種まきは、いつするのがいい?

園芸家が見つけた季節のたより 花と野菜と庭とLIFESTYLE

以前勤めていた園芸会社に農家出身の先輩がいた。インゲンの種でもまいてみようかと相談すると、「ソメイヨシノの咲き始めから散るころがいいだろう」と教えてくれた。なるほど、分かりやすい。ついカレンダーの月日で考えがちだが、毎年同じ時期に同じ気温とは限らないし、地方によっては1カ月以上違ってくるというのが常だ。日本では、寒緋桜、河津桜、大島桜、そしてソメイヨシノ、八重桜と咲く順番が大抵決まっている。最後の八重桜が散るころには遅霜の心配がなくなり、発芽した芽や苗を地植えしても寒さでやられることはない。そのため、全国にある桜は植える時期の指標に使われている。

種袋の消費期限を参考に早めに植えましょう

さてこれから暖かくなる季節、種まき、苗植えにとても良い季節。植物の成長にとって大切な気温、地温はもちろん、自然の雨が確保される ということも重要だ。ガーデニング作業を適切な時期に行うことは、実は成功への一番の近道なのである。

ニュージーランドの場合、9月をすぎて暖かくなってきていても遅霜の心配が付きまとう。以前「サザンアルプスに雪が見えなくなったら遅霜の心配をしなくていいというサインよ」と教えてくれた夫人がいた。そうやって自分なりの指標があると、時期が読めるようになってくる。この木が芽吹き始めたら、この花が咲き始める。この花が散り始めたら、こちらの花が咲く。そんなふうに周りを観察していると、今まで気づかなかった色んなことが見えてくるはずだ。これもまたガーデニングの楽しみの一つなのかもしれないと、桜が咲くころになるといつも思う。

Naomiさんとネコ先生
Naomi Goto Garrett
五嶋ガレット直美

日本でガーデンデザイナー、イラストレーターとして活動。
園芸雑誌や新聞へのコラム執筆、デザイナー向け講演も行う。
現在クライストチャーチ近郊に在住。

【ブログ】naomigarden8.com

2021年9月号掲載