Good Kiwi Tucker! vol.192  年一回短期集中⁉ ホット・クロス・バンズでお祈りします!

Good Kiwi Tucker!GOURMET

2022年4月号掲載

イースターが近くなるとどうにもソワソワしてしまうのは、ホット・クロス・バンズがお店に並び始めるからだ。別にそんなにあせらなくても、毎年最初に「あっ、もう売ってる!」と思ってから聖金曜日が来るまでのひと月ぐらいはどこでも見かける。だからどんどん買えばいいのに…そうもいかない⁉

ホット・クロス・バンズとは、その名のとおりクロス(十字型)の印を焼き付けてあるイースターの時だけに食べるパンである。だいたい6コがくっついたものがワンセットであり、二人家族だと一度に食べるにはちょっと多い感じ…。そうすると、たかだか1か月の間に〝ハズレ〟を買っている余裕はないので、まずサイズを、そして焼き色を、さらには十字の付き方やフルーツの入り具合をギンギンにチェックするのである。それこそ毎年見ていると、お店によってかなりの個性が!理想としては、小ぶりな中にもフンワリとして、ちょうどいい硬さの十字がのっており、スパイスの香る生地には、これまたやわらかいドライフルーツが絶妙なバランスで混ぜ込まれているのがイイ…が、パッと見ただけで「あの大きさであの十字はナイな、絶対硬そう」とか「フルーツ全然入ってないじゃん」とか言って不合格を出してしまうことも多く、モールの中でベーカリーとスーパーのパンコーナーをウロチョロ…そして買わずに帰ったりして…。こんなことをしていたら1か月なんてすぐなのに〜。やっぱり、スーパーで買い物ついでに、っていうのが甘いのか。ふだんはなかなか行けないけど、ちょっとお高くてステキなパンがそろっているベーカリーカフェに、車を飛ばすのが正しいんじゃないの⁉なんだかんだ言って、去年のイースターから約1年の間に発掘したベーカリーも何軒かはあるもの。そういうお店のホット・クロス・バンズはまだチェックしていないわけだから、そっちも必ず行こう!しかしそこまでやったとしても、結局はお高級なあまり、パンそのものがすっごく小さいとか、自分の好みじゃないスパイスがリッチに漂っている…とか、あこがれのベーカリーだからといって、必ずしもホット・クロス・バンズも満点とはいかないところがつらかったりする!そのあげく遠かったのに〜、高かったのに〜!とウジウジする自分もどうなんだ、と思ってしまう。

イラスト リカ

でも、知ってましたか?ホット・クロス・バンズって本来はイースターサンデー直前の聖金曜日の朝だけに食べるものだそうで…。1か月も前から売っているからついつい何回も食べちゃってるけれど、それだとイースターの意義からは外れまくりなのだ。十字の印はイエス様の十字架を、スパイスはご遺体を清めた香木を象徴し、聖金曜日の朝に食べるバンズは、人々を災害や病気から守ってくれる、とか…もう今年あたりは、信じてしまいたい言い伝えばっかりの食べ物⁉このさい聖金曜日は(それまでにいっぱい食べた中でも)一番のお気に入りのホット・クロス・バンズを食べて、向こう1年のみんなの無事を祈る気持ちで過ごしたいかも。あっ、とりあえず今「この先も無くなってほしくないなぁ」と思うパン屋さんがある人は、やっぱりそこのをせっせと買うことも大事といえそう。病気も災害も争いごとも…自分ではどうにもならないことが多いけれど、パンぐらいは買いに行ける!と今年も信じて行くしかないです(わたしって本当に無力…)。

*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味

マツザキ リカ

ニュージーランド在住25年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!