インタビュー:パフォーマー 久保 明日香さん

久保 明日香さんLIFESTYLE

2022年8月号掲載

独創的な表現を楽しみながら挑戦する若い才能

最初は歌が好きだったことから、流れに導かれるようにパフォーマンスの道へと進んだ明日香さん。
ミュージカルの勉強を始め、演技やダンス、ディヴァイジングなどへとパフォーマンスの範囲は広がり、今ではアクターとしてのキャリアも歩み始めることに。まだ役者の自覚は感じないものの、パフォーマンスを楽しんでいることは確かな様子が今回寄稿いただいたQ&Aからも伺えます。

役者を始めたきっかけはなんですか?

小さい頃から音楽や歌は大好きでしたが、特別パフォーミングに興味があった訳ではありませんでした。イヤー13の途中までは、ウェリントンで高校を卒業したら日本へ帰って大学に入り、中学の先生になろうと考えていました。当時通っていた歌のレッスンで先生にNASDAのことを聞き、正直よく分かっていないままオーディションを受けたのがきっかけです。歌が好き、と言うシンプルな気持ちだけで、学校に流されるようにミュージカルの勉強を始めて、そこから歌だけでなく演技、ダンス、フィジカルシアター、ディヴァイジングなどと世界が広がり、本当にありがたいことに今日までパフォーミングを続けられています。

「役者」と言う言葉で表現されるのは初めてで、自分自身も未だに自覚があるとは到底思えないので、何よりまだまだこれからのたった今走り出したばかりの甘ちゃんですから、これを書いているのもワクワクすると同時に正直何だか小っ恥ずかしいです。いつか自分の表現するものに胸を張れる日が来るように精進して参ります。

このパフォーマンスの見どころはどこでしょうか?

ショーが既存の台本や作品に頼らず、キャスト自身の持ち寄る人生物語で成り立っているというところです。ディヴァイジングという舞台の形を使った、所謂完全にゼロからの創作品なのです。今回は6人のグループで行うディヴァイジングなので、この6人で、今しか成り立たないショーである、というのは特別なことだと感じます。さらに私達は駆け出しのパフォーマーの集まりなので全員から別々の熱いものを感じますし、何より年が近い分皆本当に仲が良いです。ふざけたり笑ったり、真剣に話し合いをしたり、お互いをサポートしながら楽しいリハーサルが続いています。創作期間、リハーサル期間に培ったキャスト自身の繋がりも感じていただけるかと思います。

アスカさんはどんな役を演じられますか?

個人個人を持ち寄って出来た作品なので、一般的に馴染みのある「役」は存在せず、皆が自分自身を演じます。ですから私も久保明日香として出演させていただきます。これもまたひとつ、今回のショーのユニークなところですね。

パフォーマーとしての次の目標は何でしょうか?

一度日本に帰って暗黒舞踏の勉強をしたいと思っています。今一度自分のルーツに立ち返り、まだまだ沢山勉強をして経験を積んで、最終的には自分ならではの表現方法を見つけることが目標です。道のりは長そうですが楽しみです。

日本とNZ でのパフォーマンス業界の違いはありますか?

私はこの業界での経験が浅いですし、日本のパフォーマンス業界には足を踏み入れたことがないので詳しくは分かりかねます。強いてあげるとすれば、伝統芸能の有無でしょうか。日本には古来から伝わる独自のパフォーマンスの形が数多く存在するのに対して、 ニュージーランドの演劇文化に関しては依然模索中といった印象を受けます。だからこそ ニュージーランドでは、それこそディヴァイジングなど、新しい作り手と創作品を目にする機会が多いです。さらに、沢山の文化が同時に存在する国ですから、様々な視点から、どれも実験的で、リアルで、心のこもった、普段埋もれる声を発掘するような、作り手の感情や経験により近くから触れられる魅力もあると思います。人の作っているもの、と言う感覚があります。

NZでパフォーマーをしていてどんな利点や楽しさがありますか

利点で言うと、英語力が格段に伸びたのはパフォーマンスの勉強を始めてからだと思います。楽しさは、全てです。具体的に何故かと考えるとこれといって例が見つからないのですが、ニュージーランドに来てから一人で過ごす時間に慣れていた私に、人との繋がりや、新しいコミュニュケーショ ン方法をもたらしてくれたのがパフォーマンスでした。もしかしたら、楽しい、好き、とはまた別に、作り手や、または作品を見に来る人達を近くに感じて、ほんの一瞬だとしても、ようやく人の輪に収まる安心感、みたいなものを感じているのかもしれません。

久保 明日香さん

クライストチャーチのNational Academy of Performing Arts (NASDA)でパフォーミングアーツを学ぶ。鹿児島県出身。その後神奈川、宮城、千葉で幼少期を過ごし、14歳のときにニュージーランドのウェリントン、そして高校を卒業しクライストチャーチへ。演技やパフォーマンスの他に書道や俳句、またキックボクシングも楽しんでいる。地元での公演やThe Court Theatreのパフォーマンスを経て、今回はいよいよMassive Companyのシアターで公演となり、若手パフォーマーとして期待が高まる。
「What We’re Made Of」の公演情報は▼
【Web】www.massivecompany.co.nz
8月2〜6日: Māngere Arts Centre, Auckland
8月10〜12日: ONEONESIX, Whangārei

取材・文 GekkanNZ編集部