ニュージーランドの保護猫事情〜保護猫カフェ「ネコ・ネル」の開業・移転奮闘記 vol.03

ニュージーランドの保護猫事情〜保護猫カフェ「ネコ・ネル」の開業・移転奮闘記LIFESTYLE

移転エピソード~後篇~

152匹の猫をアダプトして約3年半の営業を終えた、保護猫カフェ「ネコ・ネル」。
今回は新たにウェリントン市街への移転エピソードの後編をご紹介いたします。

さまざまな困難〜6つのハードル〜

ようやく新しい拠点となるビルは決まりましたが、猫カフェを開店するまでにはまだ6つの主要なハードルがあります。それは、ビルの支払い、自宅の売却、シティ・カウンシルからの建築許可、耐震レポート、内装工事、1階のカフェの貸し出しです。

ビルの支払いには自宅を売却することが必須条件でしたので、すぐに自宅を売る準備を始めました。評価サイトの予測では期待できる売却値は90万ドルから110万ドル。高い方であれば5年前に買った倍の値段です! 100万ドルでの売却を目指してホーム・インプルーブメントと徹底的な掃除し、11月21日からオープンホームを始めました。覚えている方も多いと思いますが、コロナ禍のNZでは家の需要が非常に高く、販売されている家の数も少なかったので値段が上がりまくりでした。オープンホームにはひっきりなしに人が訪れている、なんてニュースもよく見ました。我が家でも最初の頃は10組を超える訪問者があり、1ヶ月で売れるんじゃないか、と思っていました。

ところが、6ヶ月たった今も売れていません! これは、11月に利息が上がったために家を手放そうとする人が増えたことと、銀行が住宅ローンを渋るようになったのが原因のようです。聞いた話では、銀行が申請者の支出を厳しくチェックし、コーヒーを飲み過ぎだから、などという理由でローンを断られてケースもあるそうです。

ウェリントンの家賃は過去最高レベルで高く、家を売りたい人も買いたい人も多いというのに、誰も(お金持ちを除いて)家を買えないという現状。何かおかしいですよね。

購入したビルの前オーナーは非常に親切な人たちで、私たちの経営が軌道に乗りやすいようにとベンダーファイナンス(オーナーが私たちに残金分を融資をすること)をしてくれ、ビルが私たちの名義になりました。これで、一階のカフェを貸し出して家賃を取ることができるようになりました。それでも、2022年3月31日までにビルの支払いを終えない場合、12%の利息がかかる契約でしたので、低い金利のローンの準備を始めました。

銀行は耐震値が低いためにローンを許可してくれず、個人のブローカーを探しました。このためには、ビルの新しい耐震値レポートと価値評価レポートが必要で、もちろん費用がかかります。新しい耐震値レポートは私たちのオファーが受諾されてからすぐに依頼していたのですが、これが5ヶ月もかかりました!  しかも、期待していたよりも耐震値が低く、一番低い値が37%。当初、融資を約束してくれていたブローカーもいたのですが、5ヶ月経つ間に銀行で住宅ローンを組めない人の申込みが殺到し、耐震値の低い私たちへの融資は断られてしまいました。家も売れていないため、4月からは8000ドルもの利息の支払いがかかってくるようになりました

新しい拠点となるビル
新しい拠点となるネコ・ネルのビル

海外送金のために一時帰国

私は日本にある資金を移動させるために、ニュージーランドのMIQ(入国時の強制隔離)が廃止されると同時に一時帰国しました。2月末のことです。日本もオミクロン株によるまん延防止等重点措置が適応中で、まだ1週間の自己隔離が必要な時期でした。日本から資金を移動させる場合、問題になるのがマイナンバー。これがないと銀行から海外送金できません。自己隔離中に母に住民票の申請に行ってもらい、問題なくマイナンバーは習得できました。ここでホッとしてリラックスしてしまったのが問題でした。

自己隔離が終わってしばらくしてからメインの新生銀行に行くと、海外送金は年間50万円まで、と伝えられました。仕方なく、以前母の銀行から私の口座に振り込みをしてもらったとこがあるので、それが再び可能かりそな銀行に聞きに行きました。2日ほどかけて書類を全て提出し、これで行けそうだという答えをもらいました。ただ、話をしていた支店が母の口座のある支店ではないので、口座のある支店に行ってほしいとのこと。で、すぐにそちらに行ったのですが、答えはダメ、の一言。マネーロンダリングに関してルールが厳しくなっており、口座名の違うところに海外送金はできない、とのことでした。

次に行ったのは大阪信用金庫。ここは親身になって相談に応じてくれ、さまざまな書類の提出等で2週間ほどかかりましたが(そのためNZ帰国を1週間延ばした)、なんとか送金できました。海外送金部は許可を出したのにコンプライアンス部が他の書類を欲しがっている、などなど、本当にマネーロンダリング対策で審査が厳しいことが実感できました。それでも、ぎりぎりで送金できると聞いて、ホット一息。今回の日本一時帰国は本当にストレスがかかりまくりで、少し楽しめない状況でした。しかも、銀行で手間取っている2、3週間の間にウクライナの戦争の件もあり、日本円の対NZドルレートが約10%も下がりまくり! 大損です!

1階のカフェがオープン

1階のカフェの貸し出しだけは、順調に決まりました。Café Soleilが3月1日から営業を始めており、スペイン出身のオーナーによるフードは好評を得ています。ただ、シティ・カウンシルからトイレの増設とメインの入り口を1階用と2階用に耐火壁で完全に分けることを要求されていました。これが完成するまでは、半分のキャパシティーの50席しか許されません。この建築申請は12月に出していたのですが、実際の許可が降りたのは4月! ビルダーはこの間も探していたのですが、実際の許可がいつ出るかがわからない状態では誰もコミットできませんでした。

Café Soleil
1階のCafé Soleil

建築許可が降りてからようやくビルダーを見つけたのですが、ご存知の通り建築資材が不足しており、ヘタをすると12月まで手に入らない、と言われました。 Café Soleilが50席のキャパシティで営業している間は、家賃も半額。8000ドルもの利息を払わないといけない身には非常につらい状況です。

しかも、この建築許可は1階部分のみ。住居と猫カフェの2階部分の建築許可はまだ申請中です。これは、ステージに分けて申請し、1階部分を優先するという私たちの戦略のためです。したがって、いつになったら2階部分の建築許可が降りて工事が始められるのか、全く目処が立っていません。

と言うことで、一番初めに書いた6つのハードルのうち、解決しているのはわずか耐震レポートとカフェの貸し出しだけです。家の方は、知り合いがオファーの準備をしているところなので、次回のレポート時にはいい報告ができるかもしれません! ご期待ください〜! 

最後になりましたが、クラウドファンディングの締切まであと1週間程度です。現在目標の約70%まで達成しています。ぜひ、ご支援よろしくお願いします!

次回は、「ネコ・ネル」移転のエピソード〜ネコネルのこれから〜をご紹介します!

Neko Ngeru Cat Adoption Cafe
Neko Ngeru Cat Adoption Cafe オーナー
岡田憲志さん・リッシェさん夫婦

2017年、ローワーハットのペトネに保護猫カフェをオープンし、3年半で152匹のアダプションを成功させる。現在、街中心部への店舗移転を準備中。

【所】215 High St., Hutt Central, Lower Hutt, Wellington
【Web】nekongeru.nz

文 Ken Okada