「もしも」のために知っときたい!本帰国 マニュアル

「もしも」のために知っときたい! 本帰国 マニュアルLIFESTYLE

ニュージーランドで生活基盤を築いたものの、親など家族の介護で日本に帰ろうか悩んでいる、または、子どもの進学で日本の学校に行かせたいと考えているなど、ふとしたときに頭をよぎる「もしもの本帰国」。

いざ本帰国となったときに、何の準備をいつしたらいいの?という不安へのモデルケース例(ToDo リストや体験談)、日本とニュージーランドに実際住んでみてどう?という疑問に対する感想などをまとめてみた。

※あくまでモデルケースや参考例であり、個人の状況によって必要な事柄や時期は異なります。この記事によるいかなる損害も補償できかねますのでご了承ください。
※情報は2023年2月下旬現在のものであり情報の精査に努めておりますが、最新の一次情報をご確認ください。

NZから日本へ!本帰国すごろくToDoリスト

本帰国すごろくToDoリスト
年金、キャリア、子育て、医療、そして、自分らしくいられるか。本帰国体験者レポート

日本とニュージーランドはそれぞれに魅力があり、特徴の強い国と言える。
ニュージーランドに移住しているものの、日本にいる家族の介護や、子どもの進学先、自身の老後を見据えて年金をどうマネージメントするかなど、今後の生活基盤をどちらに置くか悩むひとも多い。
義母の体調も考え、去年日本へ長期で帰国した静流さんにお話を伺った。

大きなスパンで考える年金

年金というのは5年、10年、20年と、大きなスパンで制度が設計されているため、人生の舵取りをしていく上で、あらかじめ両国の年金制度を把握しておくことは大事だそう。

「皆様にまずお伝えしたいのは、ニュージーランドの年金制度は複雑で、さらに来年å2024年7月に大きく変わる予定*だということです。この変更では受給資格を得るのに永住権を持った上で将来的に20年(以前は10年)ニュージーランドに暮らすことが必要となります。この必要年数20年というのは2024年から段階的に増えていく年代もあるとのことで、かなり複雑ですのでご自身の誕生日と照らし合わせ、政府発表の規定を確認すると良いでしょう。必要年数のうち5年は50代のうちに暮らす必要があるのは今まで通りです。さらに、年金受給開始年齢についても気をつける部分があります。ニュージーランドが他国と提携しており、移住した国の受給年齢が高い方が適応されてしまうという場合があります。ぜひ一次情報で確認してみてください」 

ニュージーランドの年金受給資格を得るには、長期に渡ってニュージーランドで生活する必要があり、住む時期や、途中の移住先も重要になってくるとのこと。年金のことをよく知るのはより良い人生設計に役立ちそうだ。

WINZ発表資料より

The residence criteria increase from 10 years to 20 years will be gradual, from July 2024 to 2042. It will be based on your date of birth when you apply.

Change to residence criteria forNZ Super and Veteran’s Pension
参照:www.workandincome.govt.nz/eligibility/seniors/nz-super-and-veterans-pension-residency-changes-2024.html

日本で再就職するタイミング

「夫も日本で就職し、日本の年金の積立にもなっています。私は今、人生であまり経験したことのない専業主婦。ずっと働いてきましたから新鮮で楽しいですが、あれこれしていたら1日があっという間!専業主婦って忙しいと実感中です。夫は50代なのですが、友人に聞くと50代なら英語も出来て経験もあれば日本でキャリアを再スタートできたという話が多いんです。さらに日本国内にツテがあるというのも大事ですね」

年金と合わせて考えると、50代は決断の岐路に立つ時期なのかも?!

Career / Pension

子育て中の移住のヒント

ニュージーランドで子育てしていてバイリンガルとしての言語習得に悩む親は多い。本帰国した友人たちの感想も交えて、ご自身も子育てを終えた静流さんにお話を伺った。

「9歳頃までに思考する言語は作られると聞いたことがありますが、まず一つの言語をしっかり習得することが大事だと感じます。お子様が英語に馴染んでいるなら、まず英語でしっかり思考できるようになってから日本に帰国したほうがいいのかもしれません。お子様の年齢が中学や高校の頃に日本に帰国・移住したご家族にもお会いしますが、お子様たちは楽しく日本の学校に通われている印象があります」

School / Omotenashi / Food

もちろん各家庭で状況は違うが、親の1人が海外のルーツでも子どもたちは楽しく日本の学校に通っているケースも多いそう。

移住して見えてきた両国の特徴

久しぶりの日本暮らしを楽しんでいる様子の静流さんに、今、両国から感じられることについて伺った。

「今は初めて日本の中部地方で暮らしていて、京都や四国や首都圏など、どこに行くにも近くてすごく楽しいです。ニュージーランドでは1人で南島を4000km運転したこともあり、出かけるのは大好きなのですが、日本は高速道路が高いという印象はありますね。ニュージーランドは有料道路は一部のみですから。一方で、名古屋周辺のモーニング文化に感激しています。500円ほどでサンドイッチにサラダにゆで卵にデザートにと、確かに日本は物価が安いと感じますね。ただ、日本の書類で手続きする際のお役所言葉が少し難しいと感じる場面も。30年以上日本を離れていますから、新参者の気持ちで分からないことは職員の方に聞いています。そんなときも、その場の人々が親切で感動しています。あとはやっぱり医療の安心感も大きい。ニュージーランドでは医療が無料と言いますが、ところどころお金はかかりますし、大きな手術などでは無料で受けるとなると手術日までがとても長かったり。また、コロナ禍では両国とも特徴的な対応でしたが、改めて個人の意志を尊重する日本の姿勢に感銘を受けました」

一方、静流さんは最近ニュージーランドに旅行で短期滞在し、改めてニュージーランドの良さも感じたそう。

「オークランドからウェリントン、ピクトン、クライストチャーチと、トランツアルパイン鉄道などを使って旅をしたのですが、やっぱりニュージーランドの大自然は美しいなと改めて感じました。南島のひとたちがすごく優しくて、私が移住した当時のようなニュージーランドの雰囲気を感じ、この国もやっぱり恋しいなと(笑)。でも日本も本当に、どこに行っても季節の花々を慈しむイベントがあったり、コンサートに美術館、白川郷のような古い集落など、文化的な面の魅力が素晴らしい。移動するときも日本の電車がバラエティ豊富で大好きなんです」

Plan / Trip

固執せず自分にあった場所へ

「ニュージーランドはお給料は高いけれど、インフレもあるし家賃も高騰していて、海外に興味を持つ若い人も多いと聞きます。私も将来どこへ行くか、まだ変わる可能性もあります。そこでお伝えしたいのは、“トライアル帰国ってどう?”ということ。ニュージーランドの永住権があるなら戻って来られるし、日本は家賃も安いし数年試してみるのもいいんじゃないかなと。改めて両国の良さも難しさも再発見できました」

ご自身の選択やライフステージに合わせて住む場所を変える。静流さんのお話から、将来の人生設計を今一度考えてみるのも良いだろう。

2023年3月号掲載
取材・文 GekkanNZ