っています。

Qualified Electricianになってからは公的書類を書くような仕事やクライアントとの打ち合わせもあるので、ある程度の英語力が求められるようになります。

Q. ニュージーランドで働くなかでの楽しさや魅力、やりがい、また反対に大変なことや難しいと感じる部分はありますか?

今働いている会社は田舎町にあるので、ニュージーランドの自然に囲まれて仕事をすることが多く、作業中に見える景色には癒やされます。

また、毎日違う現場に行き同じシチュエーションはひとつもないので飽きることがありません。

施工だけではなく故障解析などもするので、日本でのバックグラウンドを今の仕事にも活かせています。故障解析はパズルを解くような感覚で好きな作業のひとつです。

あとは、プラマーやビルダーなど、日本では一緒に仕事をしたことがなかった人たちとも現場を共にするので新しい発見があって面白いです。

大変なことは言語の壁がまだまだあることです。いまだにクライアントとの電話が聞き取れないことがあるので、そんな時はネイティブスピーカーの部下に任せます。僕は彼らに仕事を教えるので持ちつ持たれつだと思っています(笑)。

デイリーファームでの仕事では牛の糞尿まみれになったり、住宅では屋根裏や床下を這いつくばって作業したりなど、肉体的な大変さもあります。

デイリーファームのポンプ制御盤の制作。回路設計から部品の選定・配置、施工に至るまですべて自分で一からする作業が楽しい。
森の中にあるツリーハウス。この辺りで有名な宿泊施設の施工にも携わった。

Q. ニュージーランドと日本での働き方の違いなどはありますか?

納期よりも労働時間を守ることが優先される環境なので、緊急性が高いもの以外は翌日に持ち越して帰ったりします。みんながプライベートを大切にした働き方なので、仕事ばかりの生活にならずバランスが取れていると感じます。早く帰宅できるからこそ平日も子供たちとの時間を持て、親のサポートがなくても子育てを頑張っていけています。

また、ニュージーランドでは年齢を気にせずキャリアチェンジをする人が多くいるように思います。元同僚は60歳を超えてからビルダーに転職しました。挑戦することに対して寛容に受け入れる社会であるように感じます。

他には、給料は自動的に上がらないので自分から交渉をしなくてはならないことに驚きました。どうやって交渉するのか、同僚に何度も聞いたのを覚えています(笑)。

ある日の現場からの景色。Hakataramea valley

Q. ニュージーランドでの就職活動で、事前に準備しておくと良いことは何ですか?

先ほども書きましたが、日本の電気工事士資格があればそれをニュージーランドの資格にコンバートしておくことをおすすめします。就職活動で強みになります。日本から面接にくる場合は、面接当日にニュージーランド人の話す速度にびっくりしないようにKiwi英語に慣れておくといいかもしれません。 また、工具類は日本で揃えた方が種類が多くて値段も安いです。会社によっては工具は支給される場合もあるので面接の際に聞いてみてください。

【さいごに】これから電気工事士としてニュージーランドで働きたいと考えている方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

電気工事士はニュージーランドで長年不足している職業です。

日本で電気工事士として働いていた経験があれば、言語の壁はあるかもしれませんが培った技能は確実に世界で通用します。またこれから電気工事士を目指すという方は、学校に通いながら現場で働き給料をもらえるApprenticeship(見習い)という制度もあります。

今後AIが発達しても電気工事士のように実際に手を動かす仕事は無くならないと思っています。チャンスはたくさんあるので、少しでも興味がある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。


電気工事士 竹内さん

竹内理裕 さん

日本では電気系エンジニアとしてパワーエレクトロニクス機器の設計開発を行う。その後ニュージーランドでのワーキングホリデーを経て、帰国後は日系電機メーカーで北米・中南米の製品サポート等も担当。ワーキングホリデーで出会ったニュージーランドのライフスタイルに惹かれ、電気工事士に転身してNZ移住。現在は国公認のQualified Electricianとして住宅からデイリーファーム、太陽光発電の設置など幅広い業務を行う。私生活では2人の息子の子育てに奮闘中。
 
【Twitter】@erekutorisyan
【Blog】ニュージーランド移住を目指す夫婦のブログ

取材・編集 GekkanNZ